課せられた使命 M.ワンLPGAコミッショナー インタビュー
2015年 TOTOジャパンクラシック
期間:11/06〜11/08 場所:近鉄賢島CC(三重)
“第5のメジャー”で聞いた米国女子ツアーの成長戦略
韓国勢の台頭とグローバル化
◆「ザ・エビアン選手権」のスポンサーでもあり、ツアーパートナーでもあるロレックス社は、LPGAだけでなく、PGAツアーのスポンサードもしています。米国では男子に比べ女子の注目度が劣りますが、その点を踏まえてLPGAはロレックス社にどんな価値を提供できていると考えていますか?
「ロレックス社の素晴らしい点の1つは、ただお金を出すだけではない、ということだ。ロレックス社の特別な点は、それは裏を返せばLPGAがそうとも言えるのだが、現在の女子ゴルフ界において、選手たちが成果を評価する際にはロレックス社の尽力により作られた基準を利用するということだ。それは、ロレックス世界ランキングや、ロレックス・ルイーズ・サッグス・ルーキー・オブ・ザ・イヤー、ロレックス・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー、ロレックス・アニカ・メジャーアワードなど。
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だから、LPGAでプレーする選手たちが追い求める目標は、ランキングだろうが、トロフィーだろうが、ほぼロレックス社と結びついている。それが、男子ツアーにおける関係性とは違っている。ロレックス社はただのスポンサーではなく、成功を評価する指標なんだ」
◆現在のLPGAにおける韓国勢の台頭をどう考えていますか? 彼女たちの何が他国の選手たちと違うのでしょう?
「面白いことに、LPGAの歴史を見てみると、いろんな国による成功の波があった。米国人の成功、欧州勢の成功、日本人の成功…。その波は、次から次にやってくる。最近ではスペイン勢の復興を見ることができるだろう。そういう点では、今の現象はとても普通のことだと思う。最初、ある国から数人のスーパースターが出て、その後を追うように続いていく。朴セリやグレース朴が出て、その後に追従者が出たように。フォン・シャンシャンの活躍は多くの中国人選手をLPGAに呼び込んでいるし、ケリー・タンはマレーシアで多くの若い子たちに刺激を与えている。
それはとても面白い現象だ。今はまだその波を見ることはできないけど、フォン・シャンシャンらが道を切り拓いて、そのあとに続く大きな波を作っている。興味深いことに、今では毎週30カ国以上の選手がLPGAをプレーしている。こういう選手たちが、自国の若者たちに新たな波を引き起こしている。女子ゴルフの最も優れている点は、ボーダーレスということだ。選手が世界中から来て、スポンサーも世界中からやってくる。ファンもそう。20年前のLPGAとは全く異なっているんだよ」
◆今後のLPGAは、現在以上にグローバルツアー化していくのでしょうか?
「正直、これ以上グローバルになっていくかどうかは分からない。でも、本拠地(ホーム)のあるツアーにしたいとは思っている。誰も知らないところを回り続けるようなツアーにはしたくないんだ。女子テニスを見てみると、彼女たちは世界中で試合をして、ほとんどの選手は自分たちが生まれ育った国に住んで転戦している。
LPGAは多くの選手が米国に移り住んでいる。なぜなら、60~65%の試合が北米で開催されているから。そういう状態が好ましいと思う。本拠地があり、本部がある。みんなが一緒に住んで、一緒にトレーニングをする。どこで生まれ育ったかに関わらず。でも、我々は旅することは厭わない。シンガポール、タイ、オーストラリアでスタートして、欧州で2つのメジャー大会を挟み、最後はまたアジアで5試合(編注:その後1試合中止)をやって終わる。
ずっと自宅にこもったまま、グローバル化したいなんて言えない。グローバル化したければ、出ていかなければいけないんだ。だから我々は出掛けていく。グローバル化したければ、世界中の選手を惹き付けるだけでなく、受け入れて一緒にやろうと招かなければいけない。我々はこの2つをやっている。世界中のプレーヤーを受け入れて、自分たち自身も外に出ていって世界中でファンを増やす努力をする。
私は“次はどの都市で大会をやるのか?”ってよく聞かれるけど、自分では選ばないんだ。それはスポンサーが選ぶものだから。HSBC女子チャンピオンズは最初、ロンドンで開催したけど、今はシンガポールでやっている。キア・クラシックは韓国でやったけど、今はサンディエゴでやっている。それが彼らのビジネスにとって役に立つから。我々のビジネスがグローバルなのは、スポンサーがグローバルだから。スポンサーがグローバルだから、ファンもグローバルなんだ」