シェフラーの新パター開発者 ローガン・オルソンに迫る(前編)
2023年 ヒーローワールドチャレンジ
期間:11/30〜12/03 場所:アルバニーGC(バハマ)
ローガン・オルソンのパターを世界ナンバーワンが握るまで(後編)
前週開催の「ヒーローワールドチャレンジ」を制したスコッティ・シェフラーの手には、ツアーでほぼ見かけることのないローガン・オルソン製のパターが握られていた。今回は前編と後編に分け、世界ランキング1位が切り替えることで話題となったパターの開発者に迫る。後編はシェフラーが投入に至るまでに着目する。
パターのデザインについて、シェフラーとはどれくらいの期間にわたり携わったのですか?
ローガン・オルソン
スコッティとは、今年の9月から仕事をしています。我々はダラスで会い、彼が何を求めているかについての話し合いを始めました。性能チェックのため何本かパターを持参し、我々は彼が求めるものを描くためのキャンバスを広げました。
実戦投入したパターは、私が彼のために作った1本目でも2本目でも、3本目のパターでもありません。私は3度にわたり直接会って作業をする機会に恵まれました。複雑な物事の全てを解きほぐしていき、はたで見ている人からすると分かりにくいかもしれませんが、その作業の過程でパターの全てのピースが何度も変更されました。重量、ソール形状、ライ角、ロフト、幅、長さ、音、打感、見た目のオプション、そしてスイングウエートなど、あれこれ試しました。思いつくもの全てという感じで。
彼が現在やっているのと同じことをした過去のゴルファーのリストをあたると、我々がプレーするこの現代的なゲームにあって、より古典的な手法を採っていることが見えてきます。型にとらわれない選手であり、テクニックや従来的な動きよりもかなり大きな度合いで、自分のフィーリングや意識に同調しています。彼が自分のゴルフの感覚を把握する程度は、ある意味、驚異的ですらあります。
これは試打セッションの一つでの出来事ですが、その時、私は5、6本の新しいパターを持ち込みました。彼はそのうちの1本を手に取ると、0.5秒としないうちに、パットをすることなく、「いや、違うな」と言いました。私は笑わざるを得ませんでした。確かにあの日、我々は数多くの異なることを試しましたが、彼がゴルフに対して持つフィーリングやコネクションのレベルには感銘を受けました。
ローガン・オルソンのパターは、市場にあるほかのパターと何において一線を画しているのでしょうか?そして、顧客は自分のためのパターを手に入れる上で、何をすべきでしょう?
まさにその質問をされた時、毎回少しのお金を持っていたなら、と思います。インスピレーションは面白いものです。人によっては質問が意味する層を一枚一枚はがすのは、簡単なことではないと思います。より深く掘り下げるためにしっかりと時間を使うのは、一瞥(いちべつ)するよりも難しいものです。私は、そのより深い見定めと、より長い考察、そして細部への注意が、私のパターを際立たせていると信じています。これまで、パターの作り手となる上での教えや訓練を受けたことはありません。そこに辿る足跡や、準拠するルールはありませんでしたので、私はとにかく時間が経過する中で、つまずきながら茨の道を歩んできました。
これは少し映画のマトリックスに似ていると思います(しばしのお付き合いを)。ひとたび自分の現実を形作っているルールを忘れる、あるいは「これまで常にこうしてきたから」という目隠しを取り除くと、もっと先の領域へ達することができ、長い年月をかけて人々が取り組んできた問題に対し、新たな視点からアプローチすることができます。スローモーションの中で動けるようになるのです。
私は人に、パターを作るのではなく、パターのキャンバスが自分の行く手にある、と言うのを好みます。ロケット部品や宝飾品、あるいはスイス時計ではなく、たまたまパターというプラットフォームだったのです。我々はもう随分前からあるコンセプトを見直していますが、これには私自身も含まれます。自分の問題に取り組もうとする姿勢が自分の違いを作り出していると信じています。
開始から仕上げまで、自分独自のやり方でこのプロセスに自分の印をつけます。これは私固有の言語による、期待されたものと遂行されたもののねじれなのです。より深く見定めるほどより多くの発見が見つかります。
ここフォーチュナにある近所のショップでは、古いカスタムカーを扱っています。とにかく美しい代物です。とある金曜に、我々がそのショップで車の一台を見ながら話をしていた際、オーナーは私に「この車は走っているとき、マスタングに見えなければ駄目なんだ。瞬時に認識されなければならない。でも停車したとき、じっくり時間をかけて見るとこの車はラインの全てが違う。以前と同じピースは一つとしてない。マスタングであることに変わりはないが、曲線や湾曲具合、部品やコンポーネントなど、この車がここへやって来た時と同じ箇所は一つもないんだ。俺はこの車で自分が触れた箇所の一つ一つに自分の印を残した。これを正当に評価し、心から理解する人のために、俺はこの車を作っているんだ」と言いました。
私にとっては、自分の作っているパターがその車なのです。そして、その違いの良さを本当に理解しているギアマニアは誰でしょう?そう、世界ナンバーワンのゴルファーです。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)