パリ五輪は“TOKYO”のリベンジなのか?/畑岡奈紗 単独インタビュー(前編)
2024年 ホンダ LPGAタイランド
期間:02/22〜02/25 場所:サイアムCC オールドコース(タイ)
稲見萌寧、古江彩佳…米ツアーの“後輩”をどう見る?/畑岡奈紗 単独インタビュー(後編)
畑岡奈紗にとって8年目の米ツアーが、22日開幕の「ホンダLPGAタイランド」(サイアムCC オールドコース)から本格化する。悲願の優勝を目指す5大メジャーはもちろん、8月「パリ五輪」も控えるシーズン。単独インタビュー後編では昨季の象徴的な戦いを振り返りつつ、今年9人に増えた日本勢への“意識”も明かした。(聞き手・構成/亀山泰宏)
「普段はならない」感情
単独首位でラスト18ホールを迎えた「全米女子オープン」でも、やはり最終日最終組を回った「アムンディ エビアン選手権」でもない。2023年のメジャーで最も悔しさがあふれたのは、「AIG女子オープン」(全英女子)だった。「確かにそうですね。あんまり普段そういう感情にはならなかったんですけど…」。ホールアウト後の瞳がうるんでいた。
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首位と5打差から出た日曜日、ポイントになったホールを思い返せば自然と早口になる。「14番、あれがもう、メチャクチャ悔しくて。あの“2打”がなければ、もっと詰められたっていうのと、ティショットですごく迷ったんです。ドライバーを握るか、4番アイアンで刻むか…。(迷った末に)ああいう選択をしてしまったことが、やっぱり悔しかった」
14番は警戒していたパー4。フェアウェイで口を開けるポットバンカーが悩ましく、その左サイドを狙っても、入れた瞬間に“出すだけ”となるヘザーが近い。畑岡も3日目に打ち込んでボギーを喫したエリアとあって、ペナルティのような認識だった。
バーディ欲しくて“ダボ”
結局1Wを握り、左を通そうとしたショットがバンカーにつかまった。セカンドで横にレイアップを強いられてダブルボギー。結果論ではなく、事前の備えをゲームで徹底しきれなかった自分が許せない。
「ドライバーで打っちゃうと、どうしても入り方が悪くて、ポットバンカーのふちに(近いところまで)行くんですよ。4番アイアンだったら、たとえ入ってしまっても、まだ打てる。バンカーの手前の方なので。練習でそれ(シミュレーション)をやっていたのに、実際に試合になったら、バーディ欲しさに(1Wで)打ってしまったことが悔しかった」
少しでも短い番手でピンを狙い、バーディを獲るためのチョイス。ただ、左からフォローの強風が吹いてボールがつかまりにくいコンディションだったこと、シーズンの傾向として右に滑っていくようなショットが多く出ていたこと…。冷静になって振り返れば、バンカーに入れる確率が高い条件がそろっていたと分かる。直後の2連続バーディも悔しさに拍車をかけた。メジャー最終戦の反省は今季の戦いにも生きてくる。
稲見のスイングが気になる
1月「ドライブオン選手権」は4位に古江彩佳、8位に稲見萌寧、9位に畑岡と3人が同時にトップ10入りした。「リーダーボードを見ていても、絶対に誰か(日本人)の名前があるってなると、気になりはしますよね」と、たしかな刺激も受けている。
特に稲見については、コーチとして教えを受けた黒宮幹仁氏の言葉も影響しているという。「黒宮さんも『すごくいいスイング』と言っていて。自分で見て、参考にしたりもしています。どういう風に身体を動かしたら、振り抜きがそういう方向になるんだろう…とか。モネちゃんの身体の使い方は、私に全くないモノだと思うので勉強になります」
昨年11月「TOTOジャパンクラシック」では、ともに最終日最終組で回って優勝を目の当たりにした。プロで同組は初めてだった。
「もちろん、もともとすごく上手なのは分かっていましたけど、やっぱりショットメーカー。久しぶりにラウンドして、日本であれだけ勝って活躍している理由は、ここにあるんだなって思いました。あれだけショットが安定していると楽に回れるというか、ショートゲームもうまいですし」
古江に「一番感じる」こと
日本ツアーで実績を重ねた選手が、必ずしも米ツアーで成功できるとは限らない。ルーキーだった22年に優勝して上位争いの常連となった古江のタフネスぶりも、経験者だから分かる価値がある。
「アヤカちゃんは一番感じますよね。米ツアーが全てではないですけど、日本で成績を残していても、移動(の大変さ)とかでうまくいきづらくなるっていうのは意外と“あるある”。普段の生活から慣れていく大変さは自分も感じましたし、そこからプレーも崩れていってしまったり…。勝ったらすごいのは分かりやすい。でも、最初はトップ10に入るだけでも大変だと思う。それを1年目から普通に順応して、(環境に)なじめることがすごいな、と」
最高峰の舞台は、間違いなく過酷でもある。そこで戦ってきた7年を「あっという間でしたね」と笑って振り返る。「1年目はシードも獲れなかったですけど、それ以降は維持しながらできている。去年は勝てなかったですけど、毎年1勝はするのが目標のひとつでもある。それを今後も続けられるようにしていきたいですね」
地に足を付けて見据えるのは、届きそうで届かないメジャーのビッグタイトル。涙をこらえた悔しさも、後輩から受け取る刺激も力に変えて、頂点を狙う戦いが今年も始まる。