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タイに帰れず3カ月 ジャズが見つけた待避場所
昨季、アジアンツアーで4勝を挙げて賞金王に輝いたジャズ・ジェーンワタナノンド(タイ、以下ジャズ)にとって、2020年は夢の米ツアー挑戦に足を踏み出す年のはずだった。世界ランキング39位で、4大メジャーや世界ゴルフ選手権(WGC)以外に推薦出場も駆使しながら、ノンメンバーとして米ツアーのシード確保を目指す計画を立てていた。
年明けは香港、シンガポールで2戦連続トップ5。その後、中東で2試合をこなしてタイに帰国し、再びメキシコで一戦交えてアメリカ入り。だが、「ザ・プレーヤーズ選手権」初日が終わった3月12日、新型コロナウイルス感染拡大のためにツアー中断が決定した。
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「どれくらいこの状況が続くか分からなかったから、タイには戻りたくなかった。そのうちに、タイがシャットダウンをして戻るに戻れなくなった」。そんなジャズに救いの手を差し伸べたのは、米ツアー2勝でアジアンツアーでの優勝経験もあるダニエル・チョプラ(スウェーデン)だった。
米ツアーやアジアンツアーによると、プレーヤーズ前週の「アーノルド・パーマー招待byマスターカード」でばったり出会った2人だが、開催コース(フロリダ州・ベイヒルクラブ&ロッジ)に自宅を持つチョプラは、一緒に滞在しようとジャズを自宅に招待。その後、米国内のシャットダウンが決まると、再びジャズとそのキャディを自宅に受け入れた。
「ダニエルのことは知っていたけど、彼がベイヒルに住んでいることは知らなかった。まるで家族と一緒にいるようだったよ」とツアーに語ったジャズ。「病院や食料品店以外は、すべての店が閉まっていた。毎日のルーティンは、朝起きて、次は何を食べようか考えて、窓の外を眺めること。その繰り返し(笑)」。ゴルフ場が再開するまでは、チョプラの妻や2人の子どもと野球やテニス、ウェイクボードやウェイクサーフィンをして過ごしたという。
数週間前、タイでジャズの祖父が亡くなった。もちろん、飛んで帰ることはできなかった。「まるでトンネルの中にいるようで、必死に出口を探したよ。家から離れていると辛い。でも、母や家族とは定期的に(ビデオ通話アプリの)Facetimeで話をしている。僕がやりたいことをやらせてくれ、安全で健康でいるようにと言ってくれる」
近隣のゴルフ場が営業を再開すると、2人でミニツアーにも出場した。ジャズは米ツアーが再開する6月11日開幕の「チャールズ・シュワブチャレンジ」に続き、「RBCヘリテージ」、「ザ・メモリアルトーナメント」、「WGCフェデックス セントジュード招待」参戦を予定している。
「これからの数試合はすばらしい経験になると思う。正直スコアはあまり気にしていなくて、ただ再びトーナメントでプレーをしたいんだ」とその瞬間を待っている。
「誰も人生でこんなことが起きるなんて想像していなかった。でも、多くの人が結束してお互いを支え合っている。ダニエルと(妻の)サマンサには本当に助けられた。今回のことで良かったのは、そんな人々の良い面に触れられたことだと思うよ」