2020/08/04進藤大典ヤーデージブック

仕事は膨大、勝つ喜びは無限大 世界一決定戦メジャーの舞台裏

いよいよ「全米プロゴルフ選手権」が始まります。来月には「全米オープン」、11月には「マスターズ」が開催されますが、この2試合は2020-21年シーズンの試合にカテゴライズされていますから、今季唯一のメジャーということになります。 会場はカリフォルニア州のTPCハーディングパーク。早速ピックアップホールの解説…に移りたいところですが、せっかくの今シーズン1試合限りのメジャートーナメント。まずは僕自身が松山英樹選手のキャディとして目の当たりにしてきた、世界一を決める舞台の裏側を振り返ってみたいと思います。 特にことしは各ツアーが何カ月ものシーズン中断を強いられ、世界中のトッププロが、ここに照準を合...
2020/08/06進藤大典ヤーデージブック

栄光への最終関門 優勝争いならリスク覚悟の大勝負も

TPCハーディングパーク 18番パー4(480yd) 今季唯一のメジャー「全米プロゴルフ選手権」が、いよいよ6日(木)に開幕します。前半の難所となる9番に続いて見ていくのは、フィニッシングホールの18番。2015年に「WGCキャデラックマッチプレー」が開催されたときは14番だったミドルホールが、夢舞台のフィナーレを飾ります。 左ドッグレッグの左サイドはグリーンまで湖が広がっています。ティショットは、正面のフェアウェイバンカーに向かってレイアップするのが基本的なプラン。とはいえ、左のペナルティエリアを避けて右に逃げれば逃げるほど、2打目に残る距離は長くなります。勝負どころではリスクを承知の上で...
2020/08/19進藤大典ヤーデージブック

女子メジャー初開催 “全英一短い”難関ポステージスタンプ

ロイヤルトゥルーンGC 8番パー3(114yd) 2001年に「全英女子オープン」(現AIG女子オープン)がメジャーに昇格して以降、昨年までに13回が過去男子の「全英オープン」を開催したコースで行われてきました。ターンベリー、ロイヤルリザム&セントアンズ、ロイヤルバークデール、セントアンドリュース オールドコース、カーヌスティ、ロイヤルリバプール…ことしはロイヤルトゥルーンがそのリストに加わります。 松山英樹選手のキャディとして挑んだロイヤルトゥルーン開催の2016年は壮絶な大会でした。目まぐるしく変わる天候は、「1日の中に四季がある」と言われるスコットランドならでは。時に海風が突風のように吹...
2020/08/20進藤大典ヤーデージブック

16億円争奪サバイバルがスタート デシャンボーならバンカーは関係なし?

TPCボストン 18番パー5(530yd) PGAツアーのシーズンを締めくくるプレーオフが始まります。1500万ドル(約16億円)という夢の超ビッグボーナスをかけたシリーズは昨季から全3試合に変更され、1年ごとにニューヨークエリアと入れ替えることになった初戦「ザ・ノーザントラスト」の舞台も今季はTPCボストンの番。4試合制だったときは第2戦を開催していました。 ボストンから南へ60㎞ほどの場所にあり、この時期は空気もカラッとしていて過ごしやすい気候です。ショットメーカー向きのコースは、フェアウェイキープ、そして何よりアイアンの精度がキーとなります。グリーン自体は小さくないですが、硬い上にアンジ...
2020/08/13進藤大典ヤーデージブック

暑い! 長い! パー3 ティショットは5Wも

セッジフィールドCC 12番パー3(235yd) PGAツアーのレギュラーシーズンも、いよいよ最終戦です。舞台はとにかく暑いノースカロライナ州グリーンズボロ。カリフォルニア州での「全米プロゴルフ選手権」は連日気温15度前後の中でのプレーでしたから、3時間の時差も重なり、連戦の選手はタフさが求められます。飛距離が伸びてショットの番手も、ひと番手は変わるため、対応力が試されます。 2013年に松山英樹選手が主催者推薦で出場してノンメンバーからシード獲得を決めた、僕にとっても印象深い試合です。例年プレーオフ直前の試合ということでスキップするトップ選手も少なくない中、世界トップクラスの仲間入りを果たし...
2021/03/30進藤大典ヤーデージブック

