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2015年 ザ・ホンダクラシック
期間:02/26〜03/01 PGAナショナル(チャンピオンコース)(フロリダ州)

<選手名鑑147>ブルックス・ケプカ(バック9~後編~)

■ 故郷での開催 メジャーよりエキサイト!?

欧米両ツアーで初優勝し、躍進中のブルックス・ケプカ(24)の故郷は、今週の「ホンダクラシック」が開催されるフロリダ州ウェストパームビーチだ。1990年5月3日に同地に生まれ、フロリダ州立大学に進学した生粋のフロリディアン。今大会への思いは強く、家族や多くの友人も駆け付け、大いに盛り上がりそうだ。

父・ボブは高校時代に野球、バスケットボール、レスリングで活躍したアスリート。ゴルフは大学卒業後に始めたが、抜群の運動神経で瞬く間に腕を磨いた。ブルックスの母、デニス・ジャコウとの結婚を機に、ウェストヴァージニア州からフロリダ州に転居し、地元のゴルフ場のメンバーになると、週末には必ずプレーするようになった。ブルックスは父の影響で、最初は野球に夢中だったが、7歳の頃に父が出場するゴルフクラブの試合に観戦に出かけ、興味を抱くようになった。練習場でボールを打ってみると楽しくてたまらず、夏期、冬期の休みにはゴルフの合宿にも参加。父譲りの運動神経なのか、上達は早く、小学生の大会に出場するようになった。当時から強い弾道のフックボールを打っていたという。12歳の時に野球を辞め、ゴルフ一本に専念して競技に出場するようになると、父から「試合では必ず勝つという強い意思を持つこと」を教えられた。

ケプカ家は4歳下の弟チェイスと4人家族。弟が誕生して間もなく両親は離婚し、兄弟は父と別れ、母デニスと3人で暮らしてきた。母は世界最大の民間軍事、警備会社の広報として働きながら息子たちを懸命に育てた。息子の出場する試合には、日程を調整し同行、傍らで応援を続けてきた。ケプカは母の励まし、コーチや関係者のバックアップで、高校3年生の時にはフロリダ州のトップジュニアに成長した。

■ ピンクリボンに思いをこめて

フロリダ州立大学に進学しゴルフ部に入部すると、勉学、練習、キャンパスライフを楽しんでいた。2011年、大学3年生になったある日、母がステージの進んだ乳がんであることが判明し、すぐに両方の乳房切除の手術を受けた。その手術は成功したものの、8回に渡る科学療法を受けることになると、ケプカは一家の大黒柱として母の看病、自宅静養、家の雑事をすべて仕切った。当時高校生だった弟も炊事、洗濯、掃除など家事を手伝い、母子3人のチャレンジが続いた。

母の闘病を機にプロになるか迷いはじめたケプカだったが、母は「下ではなく上を向いて生きなさい」とキッパリ。将来はプロになりPGAツアーで優勝することを目標に定めた。まさにその瞬間が現実的なプロ転向だったのかもしれない。授業、勉強以外の時間は練習やトレーニングに充て、将来へと歩み出した。母が病と闘う姿は人生の指針となり、その頃から母を思う証として、乳がん啓蒙運動のシンボル“ピンクリボン”をつけて試合でプレーを始めた。

2012年6月、地区予選を勝ち上がりカリフォルニア州サンフランシスコ郊外のオリンピッククラブで開催された「全米オープン」に初出場。弟がキャディを務め、母も「最高のプレゼント」と言って同行した。最後の化学治療を終えてから5週間後だった。体調はかなり回復し、練習ラウンド2日間の全ホールをそばで見守った。結果は「77」-「77」で予選落ちを喫したが、翌週には胸を張ってプロ転向を宣言し、希望を胸に大海へと飛び出した。

■ 欧州ツアーから「逆輸入」で米国へ

プロ転向を果たしたものの、米国での出場権をもたないケプカ。1年前から、学生時代のライバルで、友人でもあるピーター・ユーラインが、欧州ツアーに参加して大活躍しており、彼の体験談から自身も渡欧を決めた。即行動を起こすと、翌月7月に欧州下部ツアーでプロデビュー。シーズン途中からの参戦で、試合数は10試合に限られたが、8戦目の「チャレンジ・デ・カタルーニャ」で初優勝、トップ10に3度ランクインする活躍を見せた。

同年は賞金ランク43位で、翌年の下部ツアー出場資格を獲得。フル参戦を果たして3勝をマークした。この3勝の資格で欧州レギュラーツアーの出場権を獲得し、英国、フランス、ドイツ、イタリア、北欧のフィンランド、ノルウェー、スウェーデン、中東ドバイ、カタールはもちろん、東欧カザフスタン、アフリカなど世界各地を転戦するようになった。言語、文化、習慣、風習、風土、気候、芝など、毎週のように異なる環境でのプレー。これらの経験、そして母と共に病気と闘い打ち勝った歴史があったからこそ、多方面でタフな男に成長したと言っても過言ではない。ケプカの追い詰められても動じないメンタル面の強靱さは、このように築き上げられたのではないかと僕は感じている。

2014年シーズンは欧州ツアー初優勝を飾り、ランク8位で今季のシード権を獲得した。米PGAツアーでは「全米オープン」4位などの躍進で、ポイントランク125位以内相当に入り、2015年シーズンのシード権を獲得した。今季は欧米両ツアーのシード選手として、世界を駆け巡る。2月の「フェニックスオープン」で初優勝を飾り、そのポテンシャルを見せつけたケプカ。今週は元気になった母、南フロリダ大学のエースに成長した弟の目前での晴れ舞台に、その勇姿を見せられるか。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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