【特集 タイガー・ウッズの見方(6)】テレビ解説者&プロゴルファーの視点
2000年 全米プロゴルフ選手権
期間:08/17〜08/20 場所:バルハラGC(米国ケンタッキー州)
タイガー 完璧の6アンダー発進 同年3メジャー制覇へ驀進中。
「一人だけ違うステージで戦っている男」と言われる。「タイガーvsその他全員の戦い」とも評される。きっと勝つだろう、いや勝って当然・・と言われながら、だからといって例えばオッズが2対1とか3対1という圧倒的な賭け率になることはない。
この全米プロ、タイガーの数日前のオッズはエルスと同率の10対1というものだった。10対1というのは「非常に勝つ可能性が高いが、もちろん絶対なんてことはない。負けてもちっとも不思議はないさ」というレベルだ。冷静なゴルフファンなら、当然こうした考え方をする。つまり、バランスのとれた常識の世界。
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タイガー・ウッズは常識を破る男らしい。全世界の注目と、全世界からのプレッシャーの中で、期待通りにタイガー・ウッズは首位でスタートを切った。4連続バーディを含む7バーディ、1ボギー。スコット・ダンラップと分け合う堂々のトップスタートだ。ここでまた「常識」を持ち出せば、こうした展開になってタイガーが勝ちを逃がすなんてあり得ない。3日後には47年ぶり、ベン・ホーガン以来の同年3大メジャー制覇が達成される。すごい! おめでとう!
全米オープンや全英オープンほどではなかったが、相変わらタイガーのプレーは安定しまくっていた。2番ロングでバンカーからうまい寄せを見せてまずバーディ。5番でボギーとしたが、7番では半分入りかかったイーグル逃がしのイージーバーディ。ここから8番、9番、10番と入れまくってたちまち4アンダー。12番でも4メートルを入れて5アンダー。最終ロングはバンカーからこれも絶妙の寄せで簡単にバーディ。トータル6アンダー、66。
タイガーのプレーだけ見ていると、ゴルフがなんとも簡単に見える。フェアウェイに打っておいて、グリーンをとらえて、入ればバーディ。入らなければパー。それだけのことでしかない。
だがもちろん、これはタイガーの特異現象だ。たまたまスコット・ダンラップも6アンダーをマークしているが、これは「たまたま」のスーパーエクセレントプレー。あとのダレン・クラークとかラブIIIの4アンダー、3アンダー程度のゴルフがこのバルハラというコースの難易度にマッチした「適切なベストプレー」というべきだろう。
日本勢では田中秀道が善戦、一時は2アンダーまで伸ばしたが後半後退、17番で再度1アンダーに浮き上がって最終18番ロングのバーディに期待をつないだが、これが逆目に出てボギー。惜しい感じのイーブンパーに終わった。推定順位は23~24位程度に落ち着きそうだ。
早いスタートの伊沢利光も粘りのゴルフで37-36の73。まずまずの1オーバープレーだ。清楚な白いウェア(!)に髭がけっこう似合っていたジャンボ尾崎は12番、16番のダボが痛かったものの終盤盛り返して、これもまずまずの2オーバー。そしてアウト健闘の片山晋呉はインで別人のように崩れて4オーバー(36-40)。日本の切り札(?)丸山茂樹も痛い2つのダボで5オーバーフィニッシュ。前週ビュイック・オープン6位で期待された尾崎直道はパワーを使い果たした形で、いいところのない9オーバー(39-42)。
米ツアーでは日常茶飯だが、この日も進行は遅れがちで結局全員のホールアウトはできず、8時27分にサスペンデット決定となった。