色あせない2013年「全米オープン」 ビリー・ホーシェルは“超ポジティブ”

松山英樹選手のプロ入り後初の海外遠征となった、2013年「全米オープン」予選ラウンドのことです。舞台はメリオンGC。ビリー・ホーシェル、ジョーダン・スピースとの若手注目株3人のペアリングでした。 ホーシェルはその年の「チューリッヒクラシック」で初優勝を飾ったばかり。フロリダ大でもトップアマチュアとして鳴らした素晴らしい選手とは聞いていましたが、実際のプレーは想像以上。アイアンショットの衝撃は、いまも脳裏に焼き付いています。 ターゲットに向かって、めくれ上がるようなスピンの利いたショットを繰り出すボールストライカー。アスファルトのような硬いグリーンにだってボールを止めてしまうのではないかと思うほ...
2021/05/25進藤大典ヤーデージブック

23年前にもらったサイン ミケルソンはファンを愛し、ファンに愛される

大会前、どれだけの人がこの結末を予想できたでしょうか。50歳がメジャーで勝つという史上初の大偉業。フィル・ミケルソンは誰にもできなかったことをやってのけたのです。 興奮のるつぼと化した18番グリーンで見せた静かなガッツポーズ。2004年「マスターズ」制覇の瞬間に見せた大ジャンプを筆頭に、本来は感情表現の豊かな選手です。それだけ必死に高ぶる自分を抑えて戦っていたのだと思います。 2日目でトップタイに並び、3日目には単独のトーナメントリーダーに。しかし、振り返ればメジャーで驚異的な勝負強さを見せてきたブルックス・ケプカが忍び寄り、「マスターズ」を勝ったばかりの松山英樹選手をはじめ、若く脂の乗った猛...
2021/05/18進藤大典ヤーデージブック

松山英樹も「別格」とうなったアマ時代 イ・キョンフンの夢を追う覚悟

「AT&Tバイロン・ネルソン」でPGAツアー初優勝を飾ったイ・キョンフン(韓国)。米国でシードを手にしたのは2019年でしたから、僕の中では日本ツアーで戦っていたときのことが記憶を占めています。 人懐っこい笑顔であいさつをしてくれる姿が印象的。歌うことが大好きで、プロゴルファーになるか歌手になるか悩んだほどだったとか。日本語も堪能なお父さんが付きっきりで転戦をサポートし、一人息子を大事にしている様子も伝わってきました。 ツアー仲間に聞いても「怒っているのを見たことがない」と口をそろえる好青年。ソフトな雰囲気をまとう一方、選手としては二十歳そこそこだった当時から“本格派”のにおいがこれでもかと漂...
2020/07/16進藤大典ヤーデージブック

最終日は池ポチャだった 2014年初Vの記憶

ミュアフィールドビレッジGC 16番パー3(201yd) PGAツアーが2週連続同じコースでトーナメントを開催するのは、1957年以来のことだそうです。新型コロナウイルスの感染拡大でまったく先の読めない状況下、ツアーも選手たちのためにあらゆる手段を講じています。 そんな異例のミュアフィールドビレッジGC2連戦の2試合目は「ザ・メモリアルトーナメント」。ジャック・ニクラスがホストを務める格式高い一戦です。 基本的に選手とキャディ、コーチ以外の練習場入場を禁じるなど、オーガスタナショナルに通じるコンセプトが随所に感じられます。キャディが白い上着を身にまとい、緑と白のコントラストが大会を彩るのも、...
2020/09/04進藤大典ヤーデージブック

出るだけですごい最終戦 マキロイが10億円つかんだ16番

イーストレイクGC 16番パー4 (454yd) プレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」は30人のみが立つことを許される舞台です。出場者には翌年のメジャー、ことしに限っては本来ツアー優勝者のみで争われる1月「セントリートーナメントofチャンピオンズ」の切符なども与えられます。 まさに出ることが、これ以上ないステータス。前週「BMW選手権」最終日の最終18番、滑り込みで初出場を決めるパットを入れたマッケンジー・ヒューズ(カナダ)が「ゴルフ人生最大のプレッシャーを乗り越えた」と優勝したかのように喜んでいたのは、決して大げさではないのです。そして、そのエリートフィールドに米ツアー参戦から出続けてい...
2020/06/18進藤大典ヤーデージブック

