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2021年 ザ・メモリアルトーナメント
期間:06/03〜06/06 場所:ミュアフィールドビレッジGC(オハイオ州)

進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

ラームの連覇消滅にやるせなさ カントレーは5分間の中断を味方に

「ザ・メモリアルトーナメント」の会場、ミュアフィールドビレッジGCは第3ラウンドが終わったあたりから騒然としていました。後続に6打差をつけて単独首位を走っていた前年覇者のジョン・ラーム(スペイン)が新型コロナウイルス感染を調べる検査で陽性と判定されて棄権を余儀なくされました。

ラームは4月の「マスターズ」直前に第1子が誕生したばかり。拠点を置くアリゾナ州では3月下旬にすべての成人を対象とするワクチン接種がスタートしていましたが、家族への配慮などから接種していなかったという情報があります。

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陽性者との濃厚接触者に認定され、無症状ながらPGAツアーの規則に従い、場内施設利用の制限と毎日の検査を条件に出場していました。仮にワクチンを接種していれば、濃厚接触者となっても毎日の検査は必要ない可能性が高かったそうです。コロナ下でのトーナメント運営の難しさを改めて実感するとともに、こういった形で連覇の夢が断たれたラームの心中を思いやると、本当にやるせない気持ちになります。

コースは松山英樹選手が2014年に初優勝を飾り、僕にとっても思い出深い地。昨年から(正確には昨年大会で最終日最終組がプレーを完了していったホールから)改修が施されていて、あまりの変わりように驚かされました。

すべてのホールでないとはいえ、大幅に改造されたグリーンは傾斜も変化しており、外しどころのイメージをガラッと変えないといけないケースもありました。例えばパー5の5番。近くにあるショートコースのグリーンをそのまま持ってきたのではないかと感じるほど、グリーンが小さくなった印象です。PGAツアーを開催するコースのロングホールとしては、もっとも小さいかもしれません。今大会4日間を通じて一番やさしいホールとなっていましたが、トップ選手たちも攻め方をアップデートして挑んだ結果だと思います。

もともとフェアウェイは広めですが、一度曲げれば脱出困難な深いラフ、アゴの高いバンカー、要所の池とクリークといったプレッシャーとの闘いになるコース。ショット力が試されます。

ラームの棄権により、優勝争いはパトリック・カントレーコリン・モリカワスコッティ・シェフラーといずれもショットメーカーがそろった三つどもえの展開になりました。スーパーショットの応酬となった勝負の行方にも影響したと思われるのが、最終組が後半17番をプレー中に降った大雨によるわずか5分間の中断。カントレーが7mのバーディパット、モリカワが3.5m強のパーパットを残していました。カントレーは難しいスライスライン。それまでパターの転がりがわずかに弱めだったのですが、雨で若干グリーンのスピードが落ち、ブレークするラインも切れずらくなるとの読みで強気に打てるようになったのでしょう。気持ちよく流し込んで首位に並びました。モリカワもその17番でパーパットを入れ返し、最終18番はグリーンサイドのバンカーからスーパーセーブでプレーオフに持ち込むあたりはさすがでした。

勝負のあやは、やはりプレーオフにも。ティショットをフェアウェイに運んだモリカワに対し、カントレーは右のラフ。しかし、モリカワのボールには泥がついていました。結果的にグリーンを外し、ラフからの寄せとシビアなパーパットを打たされることになったのです。

先に3.5mをねじ込んでモリカワに重圧をかけたカントレーの集中力は見事。同じカリフォルニア出身の後輩に負けるわけにはいかないという意地を見せてもらいました。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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