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タイガー・ウッズ・インビテーショナル開催!?

タイガー・ウッズがその存在を大きなものとするにつれ、ゴルフ界のほかの事象がすべて小さくなっていく。そしてそれが問題をはらむようになる。多少の痛みを伴うという程度ではとどまらなくなっているのだ。

1995年にディズニーがABCを買い取ったことを、金融専門家のウォーレン・バフェットは「No.1コンテンツ・カンパニーによるNo.1配信会社の吸収合併」と呼んだ。そして次はタイガー・ウッズだろうと、その後のビジネス界では言われてきた。その意味するところは、No.1コンテンツ・カンパニーとNo.1配信会社がそのまま苦労知らずの会社になるだろうということ。最も手間のかからないグループ、ゴルフ界で望まれている以上の安心なグループだ。エージェントのロッキー・ハンブリックは言う。

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「どこであってもタイガーのいる場所が、その週のツアーの舞台だ」
いわば、ウッズがプロゴルフそのものということか。ハル・サットンではない。いまやゴルフというゲーム以上の存在だとは言わないが、ウッズはゴルフ界の誰よりも、何よりも大きな存在になっているのである。 事態は想像をはるかに超えるものだ。アメリカのプロゴルフにおける勢力の構図を書き換えてしまうような重大な問題なのである。それはPGAツアーの象使いたちにとって大問題だ。彼らは噂ではネットワークテレビとの契約を現在の4年間で6億ドルから10億ドルに増額しようと狙っており、5月末にもニューヨークで話し合うことになっているという。ツアー側の切り札はコミッショナーのティム・フィンチャム。フィンチャム自身も矢面に立ち、自分の代表しているプレイヤーたちからでさえ批判されているのだが、政治力で取引を仕切っているのはフィンチャムだ。頭も切れ、機を見るに敏、交渉相手がいつまでも同じであるとは思っていない。

ウッズの膨張する影響力はネットワークにとって難問で、誰もが血に染まる海の中でウッズの肉にありつこうとしている鮫のように闘っている。何しろ、ウッズが出ているかいないかによって、週末のゴルフ中継の視聴率は劇的に違うのである。CBSでの今年のビュイック・インビテーショナルの平均視聴率は5.7%。ウッズが4位だった試合だが、ABCが中継した一週間後のボブ・ホープ・クライスラー・クラシックでは2.7%。ウッズ抜きの試合だ。

そしてついに、ウッズを世界中が求め始め、アメリカのスポンサーを悩ませている。半分以上が、主催ツアーにタイガーが出場してくれる保障どころか、ウッズの関係者を電話口にひっぱり出す事すら実現できていない。もちろんそれはウッズの責任ではない。4大メジャーを連続して勝つというやり方で、彼はまさにゴルフにおける卓越性を再定義しているのである。

しかし、ウッズがそのことだけしか考えていないわけではない。彼はグリーンを読むのと同じくらい、契約書の詳細を読むことができるのだ。そして、彼が頂点に立つスポーツに彼自身がもたらす影響力を、完全に把握しているのだ。
「僕は全体像を理解している」
去年の秋、ウッズはまるで予測するかのように語っていた。そしていま、あるシナリオが見えかくれしている。それは、ウッズが2002年にPGAツアーカードを放棄 するというものだ。これは、その他様々な要素の中でも、ウッズが自分のメディア権を放棄しなくてすむ、ということを意味する。たとえばウッズの名を冠したウィリアムズ・ワールド・チャレンジなどの開催のためにPGAツアーに対して支払われていた権利料が不要となるわけだ。

ゴルフウィークが入手した情報によると、2001年にウッズのメディア権、つまりウッズのおかげでツアーに入る金額は合計数千万ドルにものぼる。また、今年の公表されているスケジュールとは別に、欧州ツアーでもう1試合に出場すれば、ウッズ は2002年の欧州ツアー出場権を獲得する、との指摘もある。ウッズ自身、ヨーロッパのツアーカードを確保する可能性を排除していないのだ。このシナリオで行くと必然的に次のステップは、欧州ツアーでの、タイガー・ウッズ基金へのスポンサーシップ獲得だろうが、PGAツアーはタイガー・ウッズ基金へのスポンサーシップを解除する事によって、欧州ツアーに打撃を与える事が出来る。

ある情報筋によると、このまま何も変わらなければ、ラカンテラで行われているテキサス・オープンが今シーズンを最後に"消えてしまう"かもしれない。そして"タイガー・ウッズ・インビテーショナル"もありうるかもしれない。資金はどこから来るのか、開催場所がアメリカなのかどうかはわからないが。

とにもかくにも、タイガー・ウッズにどの商標が付くのかは、今後18ヶ月の間に、非常に興味深い展開を見せてくれるはずだ。ウッズは、決して自分のツアーに背を向ける事はないだろう。しかしアメリカのゴルフ界を牛耳ってきた勢力がどう立ち回るのかは見物だ。ばく進するウッズが巻き起こしている大きな渦に呑まれて沈んでしまわないよう、船長たちは競い合うに違いない。

