写真家・宮本卓が語るペブルビーチの18ホール
2019年 全米オープン
期間:06/13〜06/16 場所:ペブルビーチGL(カリフォルニア州)
美しきペブルビーチの魅力と「全米オープン」/ゴルフ写真家・宮本卓
2019/06/11 18:00
◇メジャー第3戦◇全米オープン 事前情報◇ペブルビーチGL(カリフォルニア州)◇7075yd(パー71)
風そよぐカリフォルニア州のモントレー半島。2019年の「全米オープン」の舞台、ペブルビーチGLはこの海岸線沿いにある。太平洋を望む美しき18ホールで長年、ライセンスフォトグラファーとして活躍してきたのが日本人ゴルフ写真家・宮本卓氏だ。
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宮本氏がペブルビーチGLと契約を交わしたのは2002年。きっかけは当時、9番ホールで撮影した一枚の写真だった。クラブハウスや宿泊ロッジからは遠く離れているパー4。左サイドのバンカー近くから海の向こう、カーメルの街に朝日が注いだシーンを切り取ったものが、コース関係者の胸を打った。
カーメル(・バイ・ザ・シー)はかつて俳優のクリント・イーストウッドが市長を務めたことでも知られている米国の小さな町で、ペブルビーチを訪れた際には足を伸ばすべき土地でもある。老舗レストランやプチホテルが連なる街並みを散策する時間は、きらびやかなひととき。ペブルビーチへの旅は、なにもゴルフコースをプレーすることだけが魅力ではない。
「ペブルビーチは特別な場所。英国人がセントアンドリュースを聖地と思うように、米国人にとってはここが聖地のひとつ。僕たち外国人が思う以上に、彼らには強い思い入れがある。ナショナルオープンを今年、開場100年のペブルビーチで開催するのも彼らにとっては強い意味が込められているからでしょう」
“名門”として知られるが、当地はプライベートクラブではなく、パブリックのリゾート施設。一年を通して世界のゴルファーが訪れ、毎年2月には米ツアー「AT&Tペブルビーチプロアマ」を開催する。「毎日お客さんをフルに入れ、ツアートーナメントもやって、365日コンディションを保つ。これは並大抵のことではない」。全米ゴルフ協会(USGA)は1960年代に、誰もがプレーできるパブリックコースを「全米オープン」の会場に選定することを模索した。そして72年、当地での初開催に至る。ジャック・ニクラスが優勝したことで、ペブルビーチはいっそう注目されることになった。
「ペブルビーチの特徴は各ホールのグリーンが小さいこと。そう錯覚もさせられて、ヒットするのがなかなか難しい」。岸壁沿いを歩く6番(パー5)以降のアウトコースの美しさはとくに有名だ。崖の向こうのグリーンを狙う8番の第2打は、ニクラスがかつて「人生最後のショットに選ぶべきもの」と評したことで知られている。生きるか、死ぬかのような“大勝負”。宮本氏はそんなところにもコースの魅力を見出す。
「普段の生活において、そうチャレンジできるものはなかなかない。仕事でもなんでも、齢を重ねると安定を求めるようになる。けれど、やっぱり人間には挑戦が必要。ここでは、そんな風に高揚して、何かにトライする興奮を味わわせてくれる。僕らはボールが海に消えても、命をとられるわけではないしね(笑)」
もちろん、日本からは約10時間のフライトを余儀なくされ、多くの人にとって気軽に足を運べる場所ではない。それでも、いやだからこそ、ここをいつか訪ねたい“夢の場所”と決めるのもいい。
「自分の中に“憧れ”を作ること、人生にご褒美を作ることが、やりがいにも、生きがいにもつながる。いつか誰かと行ってみたい、いつか挑戦してみたい、そういう思いを持つことが人生を豊かにもする。ペブルビーチはそういう気持ちにさせてくれるところ。コテージで薪をくべて、暖炉にあたってワインを飲む…そんな瞬間は何物にも代えがたい。ゴルフにおける最高の贅沢じゃないかな。どんなゴルファーにとっても、最高の記憶になるはずです」