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2022年 CP女子オープン
期間:08/25〜08/28 場所:オタワ・ハント&GC(カナダ)

ツアー屈指の“ストイックプロ” ダニエル・カン<LPGA選手名鑑>

LPGAツアーは5大メジャー、そしてシーズン半ばの欧州シリーズを終えて米国大陸に戻り、今週カナダでの「CP女子オープン」で再開します。大会には2カ月にわたって脊髄腫瘍という病のため戦列を離れていたダニエル・カン選手が復帰。世界ランキングで最高2位まで到達した29歳も、近年のツアーを引っ張ってきた存在です。

■テコンドーから「全米女子アマ」2連覇

ダニエル・カン Danielle Kang
◆生年月日 1992年10月20日
◆出身 カリフォルニア州サンフランシスコ
◆ルーキーイヤー 2012年

韓国系米国人のカン選手は幼少期にテコンドーで体を作り、ゴルフを始めたのは12歳のときでした。14歳にして予選会を通過し「全米女子オープン」に出場してしまうのですから驚きです。ペパーダイン大時代には先日、馬場咲希選手が優勝した「全米女子アマチュア選手権」を連覇(2010、11年)。直後の8月にプロ転向して2012年からLPGAツアーに参戦しました。

■ブッチ・ハーモンに師事

鳴り物入りでプロの世界に飛び込み最初のうちはシードこそキープすれど、タイトルにはなかなか届きませんでした。苦労が報われたのは2017年のメジャー「KPMG女子PGA選手権」。ブルック・ヘンダーソン選手(カナダ)との最終日の争いを制してツアー初優勝を挙げたのです。

しかし翌2018年、彼女は大きな決断をします。夏場の「カナディアンオープン」から3試合続けて予選落ちし、ブッチ・ハーモン氏に師事。それまでの5年で初めてプロコーチの指導を受けることにしました。

すると2カ月もたたないうちに10月「ビュイックLPGA上海」で優勝。中国でのラウンド後、米国は深夜でしたが、ほぼ毎日電話でアドバイスをもらっていました。カン選手は「時差を忘れていた」と言いますが、名コーチの熱心なコミュニケーションと、的確なアドバイスに感謝していました。

その年のオフには苦手だった3Wの練習に専念し、得意のフェードボールから球筋を増やすためにドローボールにもチャレンジ。ちなみに今季を迎える前は、チッピング、とくにロフトの少ないクラブで転がして止める練習を多くこなしてきたそう。46度のウェッジをパターのように使い、トウダウンさせてアグレッシブに振り抜いてトップスピンをかけます。9Iから58度まで多彩に操り、様々なライからスピン量と転がりを計算して寄せる技に磨きをかけました。

■ストイックなプロアスリート

2019年に中国の大会を連覇。コロナ禍の2020年には2勝をマークし、平均ストローク1位選手に贈られるベアトロフィを獲得しました(70.082ストローク)。米国代表として「東京五輪」に出場した昨年はゼロ勝に終わりながら、2022年シーズンの開幕戦「トーナメント・オブ・チャンピオンズ」でさっそく優勝しただけに、今回の離脱は想定外だったことでしょう。

ラスベガス在住で同じエリアに住む朴仁妃選手(韓国)と仲良し。また、アニカ・ソレンスタム選手(スウェーデン)もメールや電話で相談を受けてくれる大先輩です。「小さなゴールと大きなゴール」を決めることをアドバイスされ、ショートゲームやパットといった各部門での目指すべきゴールをいくつも決めています。

スイングコーチのハーモン氏のほか、ショートゲームコーチにパット・ゴス氏。またメンタルコーチに栄養士、フィジカルトレーナー、ストレングストレーナーといった具合に今では多くの指導者が彼女の周りを固めています。

さらに2021年のオフにはUFCパフォーマンスインスティテュートというチームに参加し、ボクサーなど格闘家と同じようなトレーニングをする機会を設けました。ゴルフを全く知らないトレーナーに身体の仕組みや筋肉の増強方法などを習い、今年は7kg増のパンプアップに成功していたのです。どれだけ疲れた日も、10分だけでもランニングを欠かさないというのですから、LPGAでも屈指のストイックなプロと言えるでしょう。

■緻密な練習と相棒へのやさしさ

練習も綿密なプランを立て、「きょうはショートゲーム、あしたはパッティング」と決めて1週間を過ごします。試合前にはグーグルマップでのコースチェックも行い、ラウンド前日からピンポジションを眺めて戦略を練ります。練習ラウンドの頻度も多く、試合前にはメトロノームを聞きながらテンポを調整。ゴルファーでなかったら弁護士か女優、映像に関わる仕事をしたかったそうで、コースでは感情的に気持ちを前面に出してプレーします。

自分への厳しさから、怒ると怖い…のが正直なところですが、チャリティにも積極的で、仲間思いで明るい性格からツアーに友達が多い選手でもあります。かねて優勝への強い思いを持っているのが「AIG女子オープン」(全英女子)。2018年からコンビを組んできたキャディのオリー・ブレットさんが英国出身なのが理由です。

カリフォルニア育ちで温暖な気候の方が成績も良く、寒いのが苦手。それでもオフは気温の低い日を選んで練習してきました。今年の開幕戦は寒い中で勝ち、「自信につながる」と話したのも、「正直に自分の意見を言ってくれるから好き」という相棒のため。残念だった今年の欠場という結果を受け、また奮起してくれるはずです。

片平光紀(かたひら・みつき) プロフィール

1989年、神奈川県生まれ。中学卒業後に単身渡米しジュニアアカデミーで腕を磨いた後、デイトナ州立大に進学。2011年に設立された世界女子アマチュアランキングで1位に立った。卒業後に米女子ツアーの予選会を通過してレギュラーツアーおよび下部ツアーでプレー。親指の故障を原因に2015年に現役を退き、米ゴルフチャンネルでリポーターに転身した。

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