2021/08/17進藤大典ヤーデージブック

ファウラー、ローズが125位に入れない PGAツアーの過酷なサバイバル

ケビン・キズナーが「ウィンダム選手権」を制しました。 ノースカロライナ州グリーンズボロにあるセッジフィールドCCは7131yd(パー70)と距離が短く、タイガー・ウッズが初めて大会に出場して大いに盛り上がった2015年は51歳のデービス・ラブIIIが優勝したことでも話題になりました。ショットの正確性とアンジュレーションのきついグリーン攻略がキーとなります。 ドライビングディスタンス289.2ydはツアー169位のキズナーですが、パットのスコア貢献度を示す「ストロークゲインド・パッティング」では上位常連のパター巧者。同スタッツで2016年に最高3位を記録すると、その後も30位→12位→20位→1...
2021/08/10進藤大典ヤーデージブック

東京五輪から147ホール目 松山英樹がプレーオフで見せたショットはすごかった

松山英樹選手が2週連続で見せ場を作ってくれました。週末に「64」「63」をそろえての大まくり。最終日9打差スタートからプレーオフまで持ち込む爆発力は圧巻でした。 ハードなセッティングに風も吹いた最終ラウンドのフィールド平均スコアは「70.923」と4日間で初めてオーバーパーを記録。ノーボギーが松山選手とコリン・モリカワ、今シーズンメジャーを勝った2人しかいなかったことも、難度の高さを物語っているでしょう。 特にパッティングが冴えていた最終日ですが、注目したいのはプレーオフ2ホール目のセカンドショットです。左サイドに広がる池のプレッシャーをより感じる左ピン。ティショットで右ラフに入れたボールは見...
2021/07/28進藤大典ヤーデージブック

【進藤キャディ解説】フェードボールが“栄光への架け橋” カスミの難関18番で金メダルをつかめ

29日(木)に男子から開幕を迎える5年ぶりのオリンピックゴルフ競技。埼玉県の霞ヶ関CCを舞台に世界中から集まった選手たちが栄光のメダルをかけて熱い戦いを繰り広げます。1番を中心にアウトコースをチェックした前回に続き、勝負の行方を左右するインコースを見ていきましょう。 13番(男子398yd、女子381yd)、15番(男子403yd、女子350yd)は短いミドルホールですから、積極的にバーディを狙っていきたいところ。17番(男子343yd、女子311yd)もパワーのある男子選手ならワンオンが期待できます。 バックナインで唯一のロングホールとなる14番(男子625yd、女子544yd)ですが、ここ...
2021/07/27進藤大典ヤーデージブック

伸ばし合い必至? 東京五輪会場・霞ヶ関CCに行ってみた

5年ぶりのオリンピックが、29日(木)にいよいよ始まります。まず男子の松山英樹選手と星野陸也選手、翌週女子の畑岡奈紗選手と稲見萌寧選手にはぜひとも金メダル獲得を目指して頑張ってもらいたいですね。僕もいても立ってもいられず、つい先日、舞台となる埼玉県の霞ヶ関CCを下見する機会をいただきました。 大改修を行ったコースは、最後の仕上げにも細心の注意を払っていたと聞きます。開催に向けて3月から週末にメンバーのみのプレーに限定、さらに5月からはクローズしてメンテナンスを徹底。下見の際もターフが一つもなく、グリーンに至っては足を踏み入れるのも恐れ多いキレイさで驚きました。 梅雨が明けたら一気に猛暑日が増え...
2021/07/13進藤大典ヤーデージブック

全英直前 当時19歳のジョーダン・スピースが見せた覚悟

ルーカス・グローバーが「ジョンディアクラシック」を制しました。直近の優勝は2011年「ウェルズファーゴ選手権」。2020-21年シーズンでは、開幕戦で11年ぶりVを飾ったスチュワート・シンクに次ぐブランクの長さとなります。 2016年にはパーオン率1位(71.63%)になったこともあるショットメーカー。けがや不調で15、18年と下部ツアーとの入れ替え戦も経験しました。40歳を超えてベテランの域に差し掛かり、「20代の頃より、いまの方が努力しているし、効率的な取り組みができている。100%、(優勝者として)戻って来られる確信があった」と言い切る自負がありました。 今年2月からは新たなコーチにも師...
2021/07/20進藤大典ヤーデージブック

