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2022年 RBCヘリテージ
期間:04/14〜04/17 場所:ハーバータウンGL(サウスカロライナ州)
スピースが「全米プロ」へ視界良好 生涯グランドスラムに近いのは
ジョーダン・スピースが「RBCヘリテージ」で通算13勝目を挙げました。2018年に小平智選手が優勝を飾ったサウスカロライナ州ハーバータウンGLは距離こそ短め(7121yd、パー71)ですが、フェアウェイは狭く、グリーンもコンパクト。せり出した木の枝による“空中のハザード”もあり、ショットメーカー向きのコースです。
2月「AT&Tペブルビーチプロアマ」で優勝争いの末に2位となった以外はいまひとつだったスピース。前週は「マスターズ」でまさかの予選落ち。15年に優勝し、過去8回の出場でトップ3フィニッシュ5回と抜群の相性を誇るはずのオーガスタで初めて決勝ラウンドへ進むことができませんでした。
栄光のグリーンジャケットに袖を通したのはスコッティ・シェフラー。テキサス大への進学もスピースの影響が強かったとされる後輩がPGAツアー新人王、世界ランキング1位、マスターズチャンピオンと自らの足跡をたどるような活躍ぶりを見せているのです。3月にはスピースが成し遂げていない地元テキサスでの「WGCデルテクノロジーズ・マッチプレー」制覇も果たしていますから、間違いなく刺激になっていたと思います。
失意の翌週につかんだタイトル。これで約1カ月後の「全米プロゴルフ選手権」(オクラホマ州サザンヒルズCC)が一層楽しみになりました。直近3カ月、できれば1カ月以内に優勝して勢いを持ったままメジャーへ臨みたいと考える選手が多く、タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンも常々そういった“流れ”を重視するコメントを発していました。マスターズ前の出場5試合で初Vを含め3勝を挙げたシェフラーが一気に頂点まで駆け上がったのは記憶に新しいところですね。
「全英オープン」に勝って生涯グランドスラムへ王手をかけたのが5年前。強かったときの印象が鮮烈すぎて完全復活というのは早いかもしれませんが、一時の不振から着実にカムバックしてきたのは確か。これ以上ない流れで最後の関門にチャレンジできるはずです。
現在スピースとともにグランドスラムに近い位置にいるのは、ミケルソンとロリー・マキロイ(北アイルランド)。ツアーを離れているミケルソンですが、マサチューセッツ州のザ・カントリークラブで開催される6月「全米オープン」のエントリーリストには名前を連ねています。現時点で直近のトーナメント出場は2月のアジアンツアー「サウジインターナショナル」。百戦錬磨の51歳といえども、タフな戦いになるでしょう。
マスターズでは首位で迎えた最終日に「80」をたたいた11年の失速ぶりがクローズアップされてきたマキロイ。それでも、今年は最終日の大会ベストスコアに並ぶ「64」をマークして自己最高2位でフィニッシュ。本人も23年以降の挑戦へ大きな手応えをつかんだ様子でした。
メジャーで圧倒的な勝負強さを発揮してきたブルックス・ケプカ、初出場で全米プロと全英を制したコリン・モリカワも楽しみな存在。そして、日本人としてはオールラウンドプレーヤーの松山英樹選手を忘れるわけにはいきません。
ジーン・サラゼン、ベン・ホーガン、ゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)、ジャック・ニクラス、ウッズと過去5人しかいないグランドスラムの金字塔。アーノルド・パーマーやトム・ワトソンといった往年の名手たちが届かなかった伝説の領域に足を踏み入れる選手が現れるのか見ものです。(解説・進藤大典)
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。