プロゴルフ界きってのナイスガイ アーロン・ライがイングランド勢で107年ぶり大会制覇
◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 最終日(17日)◇アロニミンクGC(ペンシルベニア州)◇7394yd(パー70)
トップと2打差で最終ラウンドを迎えることは知っていても、各選手の順位やスコアは視界になかった。「正直言って、リーダーボードはあまり見ていなかった」。ライバルたちがどれほどいようが、コースとの闘いであることには変わらない。アーロン・ライ(イングランド)は自分のあるべき姿を幼い頃から探求し続けてきた。
小学校に入る前にクラブを握ったときから、ゴルフを教えてくれたのはインド生まれの父だった。トップアマではなく、独学で得た知識をもとに指導。パワーのないジュニア時代はパーやバーディを取れるように、各ホールを当時の飛距離に合った長さに調整してプレーした。「(ティイングエリアではなく)フェアウェイの真ん中から打ったりしたんだ」。初めて女性用のティから回ったのは12歳、一般男性用の距離で回ったのは13、14歳頃だったという。
そのため、ライは現在のジュニアゴルファーのように学生時代にトップアマチュアの試合に出たことがなかった。「ほぼ毎日、父と二人で練習していた」と、周囲からの同調圧力を受けることなく育った。8歳の時に初めて両手に装着したグローブや、道具を大切に扱うためのアイアンカバーの使用を徹底。親子のスタンダードを突き詰めた。
ケニアにルーツを持つ母、そして兄弟たちからは人間性を育てられた。「ゴルフは若い頃から僕の人生の大部分を占めてきたことは間違いない。でも家族からはゴルフとは別の『よき人であること、正しい行いをすること』の大切さを説かれてきた」。キャリアを重ねるにつれて知ったのは「ゴルフは謙虚さを求められる」こと。「上手くなるためには限りない努力と、自らを律する力が備わっている必要がある」と自己と向き合ってきた。
大混戦の日曜日、ライは集中力を研ぎ澄ませ前半7番から7ホール続けて1パットで耐え、スコアを伸ばした。9番(パー5)で12mのイーグルパットを沈めても淡々。単独首位に立って迎えた後半13番、40yd近いバンカーショットをピンそば1.5mにつけるバーディでリードを広げると、17番では20mのパットを鮮やかに沈めた。初日の「70」から「69」「67」「65」をマークして通算9アンダー。4日間続けて前日より良いスコアで回った大会初の選手となり、2位に3打差をつけてメジャー初優勝を遂げた。
イングランド出身の選手が本大会を制したのは、ジム・バーンズが優勝した1916年の第1回大会、1919年の第2回大会以来、実に107年ぶり。「この100年あまりで素晴らしいキャリアを築いたイングランド人選手がたくさんいる中で、久々に優勝できたことを誇りに思う」。プロゴルフ界きってのナイスガイが少しだけ、胸を張った。(ペンシルベニア州ニュータウンスクエア/桂川洋一)