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2020年 AIG女子オープン(全英女子)
期間:08/20〜08/23 場所:ロイヤルトゥルーンGC(スコットランド)

「できすぎで気持ち悪い」笑顔と名言と 渋野日向子のメジャー優勝プレーバック

◇メジャー第1戦◇AIG女子オープン(全英女子オープン) 事前情報◇ロイヤルトゥルーンGC(スコットランド)◇6649yd(パー71)

渋野日向子は2019年大会の開幕前、コースで恥ずかしげもなく“味のり”を頬張っていた。レインウエア姿でつばを背にしてキャップをかぶり、屈託なく笑う。そのスマイルは数日後、世界が知るところとなった。

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42年ぶりに日本女子ゴルファーが手にしたメジャータイトル。2020年はそれを守る立場になって英国に帰ってきた。奇跡と笑顔に満ちたあの1週間を、シンデレラが残した名言とともにプレーバック。

「んー、お腹空いてきちゃったな」 開幕前

日本ツアー本格参戦初年度にして夏場までに2勝をマーク。初めてのメジャー切符を握りしめ、満を持して大舞台にやってきた。いやいや、ホントはちょっとした観光気分。試合前週にロンドンで大英博物館を訪れたり、ショッピングを楽しんだり。初めてのヨーロッパ、プロになって初めての海外での試合。そんな緊張感を漂わせることなく、渋野はいつもの渋野だった。

居残り練習中「んー、お腹空いてきちゃったな」とつぶやき、いきなりもぐもぐ。スーツケースにはお菓子を詰め込んできた。よっちゃんイカに、あたりめ、味のり…。「タラタラしてんじゃねーよ」がのちにバカ売れすることなどつゆ知らず。「まずは予選通過。自分の力がどの程度か、それを知りたい。気持ちは日本の試合と変わらないです」と黙々と打ち込む姿があった。

「できすぎ。気持ち悪くなっちゃうくらい」 初日

7バーディ、1ボギー「66」 6アンダー2位

初めて経験するメジャーで一緒に回ったのは、米女子ツアーで活躍するミンジー・リー(オーストラリア)と、アンナ・ノルドクビスト(スウェーデン)。正直に言おう、「まあ、そこまで詳しくは…知らないんですけどね」と渋野は彼女たちの情報を持ち合わせていなかった。それがどうした。地元・岡山から駆け付けた応援団の声を背に、集団からあっという間に抜け出した。

ホールアウトしてからしばらくは、リーダーボードの一番上に陣取り、インタビューでは開口一番「なーんてこった」。ウォーバーンGCのバックナインとの好相性はこのときから。インを「30」(パー36)で締め、「できすぎ。気持ち悪くなっちゃうくらい」と驚いた。「やばい、やばい。私、スロースターターだから、初日に良すぎるとだいたい悪い」――。その胸騒ぎ、杞憂に終わる。

「Very Happy、とてもHappy」 2日目

4バーディ、1ボギー「69」 9アンダー2位

「(1年前は)こんなところにいるのは、想像していなかった。レギュラーツアーに出られているかな、って感じだったから。今年の調子はすごく良いと思う」。2018年7月に2回目の挑戦でプロテストに合格し、年末の最終QTで40位。年が明けて日本で2勝、そして初めてのメジャーを2位で折り返した(←イマココ)。

出だしのバタバタした展開を乗り切り、6番からパーを並べて16番のバーディで、またも一時首位に。「みんなビックリ、私もビックリです」。いよいよ世界の視線も向いてきた。そうそう、例のニックネームがついたのもこの日。どんな質問にも朗らかに答える姿に、外国人女性記者が思わず言った。「You are Smile Cinderella」(あなたは“スマイルシンデレラ”ね)。

「静かに生きていきたかった」 3日目

7バーディ、2ボギーの「67」 14アンダー首位

初出場のメジャーで経験した最終組は「結構しんどかった」。ホールアウト後の笑顔の裏には、地団駄を踏むようなシーンもあった。9番で「一番嫌い」という3パットボギー。「へたくそって、ブチって切れちゃって…」。ロープ際のトイレの中で怒りを沈め、「すごく悔しかったけど、後半がある。ピンを狙わず、逃げてボギーをたたくのは、本当に悔しい」と積極性を取り戻した。

アシュリー・ブハイ(南アフリカ)に一時6打差をつけられながら、得意のインでまた「30」を出し、後続に2打差をつけた。「きょうが日曜日であれ、って感じ」という期待も、「本当は静かに生きていきたかったんですけど…」という本音もこぼす。「緊張すると思う。でも攻めていければ、もしかしたらですけど、優勝できるかもしれない」。遠くで、歴史の壁が動く音が聞こえてきた。

「ニコッとしてくれるのがうれしくて」 最終日

7バーディ、1ボギー1ダブルボギー「68」 18アンダー 優勝

土曜日までに築いたリードは序盤のうちに失った。3番で4パットのダブルボギー。ビッグタイトルへの期待が少ししぼんだところで火が付いた。「私は追う立場の方がやりやすい」。得意のバックナインが待っている。池を恐れず、1Wを身体に巻き付けた12番で1オンに成功しバーディ。土壇場の15番でリゼット・サラスに並んだ。

リズミカルに駄菓子を噛みちぎり、いたるところでハイタッチ。一歩踏み出すたびに、ファンが増えた。「ギャラリーさんと目が合ったとき、私がニコッとすると、その方もニコッとしてくれるので、それがうれしくて」。最終ホール、5mのスライスラインを沈めて曇天を突く。目頭に手をやっても、涙は出てこなかった。「静かに生きていきたかった」。その願いは、ごめんなさい。もう、そうもいかないみたい。あの日、世界を笑顔にさせてくれたから。

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