コリン・モリカワが“神パット”を連発できたワケ

「全英オープン」最終日、コリン・モリカワのプレーは神がかり的でした。昨年「全米プロ」に続いて初出場での優勝。大会デビュー戦で2つのメジャータイトルを獲得したのは史上初の快挙です。 前週「スコットランドオープン」では71位と苦戦していましたが、リンクスを経験し、時差ボケ調整も済ませてメジャーへ乗り込んだ意味は大きかったと思います。 優勝を争ったジョーダン・スピースがコメントしていたように、大観衆の中で勝ち切ったことですさまじい総合力を見せつけられた思いです。全米プロは無観客の中で逆転V。今回は大観衆の中で首位のルイ・ウーストハイゼン(南アフリカ)を捉え、サンデーバックナインでスピースらの追い上げ...
2021/06/16進藤大典ヤーデージブック

【進藤大典キャディ解説】全米オープンっぽくない? 開幕直前のトーリーパインズを歩いてみた

今週、僕は仕事の関係で「全米オープン」が行われるカリフォルニア州トーリーパインズGCに来ています。せっかくなので現地から最新情報をお届けできればと思い、松山英樹選手のキャディとして戦っていたときのようにコースを歩いてチェックしてみました。 このサウスコースは「ファーマーズインシュランスオープン」の舞台として毎年のように訪れていた場所です。「全米オープン」をホストするのは2008年以来。ひざに痛みを抱えていたタイガー・ウッズがプレーオフ19ホール目でロッコ・メディエイトに競り勝った伝説の大会ですね。 「全米オープン」といえば、サディスティックなまでのセッティングが議論の的になるのが“恒例行事”。...
2021/06/08進藤大典ヤーデージブック

ラームの連覇消滅にやるせなさ カントレーは5分間の中断を味方に

「ザ・メモリアルトーナメント」の会場、ミュアフィールドビレッジGCは第3ラウンドが終わったあたりから騒然としていました。後続に6打差をつけて単独首位を走っていた前年覇者のジョン・ラーム(スペイン)が新型コロナウイルス感染を調べる検査で陽性と判定されて棄権を余儀なくされました。 ラームは4月の「マスターズ」直前に第1子が誕生したばかり。拠点を置くアリゾナ州では3月下旬にすべての成人を対象とするワクチン接種がスタートしていましたが、家族への配慮などから接種していなかったという情報があります。 陽性者との濃厚接触者に認定され、無症状ながらPGAツアーの規則に従い、場内施設利用の制限と毎日の検査を条件...
2021/06/01進藤大典ヤーデージブック

“飛んで曲がらない”コクラック 完全アウェーでスピース撃破

「チャールズ・シュワブチャレンジ」でジェイソン・コクラックが地元テキサスのジョーダン・スピースに競り勝ちました。 決勝ラウンド2日間とも2サム同組でのプレー。ギャラリー動員の“日常”が徐々に戻ってきつつあるPGAツアーでは、ホームとアウェーの空気が再びはっきり感じられるようになってきました。米ツアー屈指のスター選手であるスピースが、もっとも強烈な後押しを受ける地での優勝争い。完全アウェーの36ホールの末に勝ち切り、大きな自信になったことでしょう。 スピースにとっては、ホームの期待が重圧になった部分もあったと思います。個人的な“伏線”として挙げたいのが、前日3日目の最終18番で奪ったバーディ。コ...
2021/05/11進藤大典ヤーデージブック

冷静と情熱のマキロイ 次戦「全米プロ」は2012年Vコース

あんなに緊張したロリー・マキロイ(北アイルランド)の表情を見たのは、初めてかもしれません。2019年10月「WGC HSBCチャンピオンズ」以来となる優勝がかかった「ウェルズファーゴ選手権」最終日。16番からの上がり3ホールは“グリーンマイル”と称される難所でもあります。 マキロイは「WHOOP(フープ)」というアスリートのコンディションを管理するリストバンド式の端末を装着してプレーしていますが、最終18番の心拍数は140台を記録していたそうです。安静時で1分間に60~80回ほどが一般成人の正常値とされていますから、久々のタイトルを目前にして大きな重圧とも闘っていたことを物語っていますね。 ...
2021/04/06進藤大典ヤーデージブック

