キム・ジュヒョン＝トム・キム。PGAツアーではすっかりトムの名前が定着！(Getty Images)

2021－22年シーズンのPGAツアーは、フェデックスカッププレーオフの直前にサプライズがあった。レギュラーシーズン最終戦「ウィンダム選手権」で当時非メンバーのキム・ジュヒョン（韓国）が2位に5打差をつけて優勝。ツアーのオリジナルコラムは今回、Chuah Choo Chiang氏がトム・キムの名前でも知られる20歳の超新星にスポットライトを当てた。

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■キム・ジュヒョン＝トム・キム

“トム・キム特急”はPGAツアー挑戦という、2カ月近くに及んだ旅をついに終えた。ただし韓国の20歳の天才プレーヤーにとっては、これは旅の始まりでしかない。次の停車駅は9月の「ザ・プレジデンツカップ」である。

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2002年7月に生まれたキム・ジュヒョン（韓国）はこれまで文字通り世界中で、アジアで勝利を重ねてきた。パキスタンにインド、マレーシア、インドネシア、シンガポール…。父のキム・チャンイクはティーチングプロになる前はツアープロだった。トムの活躍は、彼ら家族4人がかつてオーストラリアや中国、フィリピン、タイと移り住んでいた過去を映し出すかのようでもある。

キムは韓国人にしては珍しく英語名もある。小さい頃にテレビで観ていた『きかんしゃトーマス』がトムの由来。『トイストーリー』も好きで、バズ・ライトイヤーがお気に入りだったが、バズ・キムよりもトム・キムのほうが、響きが良かったらしい。

「ガンコなんです。僕は」とキムは言う。「普通は両親が名前を付けるものだけど、僕は自分のことをトーマスと呼んだらしくて。子どもの頃、あの番組も電車も大好きだったんです。自分のことをトーマスと呼び続けていたら、いつしか周りも僕をトムと呼ぶようになりました。短くていいなと思って、（トーマスではなく）トムにしたんです」

早熟にして優れた才能を発揮し、キムが世界レベルで大きく騒がれるきっかけになったのが7月「ジェネシス・スコットランドオープン」だった。PGAツアーと欧州ツアー（DPワールドツアー）の共催試合で3位に入り、翌週セントアンドリュースでの「全英オープン」では47位に。それ以前に「AT＆Tバイロン・ネルソン」、「全米オープン」で25位以内に入っていたこともあり、スペシャルテンポラリーメンバーに昇格した。

その3試合後、彼は超特急の勢いでPGAツアーに歴史を刻んだ。「ウィンダム選手権」で、PGAツアー戦後2番目の若さで優勝。なんと初日の出だしにクアドラプルボギーをたたきながら、最終ラウンドは「61」をマークし後続に5打差をつけた。すぐにメンバー入りすると翌週からのフェデックスカッププレーオフにも出場。7週にわたる連戦でガス欠になり、最終戦「ツアー選手権」進出こそ逃したが、シリーズ第2戦までプレーした。

「PGAツアーでプレーするのがずっと夢でした。7月の初め、なんとかして下部ツアーとの入れ替え戦、コーンフェリーツアーファイナルズへの出場権を取りたいと思っていたんです。それが1カ月後にはPGAツアーの優勝者になっていた…。ほんとにおかしなことです」とキム。「幼い頃、タイガーがどこかの試合で勝つのを見てから、ここでプレーするのが目標でした。できるだけ長く、ここにいたいんです」

■世界選抜の一員に

キム・ジュヒョンはプレジデンツカップの世界選抜メンバーに(PGATOUR)

キムの父はかつて米下部ツアーでプレーした経験がある。トムは5歳でクラブを与えられてからというもの、目覚ましい成長を見せた。2018年にプロ転向するまでにフィリピンなどで7勝。「他のどんなスポーツよりもゴルフに時間を割いてきました。家族で長い時間、ゴルフ場にいたので。ゴルファーになることは自然な流れでした。後悔などあるはずがありません。20歳で、PGAツアーでプレーできる人が、世の中にどれほど少ないことか！」

世界ランキング6位、スペインのジョン・ラームは少し前にキムと同組でプレーした。PGAツアーですでに80位台に相当する平均飛距離301ydを誇る韓国の若者を見て、ラームは「彼はティからグリーンまで同じことを繰り返すことができる。どのフェアウェイでも、どのグリーンでも。そしてパッティングが本当に正確だ」と称賛した。

「ひとつアドバイスを送るとすると、彼くらいの年齢のうちにもう少しボールスピードを上げられるといい。今のままでは長いコースだと少し戦うのが難しくなる。正確性をキープしたまま、もう少し飛ぶようになれば、どこでも戦えるようになるはず」

9月にクエイルホロークラブで行われる「ザ・プレジデンツカップ」で、キムは2009年の石川遼に次ぐ史上2番目の若さで世界選抜デビューを果たす。キャプテンのトレバー・イメルマン（南アフリカ）が初めて彼の名前を目にしたのは今年の初め。有名コーチのクロード・ハーモンIIIからのメッセージによるものだった。「あの若い韓国人から目を離すな」。そして7月の「全英オープン」で、イメルマンは彼の練習ラウンドを視察して驚いた。

「クロードは彼の教え子と一緒にプレーしたトムを見て、僕にすぐテキストメッセージを送ってきたんだ。『信じられないほど素晴らしい選手だ』と。若いエネルギーをクエイルホロークラブにぜひ持ち込んでほしい」