2019/06/14GDOEYE

114年前に3連覇 あるスコットランド人選手の物語

◇メジャー第3戦◇全米オープン 初日(13日)◇ペブルビーチGL(カリフォルニア州)◇7075yd(パー71) ブルックス・ケプカは2019年大会で史上2人目の「全米オープン」3連覇を目指す。前回その快挙が達成されたのは実に114年前。当時、それを成し遂げたウィリー・アンダーソンとは、どんな人物だったのか。 米国のナショナルオープンで偉業を成し遂げた男は、そもそもスコットランド人である。古い文献『Famous North Berwick Golfers』によれば、1879年10月21日、エジンバラ郊外のノース・バーウィックで、6人きょうだいの長男(姉と妹が合わせて4人)として生まれた。 自宅近...
2019/06/22GDOEYE

勝利なき新記録 河本結の11ラウンド連続60台は何を示すのか?

20歳の河本結が前週「宮里藍サントリーレディス」の第3ラウンドまでにマークした11ラウンド連続60台(最終ラウンドは「71」)が、新記録だったことはあまり知られていない。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)によると、1988年のツアー制度施行後は、元世界ランキング1位アニカ・ソレンスタム(スウェーデン)がスポット参戦で数年かけて樹立した「10ラウンド連続60台」が最長記録だった。 5月第3週の「ほけんの窓口レディース」の第2ラウンドから計4試合をかけて、達成した。4試合の優勝スコアがすべて2桁アンダーというコース事情はあるが、年間10勝した2003年の不動裕理でも同年の連続60台は5ラウンド、平...
2019/06/11GDOEYE

国内女子ゴルフ 若手の台頭とキャリアのピークを探る

■世代交代の波 プロでのわずかなステップ期間を経て、彼女たちはツアーに押し寄せる波のようになった。 日本の女子ゴルフ界は、確実に世代交代が進んでいる。今季シード選手の平均年齢は史上最年少の26.4歳。“黄金世代”と呼ばれる1998年度生まれの勝みなみたちがその中心だ。2年前の夏、プロになったばかりだが、すでにツアーの中核を担っている。 3週間前の「中京テレビ・ブリヂストンレディスオープン」で勝が今季2勝目、2週間前の「リゾートトラスト レディス」は同学年の原英莉花が初優勝。5月のメジャー初戦「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」では世代内で注目度の高くなかった渋野日向子が初優...
2019/06/10GDOEYE

“オレオ・ボーイ” 金谷拓実が見せた適応力

◇米国選抜vs世界選抜(大学)◇アーノルド・パーマーカップ 最終日(9日)◇アローシアンC(アーカンソー州)◇パー72 最終日のシングルス戦、ドーミーに追い込まれた17番で首の皮をつなぐバーディパットを沈めた金谷拓実(東北福祉大)は力強く右拳を振り下ろした。次の18番ティへ向かう途中、金谷の元に走り寄ってきたのはマーク・イメルマン監督の娘さん。小さな手にはオレオクッキーが握られていた。 今大会で世界選抜として集まった選手たち。親睦を深めるため、開幕前の食事会では各選手に短いスピーチの時間が与えられた。そのお題は「このコースについて感じたことと、みんなが知らない意外な自分の一面について」だった。...
2019/06/10GDOEYE

チャンスは12回 アマチュア中島啓太が追い求めるもの

◇米国選抜vs世界選抜(大学)◇アーノルド・パーマーカップ 最終日(9日)◇アローシアンC(アーカンソー州)◇パー72 初めての練習ラウンドを行った開幕前の水曜日(5日)、金谷拓実と中島啓太の2人はいつものように水平器を使って、すべてのグリーンの傾斜を丁寧にメモしていた。 「最近の選手はやっていないですね。今週は僕たちだけです」と中島は言う。「でも、ちゃんとやっていたカーティス・ラックとか、キャメロン・デービス、ミンウ・リーとかは上位に行っている。だから、ちゃんとやる人の方が上に行けると思います」。自らのやることに迷いはない。 今年4月に日本体育大に入学した中島だが、大学進学を意識した時期は遅...
2019/03/13GDOEYE

