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6年目の米国 変化への恐怖と克服の舞台裏を明かす/畑岡奈紗 2022年末インタビュー(1)

18歳でいきなり世界最高峰の米ツアーに飛び込んでから6年が経過した。次々と新たな世代が台頭する女子ゴルフ界にあって、畑岡奈紗が日本の先頭を走り続けて久しい。これまでにない大きな変化を取り入れながら4月「DIOインプラントLAオープン」で優勝も飾った一年を振り返り、悲願のメジャー制覇に向けたアプローチに迫る単独インタビュー。前編はビッグチェンジの舞台裏を明かした。

初の平均ストローク60台

シーズンの締めくくりとしては“最悪”だったかもしれない。11月の最終戦「CMEグループ ツアー選手権」の最終日、今季ワーストとなる「80」をたたいた。

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「もうダメだなって思ってたんです」。米ツアーで過去5年、一度も到達できていなかった年間平均ストローク60台が手の届くところにあるのは分かっていた。ショックは大きく、自分でスタッツをチェックする気にもなれなかった。「69.937」という実際の数字を人づてに聞いたのは、日本へ帰ってしばらく時間がたった後のことだった。

ひとつの壁を突破したといっても、トータルで振り返れば「60点くらい」と満足にはほど遠い。これまで調子が上がり切っていないイメージが強かった序盤戦でのタイトル以降、なかなか優勝争いに絡むことができなかった。

成績だけを見れば物足りなさも感じる中盤から後半にかけて、光がなかったわけではない。8月「AIG女子オープン」(全英女子)では大会初のトップ10入りとなる7位。その前週、やはり7位に入った「スコットランド女子オープン」も含めて、強風が吹き荒れるリンクスでの好成績はポジティブな要素を見出せるものだった。

「道具がすごく味方してくれた。(アイアンの)シャフトがすごく良くて、自分の打ちたいボール、ねじれにくいボールが打てるようになったので、風の中でもうまくプレーできたのかな。風とけんかさせようとしても負けちゃうくらい、すごい横風だったときにも、今まで流されていた分の半分くらいで収まってくれた。2月に思い切り替えたものが半年くらいで慣れてきて、ひとつ結果を残せたのは良かったかな」

新たなコーチと新たな道具

新たに黒宮幹仁コーチを迎えて戦っていたシーズン序盤、フロリダでの開幕3連戦が終わった後の行動は少なからず周囲を驚かせた。約1カ月後のアジアシリーズに入るタイミングで、数年来替えていなかった1Wを「ゼクシオ エックス ドライバー」にスイッチ。アイアンのシャフトを、スチールとカーボンの複合モデル(トゥルーテンパーのスチールファイバーi95)に変更した。

ボールも「Zスター XV」にして、文字通りバッグの中身を一新した。黒宮コーチとともにきっかけになったのは、米国で主に松山英樹をサポートしている住友ゴム工業の用具担当者・宮野敏一氏だったという。

「フロリダ3試合の前後で見てもらったとき、宮野さんの中でかみ合わない部分があったみたいで。自分の中でもあったんですけど、何をどう変えたらかみ合うのかということは、自分だけでは分からない部分もあった。私のためを思って(言いづらいことも)言ってくれたのがうれしかったですし、黒宮さんや宮野さんの言葉がすごく大きかったと思います」

ここまで米ツアーで優勝を逃したのは、ルーキーだった2017年とコロナ禍で試合数が減少した20年だけ。苦戦を強いられた初年度を除いて安定した結果を残している畑岡に対し、大きな変化を直接促してくれる存在は貴重だ。長年愛用していたギアへの信頼はいつしか先入観に近いものを生むこともあり、テクノロジーの進化に対するアンテナを鈍らせていた部分もあった。

変わらなければ東京と同じ

シーズンが始まった段階での大胆なチェンジは、当然リスクもはらむ。それでも踏み切ったのは、21年の苦い記憶があったから。プロ転向前からメジャーと並ぶ大目標に掲げていた「東京五輪」。選手として迎えられるのは一生に一度あるかないかという母国開催の晴れ舞台で夢だったメダルを逃したダメージは、胸の奥に刺さったままだ。

「今思えば、オリンピックの前から思い切りやっていれば良かったなというのもある。やっぱり東京オリンピックというのは自分の中でビッグイベントだった。そこで変わることを躊躇(ちゅうちょ)したり、恐れていた部分もあったのかな。今はメジャーを勝つことが一番の目標で、その先にはもちろん(24年)パリっていうものがあるんですけど、やっぱり変わらないことには上には行けないと思いますし、東京と同じような成績(9位)になってしまう。思い切ってやるしかない、と」

そんな一大決心から2カ月も経たないうちに、ロサンゼルスで後続に5打差をつけて圧勝した。爽快な結果とは裏腹に、得られた手応えは控えめだった。

「あのときも、自分のやりたいスイングはできていなかった。スッキリした勝ち方というのはできていなかったですね。(変わっていく)段階としては良かったけど、手応えはまだまだ。試合中にボールとの距離を1個分近づけたことでショットが良くなった部分もあるんですけど、何よりパターが良かった。ショットというよりはグリーン上で勝てた試合だった」

試合になると顔をのぞかせがちなスイングの悪癖と向き合いながら、目指す動きにギアを最適化していく調整も折に触れて行う必要がある段階。3月のアジアシリーズ前に行ったクラブ変更は、腰を据えた長期的な取り組みのファーストステップでしかなかった。(聞き手・構成/亀山泰宏)

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