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<選手名鑑236>ラッセル・ヘンリー(前編)

■Oh! ヘンリー 初戦で初優勝の鮮烈デビュー

ラッセル・ヘンリー(28)はPGAツアー初陣にして優勝という快挙を成し遂げた。ヘンリーは2012年のウェブドットコムツアー賞金ランク3位の資格でシード権を獲得し、2013年1月、ハワイで開催されたソニーオープンで、胸を高鳴らせデビュー戦を迎えた。多くの選手は緊張やプレッシャーで実力を発揮するのは難しいのだが、彼は違った。予選2日間は『63』、『63』でプレーし、当時の同大会36ホール最少スコア記録を更新した。最終日は最終5ホールを連続バーディとして『63』でフィニッシュ。通算24アンダーで、当時の大会記録をも更新し初優勝を飾った。ハワイらしくVサインの代わりにハングルース(hang loose=親指と小指を立てるポーズ)で喜びを表現した。

最終日の16番では、ティショットを左の林に打ち込みピンチに陥ったが、木の間を抜くスーパーショットを決めチャンスメーク。17番でも5mのバーディパットを沈め、優勝を確定的とした。どこからでも入れる神業的パットに競り合っていた南アフリカのティム・クラークも脱帽。「お前には敵わない」とでも言いたげに、最後は笑っていた。

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■ラストチャンスに猛アタック!

今年4月のシェルヒューストンオープンは、優勝すればマスターズの出場権を獲得できるラストチャンスだった。ヘンリーはジョージア州で生まれ育ち、故郷開催のマスターズは彼にとってメジャーの中でも特別な試合だ。過去3回連続で出場したが、16年は出場を逃し、今年こそと出場への意欲は高まっていた。強風に雨という荒天で波乱の予感が漂った運命の最終日、ヘンリーは、17アンダーで首位を快走するカン・スンを4打差で追いかけてスタートした。アタックモード全開で10バーディを奪う『65』の猛攻で、“ヘンリー劇場”が展開された。通算20アンダーまでスコアを伸ばして大会タイ記録で逆転優勝し、マスターズ出場の最後の切符を手にした。念願のマスターズでも好調は続き、最終日5番(パー4)でイーグルを決めるなど『69』でプレーし、スコアを1アンダーまで盛り返し、松山英樹とともに11位タイでフィニッシュ。12位までに与えられる来年の出場権も獲得した。

“ヘンリー劇場”といえば、2勝目を挙げた2014年のホンダクラシックを思い起こす。ロリー・マキロイライアン・パーマーラッセル・ノックスの4人によるプレーオフに突入。右に池が広がるパー5で、3人は池を避けて左から攻めたが、ヘンリーは池のリスクを恐れず、果敢に攻めて2オンに成功した。そこから2パットでバーディを奪い、3人を退けて勝利をつかみ取った。

■ウッズの影響 マキロイの衝撃

ヘンリーはタイガー・ウッズの活躍を見ながら成長してきた世代だ。多少のリスクを背負っても、ピンを果敢に狙う攻め、難度の高いアプローチでは、アクロバティックな技術を駆使するなど、ヘンリーのプレーはウッズの影響を強く感じさせた。だが、2011年の全米オープンで優勝したロリー・マキロイの圧倒的なプレーを見て変化が起きた。マキロイは初日から首位を譲らない完全優勝。ゴルファー世界一を決める全米オープンで、完全優勝を達成したのは史上7人目の快挙で、通算16アンダー、268ストロークはこれまでの記録(80年/ジャック・二クラス、93年/リー・ジャンセン、00年/タイガー・ウッズ、03年/ジム・フューリック)を4打更新する新記録にもなった。さらに2位のジェイソン・デイに8打の大差をつけ、他を寄せつけない圧勝だった。

マキロイは1989年5月4日生まれ、ヘンリーは同年4月12日生まれの同じ歳だ。マキロイのリスク&リワードの異次元プレーを目の当たりにし、その凄さに衝撃を受けた。マキロイもウッズのゴルフに大きな影響を受け成長したが、彼はさらに進化させ、独自スタイルを確立させていった。ヘンリーのアグレッシブなプレーはその時を境に、より磨きがかかっていった。

■“クイックパット” ヒントは名投手の迷いを断ち切る投球術

ヘンリーの好きなクラブ、得意クラブはパターだ。パットのランクは、デビューした13年は8位、翌14年は26位に下降したが、15年には再び8位に浮上した。昨年は初めて50位を下回る56位で自己ワーストとしたが、今季も8位と上位をキープしている。彼の特徴はサッと構え、パッと打つ“クイック・パッティング”。ジョージア大学時代にヘンリーの個人コーチを務めたボビー・ヒックス(全米プロゴルフ協会インストラクター、ジョージア州メイコンのアイドル・アワーGC所属)とヘンリーは、当時MLBアトランタ・ブレーブスの投手だったジョン・スモルツを交えゴルフ談議をしたことがある。ゴルフ上級者であるスモルツに「ゴルフと野球、どちらがハードですか?」とヘンリーは質問してみたそうだ。するとスモルツは「ゴルフ」と即答。「投球は、自分のルーティンと本能で投げる。もし次の投球までに考える時間が長くなれば、どの球種を投げて良いかわからなくなる。バッターも同様で、考える時間が長くなると球種の予測が難しくなるからだ。ゴルフは野球に比べて、考える時間が十分すぎるほどにある。そこがスポーツで最も難しい点だ」。ヘンリーはこの言葉にヒントを得て、考える時間を短くするためにパットの動作をクイックに変えたのだった。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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