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ベン・ホーガンの60年前のプロトタイプクラブ

「チャールズ・シュワブチャレンジ」が開催されたコロニアルCCでは、そこかしこで、このコースでプロとして5勝を挙げた(1946、1947、1952、1953、1959年)ベン・ホーガンの存在が感じられる。クラブハウス内には、ホーガンのキャリアに関する写真や記念品の数々が飾られており、クラブハウスの外では、高さ2.1mのホーガンのブロンズ立像がゴルフコースにたずんでいる。

ホーガンの残したレガシーを祝福すべく、ホーガンが個人的に所有していた300本以上のクラブを所有するベン・ホーガン財団は、コロニアルCCの練習レンジでPGAツアープロたちにオリジナルのホーガンのゴルフクラブでショットを打つ機会を提供した。

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ゴルフのテクノロジーはホーガンがプレーしていた時代から飛躍的な進化を遂げたため、この催しは、現代の選手たちがパーシモンのドライバーや古典的なアイアンで打つことの難しさを体験する機会となった。

その挑戦に加え、ホーガンはクラブの試行錯誤を繰り返した選手であり、キャリアを通じてフックと格闘した選手でもあったため、用意されたゴルフクラブは、ホーガンの抗フックスイングに特化して組み上げられているという点も指摘しておくべきだろう。

PGAツアー選手のマーベリック・マクネリはホーガンのクラブを使用した体験について、GolfWRXに語ってくれた。

「とても難しかった」とマクネリはこう解説した。「クラブには彼の独自性が詰まっていた。クラブは置くと約10度オープンになっていて、少なくとも5度はフラットで、シャフトは柔らかく、オフセットはなくて、バウンスはごくわずかだった。おそらく、今日の用具を使い慣れている人がこれを使うと、地面に突き刺すような感じになってしまい、ダフりや、右プッシュや、フェードが出ると思う。スクエアに打つためには、手の位置を低く保ち、ハードにローテーションを行って、フェースをリリースする必要があるんだ」

ベン・ホーガン財団は、さらにホーガン個人のプロトタイプのゴルフクラブをコロニアルへ持参した(選手たちは、これらクラブは打たせてもらえなかった)。ベン・ホーガン財団のロバート・ステネットCEOによると、これら唯一無二のクラブは“かけがえのない物”であり、通常は厳重に保管されているという。

GolfWRXは1960年代初頭のものと推定されるこれらクラブを実際に拝見する機会に恵まれた。

「ミスター・ホーガンが他界した際、ご家族は彼の自宅にあった、かなりの量のクラブをシェイディオークスCCの理事長だったマイク・ライトに託し、その後、2007年にベン・ホーガン財団が設立された際、クラブは財団へ寄付されました」とステネットは経緯を説明した。

「全てのクラブがベン・ホーガン財団に寄付されました。同様に、スポルディングがここフォートワースにあったホーガン・カンパニーを閉じた際、ミスター・ホーガンの事務所にあった全てのクラブは、シェイディオークスのマイク・ライトへと寄付され、その後、我々がそれらを所有するに至りました。我々はこれらプロトタイプのクラブを含み、おそらく300本以上のミスター・ホーガンのゴルフクラブを持っていると思います」

この5本のゴルフクラブが公開されて分かったのは、ホーガンはゴルフクラブの発明家として、時代を先取りしていたということだ。

ホーガンの父親は鍛冶職人だったが、その父親が1922年に自殺した際、9歳だったホーガンは新聞を売って家計を支えなければならなくなった。11歳になると、彼はグレンガーデンCCでキャディの仕事を始め、最終的には高校を中退することとなる。

ホーガンは科学や工学の分野で高等教育を受けていないものの、聡明なゴルフ脳とゴルフスイングに関する知識は、後年、彼のゴルフクラブ製造を助けることになるが、その考え方は真に先進的なものであった。

選手としてのキャリアの最中だった1953年に、ホーガンは自身の用具会社を設立した。

「彼は自身の会社を立ち上げましたが、私自身の確証のある考えによると、それはそれまでの会社が、彼の用具に対する設計変更の迅速性に対応しきれなかったためであると考えられます」とステネットは述べた。

「ですので、彼は1953年に自身の会社を作ったのです。彼には自分のための技術者がいました。ミスター・ホーガンが紙にスケッチを描き、それを技術者たちに渡すと、技術者たちが実物大模型を作成し、それを基に行ったり来たりを繰り返して新しい用具設計を作り出していたというのは確かなところだと思います。ジーン・シーリーは、初期の技術者の一人です。彼はそこで長年働きました」

ホーガンはゴルフクラブのデザインを向上させるアイデアを持っており、長年寄り添ったクラブ技師のジーン・シーリーの存在もあって、実験的手法をベースにゴルフクラブを作り上げるためのアクセスと手段の両方を持っていたのである。現代の技術革新は、その再現性の高さゆえに、“アイアン・バイロン”のようなロボットマシーンによるテストがベースとなっているが、ホーガンはテストマシーンの役割も果たしていた。

