2023年 三井住友VISA太平洋マスターズ
期間:11/09〜11/12 場所:太平洋C御殿場コース(静岡)
蝉川泰果は人知れずシャフトを“赤いシマシマ”に…新しいディアマナもテスト
◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 事前(8日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)
先週の「マイナビABCチャンピオンシップ」で、蝉川泰果は初日こそ「72」で62位と出遅れたものの、2日目と3日目に「64」というハイスコアをたたき出し、最終的に通算20アンダーの3位タイでフィニッシュした。直近の5試合はトップ10を逃していた(うち1試合は予選落ち)だけに、蝉川にとっては久しぶりに手ごたえをつかむ一週間となった。
<< 下に続く >>
実はその復調の背景に、ドライバーのシャフトチェンジがあったのはご存知だろうか。蝉川といえば、オレンジのラベルが目立つ三菱ケミカルの「TENSEI(テンセイ) プロ オレンジ 1K」を愛用していて、過去のツアー3勝は全てそのシャフトだった。ところが、先週の試合で挿していたのは赤ベースの縞々シャフト、グラファイトデザイン「ツアーAD」の最新作「VF」のプロトタイプ(6TX)だった。
同社のツアーレップ(用具担当)によると、蝉川はマイナビABC前週のオープンウィークに7本近くのシャフトをテストし、最終的に2本まで絞ったうちのひとつがVFだった。「長年替えていなかったので、試合ですぐに替えることはないと思っていました…」(同レップ)と、いきなり試合で投入したことに驚いたという。
初日の出遅れは前述の通りで、最初から良かったわけではない。実は初日が終わったあとにボールをスリクソンの「Z-STAR XV」から「Z-STARダイヤモンド」に替えており、この作戦が見事にハマった。「より柔らかく感じる」(蝉川)というダイヤモンドと、新しいシャフト(VF)がマッチし、「ほぼフェアウェイを外していなかった」(同レップ)と2日連続の8アンダーという結果につながったわけだ。
それにしても、蝉川がシャフトを替えようと思った理由はどこにあるのか。「(予選落ちした)全英オープンのあたりから、右の大きいミスを減らしたいという相談を受けていました。彼はそれをスイング面でもギア面でも模索していて、その中でのシャフト変更。右のミスを減らすといっても、“左を消す前提でエースシャフトよりもう少しつかまりがいいもの”を探していたんです」(契約するピンの用具担当)。その状況下で白羽の矢が立ったのがVFだった。
新たにハマるシャフトを見つけて一件落着、チャンチャン! とならないのが蝉川の性分。「もっといいものはないか」と試行錯誤は続いているようで、今週は御殿場の試合会場でまた別のシャフトをテストする姿が見られた。
水曜日のプロアマ戦スタート前の練習で、ネックをカチャカチャしてVFを外し、見慣れない黒ベースに白いコスメのシャフトを装着。見たことのないシャフトだったが、プリント部分を見ると「Diamana(ディアマナ)」の文字が入り、「WB」という今まで聞いたことのないモデル名が併記されている。「W」の頭文字(White)といい、白コスメといい、これはいわゆる手元調子系の“白マナ”か?
その場にいた三菱ケミカルのツアーレップに話を聞いても、まだ詳細は明かせないという。ただひとつ分かるのは、“左を消す前提でちょっとつかまりのいいモデル”の条件を満たしたシャフトであること。まさにしっかりと叩ける白系シャフトなのは間違いないが、過去のディアマナとどう違うのか。
蝉川はディアマナの新作らしきシャフトで数発打って、そのあと三菱ケミカルのレップと「ゴニョゴニョ…」と相談。様子を見る限り今週の投入はなさそうだが、この先また改良を加え、残りの試合でテストを繰り返していくのだろう。その性能や発売時期などナゾは多いが、蝉川の動向を見ていればヒントをつかめるかもしれない。
それにしても、新しく手にした“赤シマの相棒”に飽き足らず、さらに良いものを見つけようとする蝉川の姿勢。賞金王争いでは1位の中島啓太と約5000万円の差が開いているが、まだ全く諦めていないようだ。(静岡県御殿場市/服部謙二郎)