大西洋を望む狭小グリーン 小平智が初V決めた17番

ハーバータウンGL 17番パー3(174yd) PGAツアーが再開しました。これまで当たり前のように毎週開催していたトーナメントが3カ月なかった分、ありがたみを実感します。陽性者が出たという情報もないようで、まずはひと安心。予断は許しませんが、世界中のスポーツ界が少しずつでも動き出してくれていったらと願っています。 再開2戦目の今週は、いよいよ松山英樹選手も出場します。「RBCヘリテージ」はルーキーだった2014年以来の参戦です。このハーバータウンGLは、ひと言で表現してしまえば“日本っぽい”コース。木々でセパレートされたホールのフェアウェイは狭く、グリーンも極めて小さい。林間コースで、風の...
2021/04/27進藤大典ヤーデージブック

米国選抜打倒のキーマン “ダブルス巧者”そろう豪州&南ア

PGAツアー唯一のダブルス戦「チューリッヒクラシック・オブ・ニューオーリンズ」をマーク・レイシュマンとキャメロン・スミスのオーストラリアコンビが制しました。 松山英樹選手のキャディとして何度か経験したダブルス戦。世界選抜と米国選抜の対抗戦「プレジデンツカップ」、石川遼選手との同学年ペアで挑んだ2016年「ワールドカップ」、17年には谷原秀人選手とのチームでこの試合にも出場しました。その17年大会でヨナス・ブリクスト(スウェーデン)とともにツアー初優勝を飾ったのがスミスでした。 ダブルス戦でもっとも大事なのは、ボギーを打たないこと。そこに“打順”の要素も絡んでくるのが、このフォーマットならでは...
2020/11/12進藤大典ヤーデージブック

コブさえなければ…オーガスタ8番で試される“ショートする勇気”

オーガスタナショナルGC 8番パー5 (570yd) ゴルフの祭典と称される「マスターズ」が12日(木)に開幕します。コロナ禍にあって、11月開催もパトロン不在も大会史上初めてという異例の4日間。見慣れない秋のオーガスタとともに注目されるのが、9月の今季メジャー初戦「全米オープン」を自慢の飛距離で制圧したブライソン・デシャンボー選手のプレーでしょう。規格外のパワーが新たな攻略法を生み出すのか――。3つのホールをピックアップします。(解説・進藤大典) オーガスタにあるパー5は4つ。前回紹介した2番をはじめ、いずれもスコアを伸ばしていきたいホールです。1942年から昨年大会までの通算データでも、ホ...
2020/11/11進藤大典ヤーデージブック

パー5の2打目でショートアイアンも デシャンボーがマスターズを変える?

オーガスタナショナルGC 2番パー5 (575yd) ゴルフの祭典と称される「マスターズ」が12日(木)に開幕します。コロナ禍にあって、11月開催もパトロン不在も大会史上初めてという異例の4日間。見慣れない秋のオーガスタとともに注目されるのが、9月の今季メジャー初戦「全米オープン」を自慢の飛距離で制圧したブライソン・デシャンボー選手のプレーでしょう。規格外のパワーが新たな攻略法を生み出すのか――。3つのホールをピックアップします。(解説・進藤大典) 84回を迎える大会で勝ち方はさまざまですが、デシャンボーによって、「マスターズ」は新たなステージに突入するかもしれません。彼の追求するスタイルがオ...
2020/11/12進藤大典ヤーデージブック

狙いは隣のフェアウェイ? オーガスタ13番の新ルート

オーガスタナショナルGC 13番パー5 (510yd) ゴルフの祭典と称される「マスターズ」が12日(木)に開幕します。コロナ禍にあって、11月開催もパトロン不在も大会史上初めてという異例の4日間。見慣れない秋のオーガスタとともに注目されるのが、9月の今季メジャー初戦「全米オープン」を自慢の飛距離で制圧したブライソン・デシャンボー選手のプレーでしょう。規格外のパワーが新たな攻略法を生み出すのか――。3つのホールをピックアップします。(解説・進藤大典) “アーメンコーナー”の出口として知られる短いパー5の13番は、これまで大きく分けて2パターンの攻略ルートがありました。正面の松林に届かないよう3...
2019/08/08進藤大典ヤーデージブック