吉兆!? オーガスタでスピースの“ぼやき節”は聞こえるか

ジョーダン・スピースは、やはりオーガスタナショナルGCに愛された男なのかもしれません。「バレロテキサスオープン」での1351日ぶりとなる復活優勝。8日(木)に開幕するメジャー「マスターズ」へ最高の形で臨むことができます。 4日間のフェアウェイキープ率51.79%はフィールド78位、パーオン率58.33%は同66位と優勝した選手とは思えない数字が並んでいます。それでもスクランブリング80%、サンドセーブ率100%とリカバリーはさすが。得意のパッティングもパーオンホールの平均パット数「1.524」は堂々の1位。卓越したマネジメントとショートゲームという強みをしっかり生かしての勝利でした。 僕が松山...
2021/03/02進藤大典ヤーデージブック

データ“そこそこ”でも「人生イチ」モリカワ快挙を導いたパットスタイル変更

コリン・モリカワが「WGCワークデイ選手権」で通算4勝目を挙げました。2月に24歳になったばかり。25歳までにメジャーとWGCの両タイトルをそろえるのはタイガー・ウッズ以来2人目という快挙でした。 アマチュア世界ランキング1位に君臨するなど輝かしいキャリアを歩んできた選手。今季ドライビングディスタンス128位(294.1yd)が示すように飛ばし屋ではありませんが、ショットの総合力とアプローチ技術が光ります。 唯一ウィークポイントとして挙げられることもあったパッティング。そのグリーン上で劇的な変化がありました。最近は右手の親指と他の指でグリップを挟むような握り方「saw grip(ソー・グリップ...
2021/03/16進藤大典ヤーデージブック

闘争心と家族愛 ジャスティン・トーマスこそ“ポストタイガー”

開幕まで1カ月を切った「マスターズ」へ主役が調子を上げてきた感が漂います。ジャスティン・トーマスが“第5のメジャー”とも称される「プレーヤーズ選手権」を制しました。 特に決勝ラウンド36ホールは圧巻のプレーでした。フェアウェイを外したのが6ホール、パーオン失敗も5ホール。最終日にいたってはグリーンを外したのがラストの18番だけで、パットのスコア貢献度を示す「ストロークゲインド・パッティング」は「-2.053」。グリーン上の低調なスタッツは、あの難しいTPCソーグラスを相手にどれだけ驚異的なショットを連発したか逆説的に物語っています。 メジャー、WGC、フェデックスカップ(年間王者)に続くビッ...
2021/02/23進藤大典ヤーデージブック

ウッズゆえの豪華フィールド プレーオフゆえのホマV

「ジェネシス招待」はPGAツアーの選手たちにとって特別な試合です。年間のコースコンディション維持に数億円をかける名門リビエラCCが舞台ということに加え、タイガー・ウッズの財団がホストしていることに大きな意味があります。 ウッズからトロフィーをもらう――。プロゴルファーなら誰もが夢見る瞬間は、数年前までツアー外競技「ヒーローワールドチャレンジ」でしかかなわない栄誉でした。 かつては孤高の絶対王者というイメージだったウッズ。コース内ではあいさつのために声をかけるのもためらわれるレベルで張り詰めたオーラをまとっていたことを覚えています。近年は、すれ違えば向こうからちょっかいをかけて来てくれたほどフレ...
2021/02/02進藤大典ヤーデージブック

“外野”は騒がしくても…激変リードの静かなスイングにビックリ

「ファーマーズインシュランスオープン」が行われたトーリーパインズGCは非常にタフな舞台です。6月に「全米オープン」を開催予定のサウスコースは、シーズンのPGAツアーで最も長かった昨季と同じ総距離7765yd。さらにことしは2日目に雹(ひょう)まで降るなど気温も下がり、ボールがなかなか飛んでくれない二重苦。4日間の平均スコアは「73.340」と、この5年で最もハードなセッティングになりました。 天候が荒れた2日目を含め、そのサウスコースで3日間オーバーパーをたたかず、トータル6アンダーで回ったパトリック・リード。何よりもスイングの変わりように驚かされました。 2018年に「マスターズ」を勝ったこ...
2021/04/14進藤大典ヤーデージブック