「ミスター・ホーガンが“アイアン・バイロン”だったのです」とステネット。「当時は(テスト用具としての)ヒッティングマシーンはありませんでした。彼は工場へと足を運び、何かを考案し、そのクラブをあれこれいじり、その上でシェイディオークスへと持ち込んで、彼自身がアイアン・バイロンとなっていたのです。彼は試打し、工場へ持ち帰って微調整を施すといった作業を繰り返していましたが、これはミスター・ホーガンが試作していた実験的なクラブです。多くのクラブは、後に、とても有名なクラブとなりました」

ステネットの所有するこれらのプロトタイプクラブは、必ずしも一般販売にこぎ着けたわけではなく、ホーガンが競技で使用したわけでもなかったが、これらはホーガンの先見性と、限界を越えることへの意欲を雄弁に物語っている。

「私は今回、5例のみ持参しました」とステネット。「ミスター・ホーガンがいかにクリエイティブで革新的であったかが分かります。これらは、その後、実際にこれらのクラブが登場することになる20、30年前に、発明されたクラブです。彼のディテールへの注意には驚くべきものがあり、彼は極めて几帳面であり、彼は自身のゴルフへの愛と完璧さを追求することへの関心が自然と用具設計へ帰着するためのゴルフスイングの研究と学習に膨大な時間を費やしました」

ステネットが開帳したプロトタイプのコレクションには“ハイブリッド”、メタル製ドライバー、近代的な形状と重量配分のアイデアを兼ね備えたドライバー、独特の溝を持つアルミ製アイアン、そしてヒールではなくトウ側にシャフトの刺さったパターが含まれる。

これらクラブが何ゆえそこまで驚くべきものであるかは、以下の通りである。

ホーガンの“メタル”ドライバー

1979年にテーラーメイドが初めてメタルウッドを市場に出すまで、PGAツアーで使用されていたドライバーはパーシモンウッド製だった。しかしながら、結果的にメタルの方が木製の前任者よりも飛距離が出て正確性が高いことが証明されたことで、やがてパーシモン製ドライバーは過去の遺物となった。

この黒いホーガンのプロトタイプドライバーは、1960年代初頭に製作されたと考えられているが、これは最初にメタルウッドが一般に普及した何年も前のことだった。

もちろん、ホーガンがこのドライバーを市場に出すこともPGAツアーの競技で使用することもなかったわけだが、彼が発明者及び実験者として正しい方向へ進んでいたことは明白である。

ホーガンの“ハイブリッド”

今日、ハイブリッドはPGAツアーにおいても、一般の市場においても驚くほど普及している。しかしながら、過去には現代的なハイブリッドが存在さえしない時代もあったのである。

今、我々が“ハイブリッド”タイプのデザインとして認知しているフェースの長いギンティとバッフラーが初めてリリースされたのは1970年代のことだったが、このクラブの設計が本格的に広まり始めるのは、1990年代にコブラがバッフラーハイブリッドをリリースしてからのこととなる。

しかしながら、ステネットによると、ホーガンのシルバーのハイブリッドは、1960年代初頭に制作されたと言われている。特にマーキングは施されていないが、この形状は疑いようがない。

ホーガンの現代的形状のドライバー

1960年代のほぼ全てのパーシモンドライバーは、ワイドなホーゼルセクション、コンパクトで丸みを帯びた形状、そして狭いヒッティングエリアといった構造をしていたが、ホーガンのプロトタイプは、フェースのヒールとトウが細長い形状をしており、クラウンが三角形で、シャフトがクラブヘッドに直接刺さり、ソールまで貫く“ボアスルー”構造になっている。加えて、ホーガンは恐らくヘッドの重心位置を下げるため、ワッシャー型の重いウェートをソールに配している。

現代的なドライバーのヘッドデザインにおいて、こうした特性は、打ち出し角を高め、スピン量を減らし、寛容性を高めることで、パフォーマンスを最適化することが周知されている。1960年代にこのデザインが世に出ていたならば、間違いなく比類ないものとなっていただろう。

ホーガンのアルミ製アイアン

この設計に対するホーガンの意図は不明だが、ステネットはこの極度に軽いアイアンは恐らくアルミ製であると述べており、ヘッドに刻まれた溝は波の様な形状をしている。ホーガンはヘッドスピードを上げつつ、この溝形状でゴルフボールのスピン量をコントロールする試みをしていたのではないか、というのがステネットによる最も有力な仮説である。

ホーガンの逆さまパター

今日に至るまで、ほとんどのパターは、シャフトがクラブヘッドのヒール側から進入する構造になっている。しかしながら、このホーガンのプロトタイプは、シャフトがヘッドのトウ側から進入する作りになっている。

これまで複数のクラブメーカーが、同様のシャフト位置を試みているが、このデザインは、このリストにある他のプロトタイプほどの人気を得るには至らなかった。とはいえ、このパターは、ホーガンの進化するためには何でも試してみるという強い意欲を説明している。

(協力/GolfWRX、PGATOUR.com)

情報提供:PGA TOUR

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