ツアーの抱えるジレンマの原因は、ウッズのスケジュールをコントロールしていない、コントロールできない、という事実に尽きる。つまり、スポンサーやネットワークに、ウッズ出場を確約できないということだ。ネットワークの抱える問題は、ウッズが出場しないかもしれないツアーに大金をはたいてしまう危険性。ウッズはメジャー・チャンピオンシップに備えるために、出場するトーナメントを絞ることをほのめかしているので、なおさらだ。
対抗措置もすでに用意されている。PGAツアーの運営委員会では「ツアーカードを獲得していないプレイヤーは最大で13試合しか出場できない」というルールを検討している。ウッズに試合数を大幅に減らすことをさせず、しかも、ツアーカード放棄することを諦めさせるための作戦だ。

スポンサーの抱える問題も似たようなものだが、ネットワークよりもさらに深刻だ。2003年シーズンから新たな放映権契約が交わされた後の一試合のタイトル・スポンサー料は、楽観的に見積もっても平均で400万ドルから600万ドルに跳ね上がる。もちろん、ウッズが出場する保証なしの金額だ。

一方で、ウッズは大西洋の向こうのスポンサーたちに誘い出される事だろう。彼らが提示する莫大な出場料は、2002年には一試合300万ドルに跳ね上がると予測されている。PGAツアーは、出場料を出すことは禁じており、その方針を変える予定もない。出場料をめぐってすさまじい競争が展開され、カオスに陥ることは間違いないからだ。しかし、その方針では出場選手の顔ぶれに偏りが生ずることも避けられないわけだ。

最近の例ではドイチェバンク-SAPオープンがある。ドイチェバンクは220万ドルの出場料を支払ってウッズに出場させ、ウッズは優勝した。それだけの大金を投じたドイチェバンクは、果たして見返りのドイツマルクを手にしたのか。
「我々は全て計算済みだ」 ドイチェバンクのハンス・マイケル・ホルツはザ・アイリッシュ・タイムズ紙にそう語っている。 「そのとおり、タイガーはそれだけの価値がある」

タイガー獲得合戦に関してはきわめて自由な欧州ツアーのことを考えれば、先頃、ゼロックス社がフェニックス・オープンの冠スポンサーを降りたと発表されたとき、アメリカでは驚く人があまりいなかったのもうなずけよう。フェニックス・オープンといえば過去3年に2回、ウッズが出場しているトーナメントである。ツアーには歴史あるレギュラー・イベントでも、ウッズがプロとして一度も出場した事のない試合が12もある。

テレビ交渉に話を戻すと、ルパート・マードック傘下のフォックスが、ウッズがこれまで出場して来ている試合をセレクトした"タイガー・パッケージ"なるものを作り、ツアーに対して"ばかげた金額"(超大金)を支払おうと企んでいる、という情報もある。
その情報筋によれば、まさに同じ理由でディズニーがウッズ効果を手に入れる道筋をつけようとしているのだ。ウッズとディズニーが契約すれば、ウッズはABCが放送権をもつトーナメントへの出場を検討せざるを得なくなる。契約のおいしい部分はそこにある。ツアー、ネットワーク、そしてスポンサーに通じているある人物は「フォックスへの先制攻撃となりうる」と語る。

もちろん、ウッズはアメリカン・エクスプレス、ビュイック、ローレックス等、すでにいくつかの契約を結んでいる。ビュイックは、4つのオフィシャル・ツアー・イベントのタイトル・スポンサーシップを持っているがビュイックのスポークスマンによれば、ウッズがそれらの試合に出場するという事は契約に含まれていないそうだ。しかし、ビュイック・インビテーショナルのトーナメント・ディレクター、トム・ウィルソンは最近、次のように語った。

「道徳的に考えて、2試合くらいは出る義務があると言えるだろう」 こんなジョークも聞かれている。 質問:ゴルフコースに、タイガーを絶対に寄せつけない唯一の方法は? 答え:ゴルフコースのトーナメント名に、'マスターカード'という文字を加えること。
しかし、マスターカード・コロニアルの運営にかかわっている人たちにとっては笑えない。ウッズがアメリカン・エクスプレスとの関係を続ける限り、テキサス州のフォートワースに姿を見せてもらえないからだ。

大金がかかったこの大問題はどんなふうに解決されるのだろうか。当面の焦点はネットワークの交渉の結果だ。フィンチャムを扉の向こうに閉め出しておいてウッズの値段をつり上げているのはIMGだが、どの程度の影響力になっているのだろうか。ネットワークの戦略はいかに。経済の先行きが不透明な中、ツアーのスポンサーを降りる企業はどのくらい出てくるのか。

ディズニーのような巨大企業がゴルフ界最強の人物にダイレクトにかかわり始めた。これは、力関係のバランスがはっきりとシフトしたことのシグナルだ。間違えないで欲しい。ウッズは汽車を走らせるエンジンではあるが、機関士はあくまでもフィンチャムなのだ。そして、ウッズという大きな存在がツアーとプロゴルフ界の構造に決定的なダメージを与えてしまうような問題にならないようにしておく責任は、フィンチャムの双肩にかかっているのである。ここで言いたいのは、フィンチャムが勝負に出ようとしているということだ。これまでにどれだけのテレビ交渉を彼がまとめあげてきたかをみんな都合よく忘れてしまっているようだが、やり方を知っているのは彼なのである。
BY BRIAN HEWITT(GW)

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