松山英樹が19年初戦へ アマチュア・金谷拓実は米ツアーデビュー
松山英樹 怒りと悔しさの惜敗「一発も良いスイングができなかった」
「入れろ、松山!」心の叫びのような小さな声が、18番グリーンを取り囲むカメラマンの放列の中から聞こえてきた。「ヒュンダイトーナメントofチャンピオンズ」最終日、入れればプレーオフ進出となる2mのバーディパット。ファインダー越しの松山英樹は、静寂の中でパットを放ち、一瞬の間を置いて、天を仰ぎ、左手で顔を覆った。
自身2度目の最終日最終組。だが、朝の練習場から松山の球は散っていた。アイアンはつかまり気味に左へ飛び、その一方で1W、3Wは右へと抜ける。通算17アンダーで首位に並んでスタートしたジミー・ウォーカーが3番、4番と連続バーディを奪ってすぐに2打のビハインド。5番(パー5)、7番でバーディを取り返して追いついたのもつかの間、ウォーカーが8番(パー3)からの3連続バーディで、再び松山を突き放した。
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松山が動いたのは305ydの14番(パー4)。ウォーカーが刻みにいったアイアンでのティショットを右サイドのクロスバンカーに入れると、3日間アイアンで刻み続けた戦略を捨て、1Wを振り抜いてグリーン左手前のラフまで運んだ。ウォーカーは続く2打目を、バンカーからグリーン奥へと外し、ボギーのピンチ。
松山の2打目の位置からは、バンカーを越え、グリーンエッジから4ydのところに切られたピンに向かって下り傾斜となっている。ロブショットを選択した松山の球は、青空高く舞い上がったが、数ヤード短くバンカーへと転がり落ちた。
そこからパーセーブした松山に対し、ウォーカーはアプローチを1mに寄せるもカップ右上からの微妙なパットを外してボギーとし、その差は2打に縮まった。だが、「バンカーに入れているようじゃ話にならない」と松山。続く15番(パー5)でバーディを奪い、1打差に詰め寄ったが、“あと1打”が届きそうで届かない。
16番2.5m、17番6m、そして最終18番は2m。上がり3ホール連続でチャンスにつけるも、バーディパットはカップの底を叩かない。「一発も良いスイングができなかった」という苦しい状況の中で、なんとかチャンスを作り続けたが、2日目、3日目と面白いように決まったパッティングが、この日は松山を裏切り続けた。
ホールアウト直後、テレビインタビューに「勝てなかったので悔しい」とコメントを残したが、その後は記者たちを振り切って無言でロッカーへと引き上げた。怒りと悔しさを体中から発散しながら――。
少しして、落ち着きを取り戻した松山が、記者たちの前に姿を見せた。「(勝てなかったことには)いろんな原因があると思うけど、それをまた優勝争いをしたときに詰めていけるように頑張りたい。(こういう経験は)何回も何回もしていくうちに慣れてくるし、そういうのは大事かなと思う」。
優勝には届かなかったが、首位と1打差の3位タイ。獲得したフェデックスカップポイントは145点でランキングは6ランクアップして10位に浮上した。世界ランキングは、1つ上がって15位へ。そして「マスターズ」まではあと3カ月だ。(ハワイ州カパルア/今岡涼太)