ゴルフの祭典「マスターズ」 歴代日本人選手の成績は?
2019年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
ティマークの誘惑 オーガスタ3番は心理戦を乗り越えろ
4月のメジャー初戦「マスターズ」がいよいよ次週11日(木)に開幕します。すべてのゴルファーが憧れるジョージア州・オーガスタナショナルGCで、今年も熱戦が期待されます。当地は1934年、ボビー・ジョーンズとアリスター・マッケンジーの設計で開場し、年々進化を続けています。11番、12番、13番の“アーメンコーナー”は特に有名ですが、ほかにも攻略が難しいホールばかり。大会直前のこの連載ではアーメンコーナーの3ホール以外にポイントとなるホールを5つピックアップします。(解説・進藤大典)
■オーガスタナショナルGC 3番パー4(350yd)
序盤に訪れる、オーガスタでは距離が最も短いパー4です。ティショットからセカンド地点までは3ydほどの打ち上げになります。ヤーデージブックでまず目に入るのが左サイドのバンカー群で、229ydで入り、277ydのキャリーで越えていきます。春先の気温が上がりきらない時期に、アゲンストの風が吹くと確実にオーバーできるのは限られたロングヒッターだけ。松山英樹選手は今シーズン、飛距離もよく出ているのでチャンスがきっとあるはずです。
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このホールでおもしろい、選手やキャディを悩ませるのが、実は日々のティマークが置かれるポジションにあります。例えばピンが右奥にある日は、1Wで距離を出してできるだけ近づいた方が、2打目の70ydほどのアプローチが“足も使える”(ファーストバウンドから転がすことができる)ため、易しくなります。しかしそういう日に限って、大会側はティマークを後ろに下げて、第1打で左のバンカーを越えるか、越えないかという勝負を持ちかけてくるのです
一方、ティをあえて数ydだけ前に出し、バンカー越えを誘ってくるときもあります。こういうシチュエーションのとき、カップはグリーンの手前側など狭いエリアに切られることが多い。1Wショットが成功すると、どうなるでしょう。ピンがグリーンエッジに近いタイトな場所にあるため、今度は中途半端な距離で“浮かせて止める”、難しいチップショットを要求されます。残りは40、50ydといったところ。スピンをかけすぎると手前に戻ってきてしまう。左サイドの狭いエリアに切られたときは、突っ込みすぎて奥にこぼれるリスクがあります。
マスターズ委員会はただ、ティマークの位置を動かすだけで、選手心理のギリギリのところを攻めてくるのです。
バンカー越えを狙わず、5アイアン前後でフェアウェイに刻むときも極力左サイドをキープしたい。テレビで見ていると「なぜわざわざ広い右側を狙わないのか」と思うかもしれませんが、フェアウェイは右サイドに行けば行くほど、第2打で上空の木が邪魔になるのです。また、グリーンも全体的な傾斜は右から左に下るので、左から攻めて上りの傾斜にぶつけてボールを止めたい。アプローチが難しくなるグリーンの右サイドには落としてはいけません。
グリーンの形状を見ると、左サイドのタテ幅が10ydほどしかないことが分かります。このエリアにピンがあるときは、2打目のボールが止まるまでハラハラ、ドキドキで眺めます。少し右から傾斜を使って寄せていくのがセオリーになるでしょう。
このホールはオーガスタで4つのパー5を除いて、最も易しいホール。平均スコアは「4.08」でバーディも多く見られますが、緻密な計算があってこそのスコアなのです。
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。