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「僕は妻にウソをついた」レイシュマン夫妻 闘病と希望の物語

PGAツアーで通算5勝をマークしているマーク・レイシュマン(オーストラリア)のオードリー夫人は5年前、病魔と闘い生死の境をさまよった。世界最高峰の米国男子ツアーで戦うトッププレーヤーを長年取材してきた現地ジャーナリストが記すスペシャルコラム。今回はレイシュマン自身が、経験をもとに執筆。病気や人生の困難と闘う家族を支援するための「ビギン・アゲイン基金」を設立するに至ったエピソードを明かした。

■マーク・レイシュマン著

あまりにも多くのことが起きた2015年は、5年どころかもっと昔のことのようにも思える。それでいて、時には、たった1年前の出来事のようにも感じるほどで、頭の中の記憶はいまだに鮮明だ。

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4月のことだった。僕はジョージア州オーガスタで「マスターズ」に向けた準備をしていた。バージニア州にある自宅では、妻のオードリーがひどい風邪をひいたようだった。ところが、2日経っても熱は下がらず、一方で血圧が下がり、脈拍は1分間に140を刻んでいた(通常は60~100回)。自分で呼吸することも難しくなり、僕たちは彼女を病院へ急がせた。医師も恐怖を覚える中、最終的に彼女は血液中毒の敗血症だと診断された。感染症が全身へ生体反応を引き起こし、臓器を壊す危険な病だ。

マスターズ出場を取りやめ、一番早いフライトで自宅に戻ると愕然とした。医師たちがオードリーを仰向けに寝かせると、僕は彼女だと気づかないほど、妻がまったくの別人に見えた。体と顔がひどくむくみ、周りには抗生物質入りの点滴用の輸液バッグがいくつもあったのを覚えている。あのとき、おそらく自分が想像する以上に回復に時間がかかるだろうと思った。

医師たちからは最初に「彼女は生きられない可能性が極めて高い」と言われた。たくさんの管につながれたオードリーの部屋に戻ると、彼女はまだ意識があり、テキストメッセージで会話をした。彼女に「私は大丈夫なの?」聞かれた僕は、あからさまにウソをついたんだ。「うん、大丈夫だよ。でも闘わなくちゃいけない」

人生でもっとも大切なことのひとつは希望だ。もし彼女に正直に病状を伝えたら、もうあきらめていたかもしれない。希望を持たせることの意味は大きいと思う。僕は彼女を失うことも考えた。頭の中にそのことがよぎった。もうダメかと思ってしまう日も3、4日あった。言いたくないけれど、お葬式の準備もしかけた。生きられる可能性が低いと思ったとき、人は最悪のことを考えるもの。もし彼女を失ってしまったら…子ども達をオーストラリアに連れて帰り、そこで新しい生活を始めて、自分が母親代わりになることまで考えた。

しかし最終的には反対のことが起き、多くの意味で最高の結果になった。オードリーが生きているということは、僕がゴルファーとして、夫として生きることにおいて、サポートしてくれる最愛の妻がいてくれるということだ。いま手にしているものに僕たちはとても感謝している。子どもを含め、僕たちみんなが健康であることに感謝している。一緒の時間を大事にしながら、幸せをかみしめている。おそらく以前は、そのときがどんなに恵まれていたか、気づかなかったこともあっただろう。

幸せで健康な生活は、本当に幸運としか言いようがない。ただし、世の中には5年前にオードリーが深刻な病状だったときのような経験をしている人が多くいる。このような話を読んだり、聞いたりするのは自分自身で実態調査をしているようでもある。

■命をつないだ妻 それからの行動

オードリーが完全に回復した2016年、僕たちは「ビギン・アゲイン基金」を設立した。彼女は僕以上に人の手助けをすることにいつも熱心だったし、別次元だとすら思う。実は妻はもともとソーシャルワーカーになりたかった。それが僕に出会ってその夢をあきらめ、各地を転々とすることになった。人助けをすることは彼女の人生そのものだ。子どもができたら、母親というのがフルタイムの仕事になった。それでも、彼女の人生には欠けているものがあったんだと僕は思う。病気や敗血症が彼女を選んだのかはわからない。もちろん、二度とあんなひどい経験をしたいとは思わないけれど、あの経験から多くの良い結果も生まれた。

彼女の医療費で経済的に破綻しなくてすんだオードリーと僕は幸運だったと思う。しかし、破綻してしまう家族も多くいる。深刻な病気と闘いながら、住宅ローン、家賃や電気代の支払いを心配しなくてはいけない人たちもたくさんいる。僕らはそんな境遇にある人々が回復に専念できるように手助けすることを決心した。基金はだんだん大きくなり、より良いものになっている。これまでに3000人以上の人たちの支援をしてきたと思う。

基金をサポートする「レイシュマン・ラガー」を開発できたことも幸運だった。Bay Back Brewery社が何年か前に僕たちが手がける基金をサポートするためにビールを生産しないかとアプローチしてきた。醸造所は僕がどれだけビール好きか知らなかっただろうけど、味と見た目の虜になった。初めて自分のビールを味見するときは「最悪だったらどうしよう…」と緊張したよ。でも、一口飲んで味わいが最高だとわかった。当初1カ月の限定発売だった予定が結果的に6カ月になり、そして今ではこのレイシュマン・ラガーを販売して4年以上が経っている。このビールがビギン・アゲイン基金の支援金の原資にもなっているんだ。

基金を通して、人生の二面性を見てきた。回復した人もいれば、最愛の人を失った家族もいる。昨年、娘を亡くした母親がいた。彼女は敗血症の症状を知ることが大切だという話を共有するために僕たちの支援金集めのパーティに足を運んでくれた。人々がどんな経験をしてきたかを目の当たりにすると感情を激しく揺さぶられる。

人を手助けすることは自分のゴルフにも役立っていると思う。常に最高のゴルフをしたいのは当たり前だけど、残念ながらそうはいかない。でも、そんな風に物事がうまくいかないとき、大変な思いをしてきた人を思い起こすと、ゴルフでうまくいかないことなんか、大したことはないと感じられる。そういう視点を持つことで僕のゴルフは大いに救われてきたと思うんだ。子どもの頃、大きくなったら成功することや、いつか有名になって大金を稼ぎ、トロフィを手にすることを考えるだろう。でも僕とっては、誰かに影響を及ぼすことこそが、人生における最高の瞬間だ。

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情報提供:PGA TOUR

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