米ツアー本格参戦からひと回り 小平智が思うこと

◇米国男子◇ザ・プレーヤーズ選手権 事前情報◇TPCソーグラス(フロリダ州)◇7189yd(パー72) 今季出場した10試合で予選落ちが4度あり、最高位は32位。フェデックスカップランクは162位に低迷する。数字だけ見れば、小平智は苦境に立たされていると映るだろうが現実は少し違う。毎年、翌シーズンの出場権が得られる同ランク125位以内を目指していた石川遼や岩田寛と異なるのは、小平には優勝者として2年シードがあるということ。今年の成績がどうであれ、来シーズンも確実に、米ツアーで戦うことができるのだ。 開催時期が5月から3月へと移ったが、小平の米ツアー本格参戦は昨年の今大会から始まった。ようやくひ...
2019/03/12GDOEYE

米ツアーへと続く道 金谷、青島が日本人初のパーマー・カップ出場へ

◇米国男子◇アーノルド・パーマー招待byマスターカード◇ベイヒルクラブ&ロッジ◇7454yd(パー72) フランチェスコ・モリナリ(イタリア)の鮮やかな逆転優勝で幕を閉じた今年の「アーノルド・パーマー招待」に、1人のアマチュア選手が出場していた。世界アマチュアランキング1位で、南カリフォルニア大学(USC)に通うジャスティン・サー(21歳)だ。 彼の出場資格はユニークだ。昨年7月、フランス・エビアンリゾートGCで、大学生によるライダーカップスタイルの競技会「パーマー・カップ」が開催された。1997年に始まったこの大会は、米国vs英国&アイルランドの大学生による対抗戦だったが、2003年に米国v...
2019/03/23GDOEYE

川村昌弘 フルスイングへの誓い

◇欧州&アジアン◇メイバンク選手権 2日目(22日)◇サウジャナG&CC(マレーシア)◇7135yd(パー72) 久しぶりに川村昌弘をカメラで撮影していて、ファインダー越しに「おや?」と感じた。ティショットを打った直後のフィニッシュがピタリと止まらず、収めたいと思っていたフレームから外れていく。「そうですね。今は振りちぎっていますから」と、時には体が大きく傾くほど強く振り抜く1Wショットのスイングは、以前に比べて豪快さが増していた。 「去年の頭くらいからかな。“もう日本ではやらないぞ、絶対こっち(欧州)に来るぞー!”と心に決めてから振るようにして」。スイングにこめた思いと努力も実り、昨秋の最終...
2019/03/29GDOEYE

妹のプロテスト合格とともに終えた競技人生 サポート役に徹する姉

◇国内女子◇アクサレディス in MIYAZAKI 初日(29日)◇UMKCC(宮崎県)◇6525yd(パー72) 首位と3打差の4アンダー5位タイで発進した20歳の吉本ひかるは、今大会で1歳上の姉・百花(ももか)さんにキャディを任せている。かつては姉妹でプロテスト合格を目指したが、百花さんは2年前に競技ゴルフから身を引いた。 百花さんは10歳で始めたゴルフについて、「すぐに妹の方が、才能があることがわかりました」と笑う。北海道で開催されたジュニア大会で優勝した経験はあるが、アマチュア時代からプロツアーでも活躍した妹との期待値はまったく違った。 ツアープロへの道を自ら閉ざしたのは、2度目の受験...
2019/03/28GDOEYE

分解して“向き”をそろえる 道具にこだわる父と蛭田みな美の契約フリー

◇国内女子◇アクサレディス in MIYAZAKI 事前情報(28日)◇UMKCC(宮崎県)◇6525yd(パー72) ドライバーとボールを除いて用具契約フリーの蛭田みな美。父の宏さんはクラブを分解し、組み立て直して調整するこだわりを持つ。福島県の自宅に設けた工房は、クラブカスタム用の道具であふれている。 分解する理由は複数あるが、その一つはシャフトの『スパイン』の調整だ。スパインとはカーボンシャフトの製造過程でできる、カーボンシートの巻き初めと巻き終わりが重なる部分。ほかの部分より硬く仕上がる。 あるシャフトメーカーの担当者は「微妙な硬さの差ができる。カーボンシャフトだけではなく、作り方の異...
2019/03/24GDOEYE

