2016年 マスターズ
期間:04/07〜04/10 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
長男誕生が呼び込んだマスターズ優勝? ダニー・ウィレットはこんな人
80回目の「マスターズ」を制したのは、イングランドの伏兵ダニー・ウィレットだった。英国シェフィールドで生まれた28歳で、2008年にプロ転向した。今回が、初のメジャー制覇。欧州ツアーを主戦場としており、12年の「BMWインターナショナルオープン」で初優勝を飾った。15年には2勝を挙げ、今年も2月の「オメガドバイデザートクラシック」で勝利している。
マスターズは、38位で終えた昨年に続く2度目の出場となった。出場2回目で優勝するのは昨年のジョーダン・スピースに次ぎ5人目。(初出場初優勝は過去3人いる)
<< 下に続く >>
そんなウィレットだが、マスターズに出場するかどうか前週まで決めていなかった。
今大会の1カ月前、「WGCキャデラック選手権」に出場したウィレットは「もしオーガスタでプレーできれば嬉しいけど、状況次第」と考えていた。2013年に結婚した妻のニコルさんが2人の第一子となる男の子を身ごもっており、出産予定が「マスターズ」最終日の4月10日だったからだ。「早く生まれてくれば良いけれど、そうじゃなければ(オーガスタでは)プレーしない」とい決めていた。
「(産気づいて)急に戻るには遠すぎるし、マスターズはまだ何回でもあるからね」
だが、大会前週の3月30日、長男ザカリアくんは予定日より早くこの世に生を受け、ウィレットはオーガスタへとやってきた。彼の隣に立つキャディの胸につけられていたゼッケン番号は「89」。出場89選手中、最後に出場登録をしたのが、ウィレットだったからだ。
「幸運にも、僕の願いを聞き入れてくれたみたいで、彼は早く生まれてきた。素晴らしく奇妙な12日間だったよ。今の気分を言葉で表現することはできないけど、先週、自分と妻が作りあげたものを抱きかかえたときの気分もまた、言葉では言い表せないよ」
最終日は妻の誕生日でもあった。ホールアウトしたウィレットが、クラブハウスでジョーダン・スピースのプレーを待つ間、スマートフォンで妻と会話をしている姿が映し出された。英国は深夜12時を回る少し前だったという。なんとロマンチックな「マスターズ」だったことか。(ジョージア州オーガスタ/今岡涼太)