マイケル・トンプソン「僕はリッキーでもタイガーでもない」
2013年 ザ・ホンダクラシック
期間:02/28〜03/03 場所:PGAナショナルGC(フロリダ州)
ザ・ホンダクラシック 最終日レビュー
果敢な攻めで掴んだツアー初勝利
大きなリードを保ちながら、そして小さな重圧を抱えつつ、マイケル・トンプソンは最終ホールのフェアウェイを歩いていた。PGAの初優勝を飾ることを夢見て。
ホンダ・クラッシック最終日の出来事は、トンプソンに大きなインパクトをもたらした。
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27歳のトンプソンは、2位に1打差をつけて18番のフェアウェイにいた。彼のセカンドショットは池越えの240ヤード。難しいショットが残っていた。アラバマ大学ゴルフ部のモットー『最後まで、頑張る』の教え通り、彼はそれを実行してみせた。
彼はレイアップするのではなく、5番ウッドを選択し、果敢に攻めた。グリーン横のバンカーに入れはしたものの、そこからサンドショットで寄せ、優勝を決定づけるバーディでフィニッシュした。最終日をアンダーパーで回ったわずか5人のうちの一人となったトンプソンは、トータル1アンダーの「69」でホールアウトし、PGAツアー初優勝を達成した。
「あれ(最後まで攻めるやり方)が、僕流の締めくくり方なんだよ」とトンプソンは笑顔で答えた。トンプソンはこれでフェデックス・カップポイントに500ポイント加え、順位を11位まで引き上げた。そして「最終ホールのフェアウェイではギャラリーを見たりして楽しんだよ。だから最後まで全力で戦えたんだ」。
立ち上がから、トンプソンは果敢に攻めた。
彼は3番(パー5)で50フィートのイーグルパットを決めた。直後には、このコース最難関のショートホールでもバーディを決め、その時点で4打差のリードとした。結果的にはジェフ・オギルビー(オーストラリア)に2打差で、悲願のPGA初優勝を果たした。
彼は来週、トランプ・ドラールで開催されるWGCキャデラック・チャンピオンシップで、自身初のワールド・ゴルフ・チャンピオンシップ大会へ出場する。さらに2つのWGC大会(ブリヂストン・インビテーショナルとHSBCチャンピオンズ)への出場も決まった。今回の優勝で、彼は来年のハワイアン・オープン出場、そして向こう2年間のPGAツアーへの参戦が保証されたのだ。
わずか2週間前のリビエラでは「78」、「80」という散々な成績で予選落ちし、トンプソンは今後、予選を通過することができるのかという声すら聞こえて来た。
「今週はまるで、魔法にかかったようだったね」と、トンプソンは振り返った。「とても気持ち良くプレーできたよ」。
全米オープン覇者のオギルビーが世界ランク急浮上
今週は、オギルビーにとっても特別な週となった。
かつて「全米オープン」を覇したオギルビーは、あろうことか直近の全4試合で予選落ちしており、世界ランキングも79位まで下がっていた。彼は「アクセンチュア・マッチプレー選手権」に出場することすらできず、来週のトランプ・ドラールの出場もほぼ絶望視されていたが、彼は今大会でリズムを取り戻し、堅実なゴルフを見せた。
彼は16番でチップインバーディを奪い、18番(パー5)でも2パットでバーディを決め、「69」の単独2位で今大会を終えた。世界ランクをトップ50以内の47位まで上げたオギルビーは、来週のトランプ・ドラール出場を決めた。
「来週の予定は空っぽだったんだけど、(予定が入ることは)とてもナイスだね。これで僕も再びマスターズ出場をかけたラウンドに挑めるよ」と、オギルビーは語った。
オギルビーがマスターズに出場するには、3月末時点での世界ランキングで上位50位以内に入っていなければならない。そこにはちょっとした問題がある。彼は、今週分の着替えしか持ってきていなかったのだ。
「急いで洗濯をしなくちゃね。それからまだ、今晩のホテルさえ予約していないんだ。でもツアー選手の半分はこのエリアに住んでいるから、どこかで寝処は見つけられるだろうけどね」と、オギルビーは笑った。
一方、トンプソンと首位タイでスタートしたルーク・ガスリーは、2番のボギーが響いてスコアは「73」。単独3位で今大会を終えた。
タイガー・ウッズは今週、優勝争いに絡んでくることは一度もなかった。トップと8打差で最終日を迎えたタイガーは、逆転優勝を狙ったが、かすかな望みは6番でドライバーを大きく右に曲げ、ロストボールとした時点で途絶えた。
結局タイガーは6番をダブルボギーとした。18番(パー5)でイーグルを決め、ダメージを最少に抑えたものの、彼は昨年の「マスターズ」で一度もアンダーパーが取れなかった時以来の「74」というスコアで37位。苦しかった今週を終えた。
ウッズは昨年に続き、このPGAナショナルの最終ホールでイーグルを奪った。しかし去年と今年で大きく異なるのは、昨年のスコアは「62」で、順位も2位タイであったことだ。
「多分今日は、12番ホールあたりでもう『62』を越えていたと思うよ」と、ウッズは言った。
エリック・コンプトンは、最終ホールをボギーとしたものの「70」で4位タイとした。2度の心臓移植を経て復活したコンプトンは、今大会で初めてPGAツアーでトップ10フィニッシュを飾った。
子供の頃からここで優勝する夢を見てきた!
