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「進歩がない」と脳裏をよぎった米撤退 葛藤の一年目/西村優菜 2023年末インタビュー(前編)

今季米女子ツアーに主戦場を移した西村優菜は、ルーキーイヤーを堂々と戦い抜いた。限定的な出場資格からポイントを積み上げ、10月「ウォルマート NW アーカンソー選手権」では優勝争いの末に3位フィニッシュ。シードを確保し、上位60人しか出られない最終戦にも進出した。一見、順調なシーズンの裏で抱えていた苦悩に単独インタビューで迫った。前編は海外挑戦で味わった葛藤を振り返る。(聞き手・構成/石井操)

進歩感じず揺れ動く心

ここで戦い続けるか、日本に帰るか――。

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米ツアーメンバーデビューから約4カ月後の欧州シリーズ。フランス、スコットランド、イングランドを巡りながら大きくなっていく苦しみは、予選落ちした4連戦目の北アイルランドで極限に達した。

「もうレベルが高すぎて、戦えないかなって。その時は自分のゴルフがいい方向に向かっているとも思えなかったし、ここまで修正できなかったら無理かなって。シーズンが開幕してから半年くらい、自分の中で進歩がないなって。何も手応えをつかめていない自分に、メッチャ腹が立ったんです」

慣れ親しんだ母国で仕切り直したい思いに駆られた。「でも、日本に帰って全然ダメだと恥ずかしいというのはあって。アメリカツアーを断念して日本でも全然ダメだったら、もう自分のゴルフがダメになった証拠になっちゃいそうで。そう思いたくなかった」

「自信がない」から怖がる

昨年12月のQシリーズ(最終予選会)は24位。出場優先順位の高い20位以内に入れず、涙から始まった挑戦は覚悟していた以上にタフだった。翌週の試合に出られるかどうか直前まで分からない時もあり、調整面の壁にもぶつかった。

「心の面も体の面も、難しい部分がたくさんあった。初めてのことばかりというのもあるけど、今まで感じたことのないことを感じながら進んできた。やっぱりグリーンも硬いし、そもそものコンディションが日本とは違う。弾道をもっと上げたいとか、いろんな欲が出てくると、それがどんどん迷いになっちゃって調子も上がらない」

6月までの10試合は予選落ち1回でも、どこかモヤモヤしていた。「フィーリングと成績が比例していない感じ」は欧州で色濃くなった。「スコットランド女子オープン」20位、「AIG女子オープン」21位だった直後の北アイルランドで心が折れかけた理由も、そこにある。

「2試合とも成績自体はそこまで悪くなかったけど、自信がなくて。無理やり合わせている感じがあった。自分で思うショットは打てていないなって。自信がない分、ティショットとか怖がってのミスがすごく多かったし、この怖さがあるうちはプレッシャーがかかった時にうまくできないと思った。そこを直さないと、どうしようもできない」

枕元の蟻に「無理かも」

追い詰められる感覚になってしまったのは、海外転戦ならではの事情も無関係ではなかったかもしれない。欧州では米国と同じようにキッチン付きの部屋に泊まっていたが、「近くのスーパーがあまりきれいとは言えなかったですし、食材もちょっと…。ご飯はおいしく食べられないし、天気は悪いし、(米国と違ってホテルにランドリーがなくて)なかなか洗濯もできないし…。気分は晴れないですよね」

「全英女子のホテルは『無理かも…』ってなりました。気付いた時には蟻(あり)がスーツケースの中に入ってきたり、枕元にもいたり、めっちゃキモかった(笑)。ホテルの方が駆除用の粉みたいなものをまいてくれて、だんだん自分でも『あっ、蟻出たね』ってガムテープでペタッと(駆除するようになった)。人は強くなるんだなって思いましたね」。メジャーを戦いながら、宿に帰れば蟻と“格闘”していた一週間を苦笑交じりに振り返る。

気持ちを奮い立たせてカナダへ向かった「CP女子オープン」も予選落ち。2日目の最終18番で痛恨のボギーを喫し、カットラインからはじき出された。「ギリギリを攻めた結果のミスだったら、『ちょっとしょうがないかな』と思えただろうけど…。単なる自分のミスで一番ダメなところに打ってしまった。それがすごく悔しかった。メンタル的には結構、落ち込みました」。続くポートランドでも週末に残れず、笑顔が消えた。

見つけた小さな“ゴール”

かすかに光が見えたのは、41位で終えた9月「クローガー・クイーンシティ選手権」でのこと。優勝した2021年の日本ツアー「サロンパスカップ」時の動画を見返しながら、4試合ぶりに4日間を戦って少し前向きになれた。「『このスイングがすごく良い。ここに近づけたいんだ』って小さな“ゴール”みたいなのができた。自分がやりたいことと、やっていることが全然違うところではなく近くにあって、あともうひとつ材料がそろえば…。そんな感覚になった」

欠けていた最後のピースは、すぐ見つかることになる。8連戦目となる翌週の日本ツアー「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」で森本真祐キャディのひと言に救われた。

「1年ぶりのタッグだったので、『(以前と)何か違いがあったら言ってください』とお願いしていたんです。その時にシンさん(森本氏)から、『こんなにインパクトがぼやけとったっけ?』って言われて。最初は『疲れかな』くらいに思っていたけど、そこを意識したら、徐々に頭の中でイメージしたことと身体の反応がマッチしていった」

ぼんやりしていたスイングのポイントが鮮明になることで、流れのままに振っていた動きにメリハリが生まれた。失いかけていた自信がよみがえっていく感覚。「それまで答えにはたどり着かなかったけど、毎試合スイング、ショットとゴルフのことを考えてきた時間がムダじゃなかったと思えた。そこでしっかり考えていなかったら、(ヒントをもらっても結果に)つながらなかった。そういう意味では、成績は悪かったですけど、諦めずに、考えることをやめなかったのは良かった」

米国に戻って臨んだ「アーカンソー選手権」で最終日最終組を戦ってシーズン最高の3位に入った。撤退寸前の苦境から描いた上昇軌道。その裏には優しく寄り添い、背中を押し続けてくれた身近な存在もあった。

取材協力/東京マリオットホテル

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