【’12年10月第3週】谷口徹、キム・ソヒの優勝パター
谷口徹、完全復活!2週連続優勝!/ブリヂストンオープンゴルフトーナメント
「今は藍ちゃんがライバル」
「今週は、泣きませんよ」と谷口は言った。先週の「日本オープン」。涙、涙の優勝から1週間。満面笑顔の優勝インタビューこそ、完全復活の証。
「昔のことなんか、忘れてしまいましたよ」と、とぼけたが、今週のゴルフの調子は一昨年前、賞金王を取ったときの状態にほぼ近い。「精神面、技術面がうまくマッチングした良いラウンドだった」。絶対的な自信が戻ると、同時に強気のコメントも戻ってきた。
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この優勝で、賞金ランクトップの片山晋呉と約1,000万円差。「まあ、こうなったら並んだも同然。抜くのも時間の問題かなと…」。豪快に笑った。
賞金王についた2002年以降、不振が続いたことにはずっと責任を感じていた。伊沢、片山らに真っ向勝負を挑めるような図抜けた選手の不在で、女子ツアーに押され気味だった。だが自分の完全復活で、また頂上対決の図式を描くことができると確信していた。
朝、ロッカールームで片山に「いつでも迎え撃ちますよ」と言われた。その片山と、再び争えるチャンスが出てきた。「そのセリフを、早く僕が言えるように。また、2人で良い時代を築いていきたい」。再び賞金レースに名を連ねられたことが、何より嬉しいと谷口は言う。
その一方で、自身、成し遂げた今回の2週連続優勝でさえも、女子ツアーの人気にはまだまだ追いつけない、という忸怩たる思いも谷口の頭には依然としてある。今週開催の「マスターズGCレディース」で宮里藍がツアー4勝目。「ルーキーとしての彼女の成績は破格。話題性では、女子ツアーの方がまだ上なんです。もっともっと、僕らの手で男子ツアーを盛り上げていかなければ…」。それを肝に銘じる意味でも、「今は藍ちゃんがライバル」と、谷口は言ったのだ。
「丸山君をおさえて今週の主役になれたことが嬉しい」
首位と3打差の6位からスタートした最終日。8番ホールのスコアボードを見て驚いた。丸山茂樹が首位に浮上していた。初日は72位タイからの優勝争い。「さすが、ブリヂストンの契約プロ」と、その底力に改めて舌をまく反面、「このまま勝たせたら、またアメリカとのレベルの差、とか言われてしまう。僕が頑張らないと!」たちまち闘争心に火がついて、その8番で10ヤードをチップインバーディ。
ここからがぜん「元気が出た」。その気になったらあとは1打1打に集中してホールを進むだけだった。そうすれば、自ずとトップの座がこの手に転がりこんでくることは、経験で知っている。「普通にやれば誰にも負けない、という自信が、戻ってきていましたから」あっさりと言って、通算9勝目をさらって行った。
最後まで優勝を争った丸山にとって、今大会はホスト試合だった。絶大なる周囲の期待を谷口が良い意味で裏切った。米ツアー3勝の実力者との息づまる激戦を制し、完全復活を印象づける2週連続優勝。
「丸山君をおさえて、今週の『主役』になれたことが嬉しい。関係者のみなさんには『お前、何すんだ』と言われてしまいそうだけど(笑)」
その丸山からは、「早くアメリカで一緒に戦おう」とのメッセージも受け取っている。また「谷口君はアメリカ向きの選手だから」、とも。「マルちゃんこそ1試合と言わず、4つ、5つは日本でプレーして盛り上げてよ」と、軽く受け流すポーズを見せつつ、世界を股にかける丸山の言葉が、負けず嫌いの谷口をその気にさせたことは間違いない。