【進藤キャディ手記】“救われた”かつての相棒 松山英樹へ「ありがとう」

まさに松山英樹選手の真骨頂を見せてもらいました。トーナメントリーダーで迎える最終日最終組。世界中のゴルファーが憧れてやまない「マスターズ」の舞台です。日本の悲願を背負い、誰も想像できないプレッシャーを感じていたと思います。その中でも堂々と、風格すら感じる王者にふさわしいプレーでした。 4日間を通じてスイングのフィニッシュが崩れる場面もありましたが、しっかりとフェアウェイを捉え続けていました。それこそが、いま松山選手が目指すスイングができつつある証拠なのではないでしょうか。 昨年12月に2人でラウンドしたときのことです。11月開催だった「マスターズ」以来と話していたラウンド中、目澤秀憲コーチとス...
2021/03/23進藤大典ヤーデージブック

「四十にして惑わず」と言うけれど…マット・ジョーンズの“岐路”

「ザ・ホンダクラシック」を制したマット・ジョーンズ(オーストラリア)のプレーには驚かされました。特に難度が高い15番からの3ホール=通称ベアトラップを含め、プレッシャーがかかる場面でもショットのテンポがまったく乱れませんでしたね。 シーズン通算でストロークゲインド・パッティングが29位(+0.54)とパットに秀でた選手ですが、最終日はグリーンを外したのが前半7番(パー3)の1ホールだけ。ショットの貢献度を示すストロークゲインド・ティ・トゥ・グリーンは4日間で「+14.301」を記録し、堂々の1位。後続に5打差をつけての逃げ切りは、とても7年ぶりのツアー2勝目とは思えないほどの横綱相撲でした。 ...
2021/03/09進藤大典ヤーデージブック

“根拠ある自信” デシャンボーはただの飛ばし屋にあらず

僕がキャディだったら、心の中で「ラッキーだな」とつぶやいていたと思います。「アーノルド・パーマー招待」最終日の後半16番。首位に立つブライソン・デシャンボーのティショットは左のフェアウェイバンカーのアゴにくっついてしまいました。 2打目は出すだけ。ベイヒルクラブ&ロッジの中でも特にタフな17番と18番の直前、バーディが欲しいパー5です。普通に考えれば、ものすごく痛い。 しかし、これがラフに入っていたり、フェアウェイバンカーの悪くないライに止まっていたとしたら…。優勝争いの緊張感は極限状態。池越えの危険度が上がっても、無理してグリーンを狙っていきたくなるもの。池に入れるリスクをゼロにしつつ、10...
2021/02/16進藤大典ヤーデージブック

“一匹狼”ダニエル・バーガーを変えたケガ

朝からすごいショットを見ました。「AT&Tペブルビーチプロアマ」を制したダニエル・バーガー。最終18番(パー5)は前日OBでダブルボギーをたたいたホールでした。加えて最終組の1組前をプレーし、マーベリック・マクネリと並ぶトップタイというシチュエーション。想像を絶するプレッシャーがかかっていたはずです。 左サイドに広がる海を避けようにも、狭いフェアウェイの右サイドにそびえる1本の木が厄介なポイント。実際、最終組のトム・ホジーも、この木の枝に引っ掛かったボールを見つけられずに紛失球で打ち直していましたね。美しい景色が広がるペブルビーチですが、ティイングエリアに立つと、映像からはわからない威圧感に襲...
2021/04/20進藤大典ヤーデージブック

親子タッグの恩恵 スチュワート・シンクは“ピりつかない”

スチュワート・シンクが「RBCヘリテージ」で今季2勝目を挙げました。47歳以上でのシーズン複数回Vは1960年以降でサム・スニード、ジュリアス・ボロス、ケニー・ペリー(2度達成)に次ぐ4人目のレアケース。2020―21年シーズンに2回以上優勝しているのが稀代の飛ばし屋ブライソン・デシャンボーとベテランのシンクだけというのも面白い現象です。 昨年9月の開幕戦「セーフウェイオープン」で2009年「全英オープン」以来となる優勝。復活を印象付けていたとはいえ、予選ラウンドで「63」をそろえて36ホールの大会最少ストローク記録を更新。若手に負けない爆発力を見せつけた後、週末はリードを生かして逃げ切るクレ...