池ポチャ2発から250ydをカップイン 「ツアー史に残るパーセーブ」
2020年 3Mオープン
期間:07/23〜07/26 場所:TPCツインシティーズ(ミネソタ州)
3度の手術で長期離脱 ツアー1勝の45歳が久々の上位争いへ
◇米国男子◇3Mオープン 2日目(24日)◇TPCツインシティーズ(ミネソタ州)◇7431yd(パー71)
長い苦しみの始まりは、コースを離れた日常の何気ない一幕だった。2015年の冬、ボー・バン・ペルトは車の運転席から後部座席にある子どもの荷物に手を伸ばした。予想以上に重いリュックを持ち上げたとき、右肩に痛みが走った。
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年が明け、2月の試合に出る頃には腕を背中側へ回せなくなるほど状態が悪化していた。耐えきれずに検査を受けると、「右肩の関節唇(かんせつしん)の約85%が断裂。手術しかなかった」。完治まで1年はかかると言われた。長期のリハビリを覚悟していたが、術後数カ月で今度は肩の関節に9本の骨棘(こつきょく)が見つかり、クリーニング手術を受けた。
復帰を目指して練習していた2018年の夏、さらなる絶望に襲われる。右手がしびれ、思うように動かせなくなった。「正直に言えば、もう終わりだと思った」。整形外科医から紹介されて向かった血管外科で告げられたのは「胸郭(きょうかく)出口症候群」。19年1月、血管を圧迫していた第一肋骨を切除する手術に踏み切った。
ようやく痛みが和らいだ後は、プロゴルファーとして不可欠となる繊細なフィーリングをよみがえらせる作業。「基本的には失うだけ。同じ感覚に戻ることはできない」。2009年の米ツアー「USバンク選手権」だけでなく、アジアや欧州でも勝利を飾ったが、すでに40歳を超えたペルトにとって、4年近いブランクはあまりにも重い。
それでも意を決し、一度しか使えない生涯獲得賞金50位以内の資格で今季から復帰した。中断期間を挟んで15試合に出場するも、予選通過はわずか3試合。その3試合も62位、60位、68位と低迷した。
苦しみ続けた男に千載一遇のチャンスが訪れた。初日8番(パー3)でエースを達成し、この日も5バーディ、2ボギーの「68」でまとめ、首位と4打差の通算8アンダー8位タイにつけた。「5月には45歳になった。4年近く休んだ45歳が、このPGAツアーで戦うなんて、誰も成し遂げたことはないかもしれない。これまでで最も困難なトライになるね」。高くそびえる壁を前にして、ベテランの気力がみなぎっている。