“ガラスのハート”はもう卒業 岩田寛がアルバトロスで8位浮上
<人は本当に変われるか・・・。不可能に挑戦する岩田寛を応援したい>
人は変わらない。持って生まれた性格は変えられない。世間ではよくそう言われるけれど、そんな不可能に挑戦しているのが岩田寛だ。ひとつのミスを引き金に、切れてますますミスを重ねる悪循環で、たびたび逃してきたツアー初優勝。すぐにでも勝てるとの高い前評判も、自らふいにしてひそかに涙することもあった。「ミスをした自分に腹が立って、切れてしまうんです」。そのたびに反省はしているようなのだけれど、どこか頑な雰囲気もあって、たびたび同じような場面が繰り返されてきた。
そんな岩田に変化が見られたのは、3年前だろうか。あの未曾有の災害が彼を変えた、といいきるのはこちらの勝手な判断になってしまうのだが、それでもやっぱり、あの直後から確かに彼は変わったと思う。
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愛する故郷を大津波が襲い、本人はたまたま仙台を離れていて難を逃れたが、仙台空港に駐車していた高級外車があっけなく海に流されるという経験をしている。大学時代の同級生が奥さんと子どもを失い、めったに心情を吐露しない選手が「被害にあった人たちの気持ちを思うと泣きそうになる」と、こぼした。「経験した人じゃないと、分からないとは思うんですけど、やっぱり気持ちを思うと泣けてくる」と。
「ゴルフで二度と切れない」と、誓ったのもあのとき。「二度と切れないで、初優勝を飾る」と強い決意を語っていたものだ。あれから3年が過ぎても岩田は勝てないままだが、やっぱり人は変われないのかというと、そうではない。岩田は切れなくなった。いや、実はたまに切れることもあるのかもしれないけれど、以前よりはずっと、切れなくなった。
変わろうと、岩田は本当に懸命に努力しているんだと思わされたのが、「セガサミーカップ」のときだった。その日の試合が終わり、会場からホテルに向かう車の中で、歩道をけっこうなスピードで疾走するひときわ体格の良いランナーを見つけた。スポーツ選手って、試合会場で見るとそんなには感じないのに街中で見ると、びっくりするほど大きく見える。日頃から鍛えている人間は、やっぱり違うと思わされる。明らかにアスリートだ。あれは誰だろうと目を凝らしたら、それが岩田だった。
慌てて激写しようとカメラを出したが、歩道の反対側の車線を走っていたせいもあり止まって撮影することもできず、こんなブレブレの写真になってしまって恥ずかしいやら、申し訳ないやらだが、黄色いTシャツは確かに岩田だったと言いたくて、あえてこの写真を掲載させていただいた。
「最近、ずっと走っている」と話していた。試合中も、続けていたのだ。努力する姿を目の当たりにしたら、余計にこう言いたくなった。
がんばれヒロシ、夜明けは近いぞ!!
そして強い意志さえあれば、人は必ず変われることを、ぜひ身をもって証明して欲しいと思った。