左手親指負傷のジェイソン・デイ 復帰への道のりを語る
トラックマンデバイスがゴルフを変える
タイガー・ウッズがスイングについて質問する場合、コーチのショーン・フォーリーは、スイングを撮影した動画を見なくても良いと言う。
「動画よりも数値を見れば良い。“これら”の数値を見る方が、より根拠のある意見を言えるからね」。
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“これら”が指すものは、グレーとオレンジのボックス型デバイス、トラックマンである。近年トラックマンはPGAツアーの練習場で姿を見かけるようになった。
フォーリーは、「タイガーも数値を見て、特定の部分に関して深い理解を得られている。今は2014年なのだから、当て推量を続ける必要はないじゃないか」と、トラックマンによる恩恵について話した。
確かに合理的な意見だ。改良されたトラックマンのレーダーテクノロジーを導入することで、当て推量によるアドバイスはなくなり、より精確なスイング、そしてボールの軌道を分析できるようになった。
およそ10年前にドクター・クラウス・エルドルップ・ヨルゲンセンと彼の弟モーテン、そしてフレドリック・タクセンが開発し、デンマークの技術会社が生産した3次元の計測機器は、あらゆるスポーツの世界で使用されるようになった。
デンマークのナショナルチームでプレーした経験を持つエルドルップ・ヨルゲンセンは、医療用デバイスの研究に携わった経歴があり、ゴルフの分析に強い関心を持っていた。タクセンは世界でも有数なレーダーのエンジニアとして知られ、大気圏外にあるミサイル3発を探知可能な、重さ2トンものドップラー・レーダーを開発した。
開発されたばかりのトラックマンは、大手製造業者に20万ドルで売られ、ボールの軌道の探知、そして大会でのティショットのデータを取り始めるため、2006年からPGAツアーでも導入されるようになった。
クラブとボールのスピード、スピン量、それに飛距離などを26のパラメーターで測定が可能なトラックマンの需要は、年々増加している。アメリカ国内でも350を超える施設で認可され、大学のプログラムでも使用されている。また、PGAツアーでは150人を超える選手が25,000ドルもするトラックマンを使用している。
ウッズは昨年のインタビューで、この機器に関し、こう語った。「実際に使用すれば、このデバイスの信憑性を実感すると思う。ゴルフでは、自分がやっていると感じることを実際に実行できていない場合が多い。もしスイングを改造すれば、僅かながら変化が生じる。それでインパクトの瞬間に何をしているか理解するようになるし、ボールへのパフォーマンスに還元できるようになる」。
「スイング改造は可能かって?仕組みさえ理解すれば可能だと思う」。
多くの選手にとってトラックマンは必要不可欠なツールになりつつある。
ルーク・ドナルドは、TPCソーグラスで開催された「ザ・プレーヤーズ選手権」の練習セッション中に、何本ものドライバーを試した。コーチのチャック・クックが、iPadに表示されたトラックマンの数値をドナルドに大きな声で伝える姿が印象的だった。
今年に入ってからトラックマンを購入したドナルドは、「最近のゴルフはテクノロジーに頼る傾向が強くなっている。その流れに乗らないとね。たとえば、もしあまりにも軌道の低いショットを打ったとしても、わざわざチャックを毎日呼ぶ必要はない。彼には数値と自分のスイングを見せれば、どこを改善すれば良いか理解できるから」と言う。
「ザ・プレーヤーズ選手権」での練習日、ドナルドは試していたドライバーでのショットがあまりにも右方向に飛んだ。トラックマンが算出した数値を見ると、肉眼では認識できないことまでも把握できたという。
「あるドライバーではスピードが2、3マイル遅かった。距離にすると5ヤードから6ヤード違うわけだからね。それは自分にとっては大きいんだ」。
だが、数値への傾倒は危険とも取れる。それ故、PGAツアープロの中には、トラックマンの使用を躊躇する選手も少なくない。
キーガン・ブラッドリーは、「スイングの軌道はチェックするけれど、数字にとらわれることはないね。数字ばかり見ていると脇道に逸れてしまう。数字を気にし過ぎてしまう場合もあるけれど、分けて考えないといけないから」と、持論を展開。
ジョーダン・スピースもコーチのキャメロン・マコーミックにデータを言ってもらうだけに留め、トラックマンはまだ購入していない。
感覚を大事にし、よりシンプルなものを信じるスピースは、「気にし始めると、あまりにもデータを信じ過ぎることがあるから、それは自分に合わないんだ。でも、中には自分のプレーの詳細を知る方が良い場合もあるみたいだね」と語った。
トラックマンの使用過多により、感覚重視から機械的なスイングに変わってしまうと懸念する意見もあるが、フォーリーの意見は正反対のようだ。
スイングで変更が可能なのは、セットアップとフィニッシュの2点だけで、ハイテクシステムを使うことで、よりシンプルに理解できるという。
「私は科学的根拠とハービー・ペニックの中間の立場」と話したフォーリーは、初めてトラックマンを手にした時、オレンジカウンティナショナルの練習場に持っていき、アマチュア選手のスイングを分析した。「自分がやろうとしていることが、より理解できるようになった。このデバイスは疑問を解決するのに役立つ」。
それでもトラックマンの効果に疑問を持つ意見も根強い。
メジャーリーグで活躍したヨギ・ベラは、野球について、「試合の90%はメンタル面に左右される」と説明したことがあった。ゴルフでは、勝つために必要な残りの要素10%がメンタル面と言う議論もある。それ故に、ジェイソン・デイや他のツアープロは、脳をトレーニングすることで自身のストレスレベルのコントロールを助長するデバイス、iFocusBandを使用している。
デイは、帽子内に3つのセンサーが仕込まれ、ワイヤレスで脳波を計測できるこのデバイスを以前から使用している。この機器により、メンタル面が「110%も向上した」と話すほどだ。
ここまで言うには裏付けもある。昨年の「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」で6位に入ると、「WGC アクセンチュアマッチプレー選手権」では3位入賞。iFocusBandを使い始めてから僅か1ヶ月後のことだった。その後も「マスターズ」で3位、「全米オープン」でも2位、そして「全米プロゴルフ選手権」では8位という好成績を収めた。
デイは効果について、「ゾーンに入る感覚がわかるようになる。ゾーン状態の感じが理解できるようになるし、それを実戦の場でも再現できるようになる」と力説。iFocusBandに出会う前までは、2人のスポーツ心理学者の指導を受けていたとか。
iFocusBandの仕組みはこうだ。センサーが仕込まれた帽子を被ると、集積されたデータをもとに、脳の状態が音声とビジュアルによるグラフィックで表示される。
デイは、iFocusBandについて、次の様に話す。「右脳を使っていると表示されれば、それだけ集中しているということ。メンタルコーチは、考える過程が重要とか、ポジティブに考えることが大事と言うけれど、それを信じられなかった。このデバイスを使えば、はっきりと測定できるからね」。