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松山英樹2017年末インタビュー
なぜ「全米プロ」で泣いたのか 松山英樹2017年末インタビュー(2)

松山英樹は今年6月、世界ランキング2位に浮上した。自己最高位の更新は、そのまま歴代日本人選手、アジア出身選手の最高記録樹立と同義である。その快挙につながったのが、直前の「全米オープン」。ウィスコンシン州エリンヒルズでの戦いだった。

首位に6打差の14位から出た最終日に「66」をマークし、クラブハウスリーダー(ホールアウトした中でトップの選手)になった。最終的には後続の組でプレーしていたブルックス・ケプカに敗れた。メジャーで自己最高位の2位という成績には手応えと、悔しさの両方が残る。

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「この週は特にアプローチが良かった。それが良いところで出たと思います。もうちょっとかなと思ったけれど、良いものは出せた。ただ、気持ちの違いはまったくなかったです。トップとは差があったので。やっぱり3日目までに差を縮めておかないといけなかった。(1980年「全米オープン」の青木功に並ぶメジャー日本人最高位)うれしいのはうれしいですよ。そりゃ。でもうーん…うれしいけど、やっぱりそこを目指しているわけじゃないので。もっと上を目指しているので。それこそ、もっと競った2位だったら…」

競り合いという意味では、最終日を迎えた時点でよりチャンスがあったのは直後の「全英オープン」だったかもしれない。3日目を終えてトップとは7打差があったが、「風が吹くのも、天気が悪くなるのも分かっていた。そこでどれくらい我慢しながら伸ばせるかだった」と回想する。

しかし、わずかな期待は一瞬でかき消された。1番ホール、3Wでのティショットが右のOBゾーンへと消え、トリプルボギー。

「調子は本当に良くなかった。ショットにも、パットにも不安があったし、スタートホールは本当に痛かった。でも『なぜ3Wを持ったんだ』という声もありましたけれど、そこに後悔はない。OBは結果論。(第1打を3Wより短いクラブにして)セカンドで長い番手を持ってボギーを打つよりはいい。一発でフェアウェイに打つ力がなかったというだけ。気持ちの切り替え?すぐにはできなかったですよ。3番で3.5mのパーパットを入れてからですね。全英はやっぱり…去年も今年も、回ったのがしんどい(悪天候の)時間帯ではあった。そういう時に踏ん張れる力、アンダーパーで回れる力をつけなきゃいけないなと思います」

悔しい敗戦を経て、調子は下降線をたどった。潮目が変わったのは、夏場だった。劇的に。それも、たった一打で状況が大きく変わるから、ゴルフは分からない。

8月の「WGCブリヂストン招待」で、松山は完勝した。最終日にマークした「61」は2013年大会でタイガー・ウッズが松山の目の前で記録したコースレコードに並ぶものだ。

「全英で良くなくて、1週間はゆっくりして何も練習もしなかった。ファイヤーストーンCCで『練習しながら状態を上げて、翌週の全米プロに行けたらいいな…』というくらいにしか思っていなかったんですけどね。パターを替えて初日から良いパットが入って、ショットもそれなりに打てはじめていた。でも最終日の朝は練習場でメチャクチャで。『80を打たなければいいな…』という感じだった。だからスタートホールで『もう、やるしかない!割り切って、3日目までやってきたことをやるしかない!』と思って。1番でティショットを左に引っかけてミスをしたんですけど、それで悪い原因が分かった気がした。2番のティショット、セカンドと良いショットが打てて、『これで大丈夫だな』って思えました。具体的なポイント?忘れました(笑)」

期待がさらに膨らむ中で臨んだ翌週のメジャー最終戦「全米プロゴルフ選手権」。結果は5位タイの惜敗だった。最終組のひとつ前でプレーし、首位で迎えたサンデーバックナインで逆転された。同じ組でプレーしたジャスティン・トーマスに―――。

「(当時の映像は)見たりはしますよ…。パットも結構外しましたし、ショットも曲がっていた。不安はありました。でも、前の週に勝ったという自信もあって、流れでプレーができた感じですね」

今思い返しても、最もメジャータイトルに近づいた瞬間だったと実感できる。ホールアウト後、松山は人目をはばからず泣いた。インタビューエリアでタオルに顔をうずめ、嗚咽をもらした。

「杉さん(杉澤伸章さん=専門テレビ局のインタビュアー)に優しい言葉をかけられて…。こっちは一生懸命こらえてたのに(笑)。『なんでこんなプレーしかできなかったのか』と自分のふがいなさに腹が立っていたところに、優しい言葉をもらって、うまく処理できなかったんでしょうね」

「『よく頑張った』と言われるのは、キツイ思いもあります。頑張ってるけど、僕はそこ(惜敗)を目指してない。もっと上を目指している。そこのレベルまでしか行けないと思われているのかなと思ってしまう。もちろん逆に『ダメだな』と言われるのもね、『おれはこんなに頑張っているのに』と思うけれど(笑)。でもやっぱり…『何やってんだ』って言われる方が、モチベーションにはなりますよね。自分では目指すところが高いとは思わない。納得いくショットが打てて、パットが打てれば僕は勝てると思っている。ミスを許していたら、自分が自分じゃなくなる。結果で“OK”にしちゃいけない。結果が一番の世界ですけど、結果を求めながらそこを目指す。それで『意識が高い』と周りに言われても…僕は『それってみんなやっていることじゃないの?』って思う」

ゴルフは他の多くのスポーツと違い、自分のスコアは相手のスコアに影響を及ぼさない。それゆえ、優勝したトーマスをただ賞賛することで、自分を納得させることもできる。松山の場合はどうか。

「ジャスティンは良いプレーを、流れを呼び込むプレーをしていました。強かった。強いですよ。年間5勝(2016-17年シーズン)した選手ですから。でも(相手が)強いから、負けて良いわけじゃない。プロ野球だってそうでしょう。ソフトバンクが強いから、(対戦相手が)負けていいと思うわけがない。だから、悔しい。緊張感の中で何をしたらいいのかという点で、ベストは尽くしたつもりです。でも、結果は優勝につながらなかった。だから次に何をすべきかを考えることが大事なんです」

勝負は時の運ともいう。だがそのフレーズで済ますことは、松山の哲学とは違う。(編集部/桂川洋一)

■ 本日のもう一問

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