親友とは呼べないジェイソン・ダフナーと彼のパターの関係
監獄島から見事脱出!ダフナーが圧巻のプレーで3年ぶりV
脱出不可能とされた監獄島“アルカトラズ”の名が冠されたPGAウェスト・スタジアムコースにある17番(165yd、パー3)。ぐるりと池に囲まれたグリーン周りには、荒々しい岩石がゴロゴロと転がり、その名に相応しい威容でたたずむ名物ホールだ。
米国男子ツアー「キャリアビルダーチャレンジ クリントンファウンデーション」の最終日、ジェイソン・ダフナーとデビッド・リングマース(スウェーデン)の2人に絞られた優勝争いは、終盤このホールが鍵となった。
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最終組で回るダフナーの1組前で猛チャージを見せたのはリングマースだ。スタート時点の5打ビハインドは、この日7つめのバーディを奪った16番でついになくなり、2人は通算25アンダーで並んで残り2ホールへ突入した。
リングマースがパーで通り抜けたこの17番で、ダフナーは8Iを左へと引っ掛けてしまう。一度グリーン面には落ちたものの、ボールは球はそのまま転がって岩場の中へと消えていった。「池に入ったと思ったから、精神的には次のドロップ後のウェッジショットの準備をした。なんとかボギーで切り抜けて、最終18番でバーディを獲ってプレーオフへと考えたんだ」とダフナーは振り返る。
「でも、競技委員が『球がある』っていうんだ。『確認してみるか?プレー出来るかもしれないぞ』って。だから、そこに行って確認してみたら、すごくライが良かったんだ」。
球はウォーターハザードを示す黄色い線の内側に止まっていたが、スイングを邪魔する岩もなく、砂地の上にちょこんと止まっていた。「こういうライは全英オープンで何度も経験している」というダフナーは、20ydのチップショットをピンに当ててパーセーブ。「入ったと思った」という見事なリカバリーショットで窮地を脱した。
淡々とプレーを続けるダフナーは、18番(435yd、パー4)を使ったプレーオフでもピンチに見舞われた。1ホール目のティショットを右のクロスバンカーに入れ、グリーンまでは180ydと距離を残した。一度は6Iを手にしたが、「10回打って2~3回成功するくらいの確率。あとの7~8回は、アゴに当たって池に入る」という状況。一方のリングマースはティショットをフェアウェイに置いていた。
「今日はウェッジショットの調子が良かったし、確率を選んだ。リングマースがバーディならば仕方ない」と、確実なショートアイアンに持ち替えてレイアップを選択し、3打目をピン上3mへ。リングマースがバーディパットを決めきれなかったことでパーパットが回ってきたが、このパットを外せばすべてが終わる。
だが、ダフナーは冷静だった。「こういう状況はプレジデンツカップのマッチプレーでもあった。外せば終わり。次のパットは関係ない。こういうパットは好きなんだ」。強気の読み、強気のストロークで自信を持って打ったパットは、真ん中からカップへ沈んだ。プレーオフ2ホール目に池へと打ち込んだリングマースが自滅して、ダフナーに勝利の女神が微笑んだ。
2015年4月に約3年連れ添ったアマンダ夫人と離婚。この2シーズンは優勝に見放されていたが、精神的なタフさを取り戻してきた。そして、この日の思慮深いプレーには、メジャーチャンピオンらしいゴルフの知恵にも満ちていた。(カリフォルニア州ラキンタ/今岡涼太)