2022年 バルスパー選手権
期間:03/17〜03/20 場所:イニスブルックリゾート(フロリダ州)
ヘンリック・ステンソンはなぜ10年前のアイアンを使い続けているのか?
ヘンリック・ステンソンが2023年「ライダーカップ」欧州代表キャプテンに任命された。スウェーデン出身の45歳が選ばれた理由はその経歴が物語っている。2009年「ザ・プレーヤーズ選手権」制覇を含むPGAツアー6勝を挙げており、欧州ツアー(DPワールドツアー)でも11勝を挙げている。2013年には史上初の快挙となるフェデックスカップとヨーロピアンツアー「レース・トゥ・ドバイ」の同年同時制覇も成し遂げている。さらに、2016年の「全英オープン」では、フィル・ミケルソンとの世紀のバトルを制してメジャー初優勝を飾った。
ステンソンはキャロウェイ レガシーブラック アイアンとともに数々の成功を手にしたわけだが、興味を引くのは、まだそのアイアンセットをバッグに入れている点だ。
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ゴルフ用具の世界では、日夜技術の進歩に励む製造会社が、毎年のように新しい設計や異なる素材を用いてパフォーマンスが向上したクラブを世に送り出している。しかし、ステンソンのレガシーブラック アイアンは、年月や革新の試練に打ち勝ってきたのである。
このアイアンは、2013年に“レガシー”モデルの第3世代がリリースされたが、北米以外の限られたマーケットにしか発売されなかった。見た目とパフォーマンスの良さに加え、少しばかりの寛容性も欲しい上級者向けに、キャロウェイ・ジャパンとロジャー・クリーブランドの共同で設計された。
遠藤製作所によりS20Cから鍛造されたキャビティバックのアイアンは、サテン仕上げとなっており、薄いトップラインと薄いソール、少ないオフセット、高いトウセクション、そしてスピンコントロールを強化する19本の溝が特徴となっている。また、バックキャビティには免震ラバーと呼ばれる黒い部分があり、打音と打感の向上を実現している。さらに、より高い寛容性のため、フェース背面底部にはアンダーカットが施されており、加えてより厚みを増したヒールとトウセクションがオフセンターヒットに際するマイナス効果を軽減させている。
キャロウェイはレガシーブラックの生産を終了しており、北アメリカでは一度もリリースさえされていないのだが、ステンソンはこれをいまだにバッグに入れ続けている。
GolfWRXは「バルスパー選手権」の会場でステンソンに対し、このアイアンについて、さらには彼が長年愛用し続けた、かの有名なキャロウェイ DIABLO Octaneの3番ウッドとの決別について聞いた。
GolfWRX.com: あたなは、もうかなり長年にわたり、キャロウェイ レガシーブラック アイアンを使い続けています。いつ使い始め、どこが気に入っているのでしょう?
ヘンリック・ステンソン: 2013年の「全米オープン」が行われたメリオンGC(ペンシルベニア州)であまりに多くのフライヤーを打ったんだ。当時僕のキャディだったギャレス(ロード)がキャロウェイへ行って、ラフから飛び過ぎないオプションは何かないかと尋ねたところ、ヨーロッパのスタッフがレガシーブラックを組み上げてくれたんだ。アイアンが届くと、感触や見た目が素晴らしく、フライヤーもそこまで打たなくなったんだ。それ以来、このアイアンはずっとバッグに収まっている。
GolfWRX.com: 言うまでもなく、メーカーはもうこのアイアンを製造していないわけですが、あなたはどこでこのセットを入手し続けているのでしょうか? オンラインで購入? あるいは、キャロウェイがバックアップを手配してくれるのでしょうか?
ステンソン: (キャロウェイは)確かまだ1、2セット持っているはずだね。自宅には使用済みのセットが大量にあるよ。少し失敗だったなと思うのは、ずっと同じウォームアップルーティンをこなしていて、ピッチングウェッジを打ったら、8番アイアン、そして4番アイアンと順に打っていたんだ。だから、僕のセットは全て4番、8番、そしてウェッジが他の番手より摩耗しているんだよ。大体、1年に1セットくらいのペースで回しているね。
使用したのは7、8、あるいは9セットほど持っていて、4番、8番、そしてウェッジの多くは磨耗している。常に、必要に応じてスクランブル態勢(でバックアップのセットを使うこと)ができるよ。新しいセットが底をつき、最終的に別のモデルに乗り換えなければいけなくなるかどうかは、今後次第だね。
GolfWRX.com: これまで変更を考えたことはありますか? 他のアイアンをテストしたことは?
ステンソン: イエス、折に触れてだけれど。キャロウェイは毎年、見た目の良いアイアンを出しているからね。ただ、単純に僕はちょっと古風なんだと思う。僕には何が良いのか分かっているし、あの見た目が好きなんだ。僕らのオフシーズンはそこまで長くないからね。自宅で新しい物を試してみる期間が2、3カ月あるわけではないんだ。それもバッグの中身を決める一因になっていると思う。OK、分かった、アイアンは残そう、という具合にね。彼らが新しいウェッジをリリースすると、僕らはテストして使ってみるし、これは新しいフェアウェイウッドでもそうだね。
知っての通り、僕は同じ3番ウッド(キャロウェイ DIABLO Octane)を長年使い続けたけれど、今は少し違うもの(キャロウェイ マーベリック サブゼロ、13.5度)がバッグに入っている。よくある考え方で、壊れていないのならいじる必要はない、ということだよ。
GolfWRX.com: では、大量のレガシーブラックの中古セットがガレージにしまってあるということでしょうか?
ステンソン: いくつか持っているよ。スウェーデンには2セットあって、オーランドにはさらに何セットかある。2セットは新品で、キャロウェイの本社にも1、2セットあるはず。(キャロウェイは)多分その行き先を僕に決めてくれているから、他の誰かがそのセットを使うことはないね。このモデルは2013年も発売されたはずで、それも限られた市場だったんだ。確か、ドイツ、オーストラリア、そして日本だったと思う。これは限定バージョンだったのだけど、彼ら(キャロウェイ)が取って置いてくれてうれしいし、今後のことは、またその時に考えるよ。
GolfWRX.com: ついに、キャロウェイ DIABLO Octaneのフェアウェイウッドは別の物に換えたのですね?
ステンソン: あれはベンチに下がったね。今はマーベリックを使っていて、バッグに入れてからもう1年半ほどになるね。ごくたまに入れ替えたこともあったけれど、あれは本当に長年をともにした信頼の相棒だった。たくさん良い思いをさせてもらったよ。
(協力/GolfWRX、PGATOUR.com)