17歳の米トップジュニア 進学せずプロ転向決意の波紋

今週の「バルスパー選手権」に17歳の高校2年生、アクシェイ・バティアが推薦で出場した。「74」「72」の通算4オーバーでカットラインに3打及ばず予選落ちに終わったが、大学進学せず、今年9月にプロ転向する計画を立てているということで注目を集めている。 バティアは昨年、「全米ジュニア」こそ36ホールの決勝戦で惜敗したが、「ジュニアPGA」連覇をはじめ、「セージバレー」「ポロ」「ロレックス」などジュニア界のビッグタイトルを総なめにし、米国最大のジュニアゴルフ団体であるアメリカンジュニアゴルフ協会(AJGA)の最優秀選手に輝いた。前月には「ジョーンズカップ」という大学生のトップ選手が大半を占める、世界...
2018/12/19GDOEYE

火種くすぶる女子ゴルフ 説明不足で不信感

国内女子ゴルフツアーは昨年来、大会の「放映権」を巡り揺れてきた。この問題を背景として、2019年シーズンは10年ぶりに試合数が減少し、36大会となる。 日本のプロゴルフは、放映権の仕組みが独特。例えば、Jリーグは日本サッカー協会、プロ野球は各球団が放映権を持っており、放送局がライセンス料を支払って放映する。米国のPGAツアーも同様だ。これに対し、日本のゴルフは大会主催者に放映権が帰属すると解されてきた。 草創期に競技を普及する目的で、テレビ局にスポンサーを要請してきた経緯があり、今でも多くの大会でテレビ局が主催者に名を連ねるためだ。ツアーを主管する協会に放映権料は入らない仕組みとなっている。 ...
2018/11/25GDOEYE

チェ・ホソンはなぜ踊る 本人が“虎さんスイング”を解説

◇国内男子◇カシオワールドオープンゴルフトーナメント 最終日(25日)◇Kochi黒潮カントリークラブ(高知)◇7315yd(パー72) 2018年の日本ツアーのみならず、世界で一世を風靡しているチェ・ホソン(崔虎星/韓国)の変則スイング。インパクト直後にテニス選手のように右足を上げてクルっと回転し、ボールの行方を目で追いながら体を左右にくねらせる。6月に韓国ツアーに出場した際、SNSで拡散されたそのスイングにジャスティン・トーマスら世界のトップ選手も大ウケ。ところが“虎さん”自身は「僕はパソコンが全然できないから、よくわからないんだ」と苦笑いする。 曰く、現在のスイングに至ったきっかけは20...
2018/11/05GDOEYE

トルコのゴルフ ツアーへの関心と環境のギャップ

◇欧州男子◇ターキッシュエアラインズオープン 最終日(4日)◇レグナムカーヤゴルフ (トルコ)◇7159yd(パー71) コース内に設けられたプレスルーム。「ターキッシュエアラインズオープン」の取材受付カウンターには、大会の資料とともに物珍しい小冊子が山積みになっていた。ひとつはトルコ語版、もうひとつは英語版。表紙にはトルコゴルフ連盟(TGF)のエンブレムとともに、「報道陣向け・ゴルフエチケット」と記されていた。 絵本のような作りの全48ページには、ゴルファーの絵や写真が大きく配置され、それぞれに説明書きがある。世界中のゴルフ関係者にしてみれば、内容はちょっと驚くもの。「プレー中は静かに」「試...
2018/11/04GDOEYE

ゴルフバッグの輸送はタダ 谷原秀人のサポーターは“世界一の航空会社”

◇欧州男子◇ターキッシュエアラインズオープン 3日目(3日)◇レグナムカーヤゴルフ (トルコ)◇7159yd(パー71) 谷原秀人がターキッシュエアラインズとスポンサー契約を結んだのは今年4月のこと。昨年から欧州ツアーを主戦場にした39歳のベテランは、シャツの左襟に新しいロゴを入れ、世界を舞台に戦っている。 同社の航空機は現在、世界最多の122カ国に就航。アジアと欧州の中継地であるトルコ・イスタンブールから110カ国以上へのフライトがある。年間30カ国で試合が行われる欧州ツアーを主戦場とする上で、心強いサポートであることには間違いない。「本当にありがたい。ターキッシュエアラインズはどこへでも飛...
2018/10/26GDOEYE

