「信じられない」笹生優花が涙のメジャー初V
2021年 全米女子オープン
期間:06/03〜06/06 場所:オリンピッククラブ(レイクコース)(カリフォルニア州)
「戦うのは目の前のコースだけ」笹生優花が偉業を達成
◇海外女子メジャー◇全米女子オープン 最終日(6日)◇オリンピッククラブ(レイクコース) (カリフォルニア州)◇6457yd(パー71)
世界最高峰の大舞台で初めて最終日最終組を回る。笹生優花の表情は前日までとは違っていた。
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1番(パー5)はフェアウェイからウェッジを握った3打目をグリーンオーバー。ここはパーで切り抜けたが、続く2番のティショットは明らかに力みが見られるミスショットで大きく右に曲げて深いラフへ。1打で脱出できずに、4オン2パットのダブルボギーとしてしまう。続く3番(パ―3)も左バンカーに入れた後に3パットして連続ダブルボギーとした。
下を向き、伏し目がちに歩く笹生。スタート時点に1打だった首位レキシー・トンプソンとの差は、3ホールを終えて5打になった。「動揺した」と笹生は言う。「でも、キャディさんがそばにいてくれて、『まだホールがいっぱいあるから、自分を信じてプレーしよう』と言ってくれた」と、キャディのライオネルさんの励ましに前を向いた。
4番で2パットのパー。5番は9mのバーディパットがカップをかすめる。笹生にも笑顔が戻って、少しずつ本来のプレーを取り戻していった。
ハーフターンで5打あった差は、トンプソンが後半に入ってスコアを落として詰まっていく。11番を終えて4打差、14番で3打差、16番(パー5)で笹生がバーディを奪って2打差となり、17番はガードバンカーから1mにつけてバーディとした笹生に対し、ティショットを深いラフに入れたトンプソンが、最後は1.5mのパーパットを外してついに首位に畑岡奈紗を含む3人が並んだ。
フィリピン国旗を掲げたギャラリーの声援も笹生の背中をあと押しする。18番をボギーとしたトンプソンが脱落し、畑岡とのプレーオフへ。その3ホール目は、今週なんども見せてきたように、ラフから48度のウェッジでピン手前3mに転がし上げると、カップ1、2個切れるフックラインを沈めてガッツポーズ。フィリピン人としては男女を通じて初のメジャータイトル。日本人としては初めての「全米女子オープン」制覇となった。
優勝後、記者からプレーオフ1ホール目で畑岡のバーディパットがわずかにショートしたとき、笹生が「入れ」と言わんばかりに足を蹴り上げた理由を質問された。「自己中心的になりたくないから。ここにいるのはみんな素晴らしい選手たち。彼女たちの時は、彼女たちの時だし、私の時は、私の時。みんなを応援したいの」と笑顔。
朴仁妃(韓国)が持つ大会最年少優勝記録(19歳11カ月17日)にきっちり並び、先輩の記録を更新しなかったのも、そんな気遣いか…。思い出したのは、直前に聞いた父・正和さんの言葉だった。「優花は誰とも戦っていないんですよ。戦っているのは目の前のコースだけ。それをどう攻略するかということだけなんです」(カリフォルニア州サンフランシスコ/今岡涼太)