残り3ホールのはじまり 1オンチャレンジは功を奏すか

リバティーナショナルGC 16番パー4(325yd) PGAツアーはいよいよプレーオフシリーズに入ります。ことしから全3試合になり、第1戦は今後、1年ごとにニューヨークエリアとボストンで会場が入れ替わることになりました。試合後のフェデックスカップポイントランキングで下位選手が脱落していくサバイバルレースの始まりです。 今週の会場、リバティーナショナルGCでは2013年大会以来の開催になりました。ちょうど2年前、17年には「ザ・プレジデンツカップ」が行われました。当時とはホールの順番が入れ替わっているのですが、今回は16番、終盤の短いパー4をピックアップします。 325ydしかありませんから、...
2019/08/01進藤大典ヤーデージブック

バーディ必須のパー5 レギュラーシーズン最終戦は伸ばし合い

セッジフィールドCC 15番パー5(545yd) PGAツアーはいよいよ、来季のシード権も決まるレギュラーツアー最終戦となりました。来週の「ザ・ノーザントラスト」からは3試合のプレーオフシリーズとなります。一年は早いものですね。今週の会場は暑い、暑いノースカロライナ州グリーンズボロにあるセッジフィールドCC。優勝スコアは4日間で通算20アンダー前後と、例年バーディ合戦が繰り広げられています。 ピックアップしたのは15番ホール。今大会はパー5が2つしかない設定です。アウトの5番(529yd)とともに、このチャンスホールで確実にスコアを縮めないと、優勝争いにはからめない。特にサンデーバックナインで...
2020/02/06進藤大典ヤーデージブック

美しく、そして難しい 帝王が愛したペブルビーチの崖越えショット

ペブルビーチGL 8番パー4 (418yd) 「生涯最後のショットをするなら、ペブルビーチ8番のセカンドショットを迷わず選ぶだろう」 “帝王”ジャック・ニクラスは、かつてこんな言葉を残したそうです。開場100周年となった昨年、6度目となる「全米オープン」が開催されたペブルビーチGL。今週はトップアスリートや世界的セレブもカリフォルニア州のモントレー半島に集い、選手たちは4日間1人のアマチュアとチームを組んでプロアマ形式で戦います。2016年には東北福祉大で同級生だった岩田寛選手がフィル・ミケルソンと優勝争いを繰り広げ、僕も思い出深い大会です。 昨年、初めて撮影の仕事で行きプレーしましたが、その...
2020/02/27進藤大典ヤーデージブック

あの元世界NO.1も大嫌い!? ベアトラップ最難関は“乗ればOK”

PGAナショナル・チャンピオンコース 17番パー3(175yd) 今年もフロリダを巡る季節がやってきました。今週の「ホンダクラシック」に始まり、「アーノルド・パーマー招待」「プレーヤーズ選手権」「バルスパー選手権」と4週にわたるフロリダシリーズの始まりです。 第1戦の舞台となるPGAナショナル・チャンピオンコースは、ジャック・ニクラスが1990年の改修に携わったことで知られる超難関コース。その中でも、特に難度が高い15番からの3ホール=通称ベアトラップが有名ですね。今回はその3ホールから、最も難しいと言っていい17番をピックアップします。 やや打ち下ろしとなる175ydのショートホール。何と...
2020/01/09進藤大典ヤーデージブック

ワイアラエは左ドッグレッグ攻略が浮沈のカギ

ワイアラエCC 2番パー4(423yd) みなさま、新年おめでとうございます。PGAツアーも前週マウイ島での「セントリートーナメントofチャンピオンズ」でシーズンが再開し、今週はオアフ島で「ソニーオープンinハワイ」。いよいよフルフィールドで優勝争いが行われます。 日本人にとってもなじみ深い、会場のワイアラエCCはショットの飛距離よりも正確性が重視されます。前年のチャンピオン、ツアー屈指のショットメーカーであるマット・クーチャーのように、硬くて狭いフェアウェイ、小さいグリーンを丁寧に攻めたいところです。 2番ホールは序盤の厄介なパー4。ティイングエリアに立つと、選手、キャディはクリスマスや年...