トンプソンはこのコースの難易度、そして今週吹き続いた強風という悪いコンディションの中、4日間トータルで「271」、9アンダーという素晴らしい成績を残して優勝した。彼はこのPGAナショナルで、オーバーパーを叩かなかった3人の選手のうちのひとりだ。
「彼はボギーを叩いてしまうようなミスをしないんだ。本当にすごいよね」。オギルビーはトンプソンについてコメントした。「本当に素晴らしいゴルフだったね。他の選手のスコアを見てもわかる通り、ここは本当に難しいコース。その難度は日に日に上がっていくんだ。色々なところに危険が待ち受けているコースだしね」と、つけ加えた。
「PGAツアーといっても中には簡単なコースはある。でもここは全くそうじゃないね」と、オギルビーは言った。
トンプソンは最終日の中盤に、ベストなゴルフを見せた。
彼は10番で、松の枝が絡む状況から難しいショットをピンそば3フィートにつけ、パーをセーブした。11番と14番ではスムーズなチップショットからパーをセーブし、2位に4打差をつけた。オギルビーの終盤の追い込みも届かず、トンプソンの勢いを止めることはできなかった。
「全てを出し尽くしたよ」と、トンプソンは語った。「子供のころからの夢が叶ったよ。僕は7歳の頃からここでプレーして優勝する日を夢見てきた。だから本当に信じられないよ。うまく言葉が見つからないね。今日一日、本当に良いプレーができたよ」。
不発のタイガー「典型的な悪い1日だった」
対照的に、ウッズには散々な大会となってしまった。
彼は3日目と最終日にまたがる8つのホールで、2度もロストボールをした。彼の記憶が正しければ、彼のゴルファー人生で初めての出来事だった。彼は11番池に入れダブルボギーをたたき、16番でもティショットを池に入れてしまった。
「今週はたくさんのペナルティを犯してしまったね」と、ウッズは振り返った。「今日は典型的な悪い日だった。僕はそんなに悪いゴルフをしたわけではなかったんだ。池に2度入れてしまったのと、1つのロストボールはあったけど、それを除けば、2つの短いバーディパットを決めていればスコアは一変していたはずだ。とにかくもう一度、しっかりと自分のゴルフを準備するよ」。
最終日のPGAナショナルは強風が吹き荒れ、とても難しいコンディションとなった。最終組がスタートする前、ホールアウトした選手の中でアンダーパーで回った選手はわずか2名だった。ルーカス・グローバーは最終日2オーバーだったが、それでも4位タイに食い込むなど、各選手のスコアは軒並み伸び悩んだ。
「普通のPGAツアーで、最終日をオーバーパーで回ってしまったら最終日に順位を上げることはできないよね。このコースがいかに難しいか分かるでしょ」と、グローバー。
ガスリーは2番をボギーとしてスコアを崩し始めたが、何とか食い下がろうと必死にもがいていた。しかし14番のティショットをOBとし、ダブルボギーを叩いたところで万事休す。彼の戦いは2位争いへと変わった。
その他の選手たちは、トップからかなり離されてしまっていた。