ツアープレーヤーたちの本音<桑原克典>
2006/01/23 09:00
これも、世代交代の波のひとつだろう。昨シーズンは、いずれも9人の初優勝と、初シード組が誕生したかわりに、これまでシードの常連だった選手たちがその確保に苦しんだり、権利を失ったりして肩を落とすシーンが多く見られた。
95年に初シード入り、以来10年間シード権を守り続け、ツアー2勝の経験を持つ桑原克典もそのひとりだった。
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10月を過ぎて、シーズンも終盤を迎えようという時期になってなお、賞金ランクは80位台と低迷していた。表情に、疲労の色が濃く出始めたのもこのころだった。
もっとも、本人はめったに人前で弱音を吐くタイプではない。むしろ、窮地のときほど悠然と振舞おうとする。「プロたるもの・・・」という“美学”を、頑固なまでに守っているからだ。 だから、シード権が確定するまでは、周囲の人たちにも「つらい」とか「シード権のプレッシャー」などといったマイナスな言葉は、絶対に使わなかった。 「悪いときこそこれを乗り越えれば、またきっと新しいゴルフ人生が見えてくる」。繰り返すのは、常に前向きなコメントばかり。そうやって、自身を鼓舞する気持ちもあったのだろう。
しかし、11月のダンロップフェニックス。13位につけて、賞金ランクは64位に浮上。獲得賞金もようやく1400万円を超えたとき、さすがに本音がこぼれ出た。最終日を終えて、クラブハウスに引き上げる道すがら、専属キャディの松村卓さんに、ポツリとこぼしたという。
「今年は、お互い地獄を見たな・・・」。
その言葉に、秘めたこの1年間の胸のうちが集約されていた。
2005年最後のトーナメントとなったアジア・ジャパン沖縄オープンで「今年を一文字であらわすなら」と聞いてみた。 少し考え込んだのちに、桑原は「忍(にん)。・・・しのぶ、という字になりますかね」と、答えた。
「とにかく、いまじっと耐え忍んで我慢を続けたら次に必ず良いことある、と。その一心で戦ってきた1年間でした・・・」。
このオフは1回5日間程度の合宿を、1ヶ月3回のペースで行って基礎からみっちり鍛えなおすという桑原。耐え忍んだ昨シーズンをバネに、今年はぜひ復活優勝を見せてほしい。