寂しいスタートホール…ジャンボに映る風景と石川遼の思い

国内男子◇マイナビABC選手権 2日目(26日)◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇7217yd(パー72) 「スタートの雰囲気とか、暗くて寂しいよね」。第2ラウンド途中で棄権した尾崎将司の一言が耳に残った。 尾崎は「オレのプレーは見せられないよ」と自身のゴルフに厳しい言葉を投げかけた。そして「日本のゴルフは、やはり遼(石川遼)が頑張らないといけないな。優勝争いをしてギャラリーを連れてきてくれないと」と話し、冒頭の言葉を続けた。 日本ゴルフトーナメント振興協会のまとめによると、今季の1試合平均のギャラリー数は1万5509人。尾崎が3勝を挙げた20年前の1998年の1万8854人に比べ、3300人以...
2018/11/03GDOEYE

欧州ツアーのキャディは大変 スタッツ用のシートとチップ

◇欧州男子◇ターキッシュエアラインズオープン 2日目(2日)◇レグナムカーヤゴルフ (トルコ)◇7159yd(パー71) ユーラシア大陸からオーストラリア、アフリカにも足を伸ばす欧州ツアーのスケジュール。30カ国、47試合が組まれた今年のシーズンも佳境に入った。昨年途中に本格参戦を始めた谷原秀人は、2年目の今年もポストシーズンに進出。最終戦の「DPワールド ツアー選手権ドバイ」を目指してサバイバルゲームに挑んでいる。 毎週、パスポート片手にフライトを繰り返す旅が“日常”になったのは谷原のサポートスタッフも同じ。日本ツアーも仕事場にする上村朋弘キャディも各国との往復を繰り返す。欧州ツアーのキャデ...
2018/04/10GDOEYE

オフライン観戦を貫く「マスターズ」 だからパトロンは熱狂する

◇メジャー第1戦◇マスターズ◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7435ヤード(パー72) もしパトロン(ギャラリー)に「賛成か?反対か?」というアンケートをしてみたら、どちらが多数派を占めるか興味深い。「マスターズ」はいまや(知る限り)世界唯一の携帯電話を持ち込めないトーナメントだ。 それはメディアも同様で、携帯電話やスマートフォンはプレスセンターから持ち出せない。一度コースに出てしまえば、入ってくる情報は遠くの歓声や手動のリーダーボード、周囲の人々の口伝えなど。コース内には何万もの人々がいるが、誰ひとりとして、スマートフォンの小さな画面をのぞき込んだり、目の前を歩く選手に携帯カメラ...
2018/04/17GDOEYE

反骨心と素直な心 米ツアー制した小平智の2つの資質

◇米国男子◇RBCヘリテージ 最終日(15日)◇ハーバータウンGL(サウスカロライナ州)◇7099yd(パー71) 「まだ打った方がいいのかな?」と苦笑する。見ているこちらがあ然とするほど、ごく自然な姿だった。日曜日の昼下がり、小平智はハーバータウンGLの練習場で数人の関係者に見守られつつ、最終組のホールアウトを待っていた。首位で並ぶキム・シウー(韓国)が最終ホールでバーディを獲らなければ、2人のプレーオフになる。「なんか緊張してきた」と笑いながら、軽く球を打っている。これから人生を変える決戦に挑むというのに、あまりにも無防備な振る舞い。“おいおい大丈夫か”というのが正直な印象だった。 小平は...
2018/04/07GDOEYE

78歳ジャック・ニクラスの新発見

◇メジャー第1戦◇マスターズ 2日目(6日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7435ヤード(パー72) 大会初日の朝8時。公式に「マスターズ」開幕を告げる朝一番のティショット“オナラリースタート”を行った「マスターズ」6勝のジャック・ニクラス(78歳)と、同3勝のゲーリー・プレーヤー(82歳/南アフリカ)。 セレモニー前、プレーヤーはニクラスにこう言った。「心配しなくていい。いまは自分の方が飛ばすけど、これまで50何年も君は僕のことをアウトドライブしてきたのだから…」。実際、セレモニーでプレーヤーは、ニクラスの数ヤード先へと1Wショットをかっ飛ばした。 この厳かなセレモニー中、オー...