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2019年 AT&Tペブルビーチプロアマ
期間:02/07〜02/10 場所:ペブルビーチGL ほか(カリフォルニア州)

佐藤信人の視点 勝者と敗者

期待高まるペブルビーチでの生涯グランドスラム

「AT&Tペブルビーチプロアマ」から「全米オープン」へ――。フィル・ミケルソンが臨む目標には、すでに2人の先人が存在します。

1972年のジャック・ニクラス、2000年のタイガー・ウッズ。ペブルビーチで「全米オープン」が行われた過去5シーズンのうち、2回という高確率で両大会の優勝者が生まれているのです。今季はその権利を、大ベテランの最強レフティが手にしました。

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「AT&Tペブルビーチプロアマ」は、最終日に予定された日曜日(10日)が朝から大荒れの天気。最終組のスタート前にはヒョウが降り、3時間もの遅れでティオフとなりました。この時点で首位のポール・ケーシー(イングランド)とは3打差。初めから手堅いゴルフを展開していたケーシーに対し、ミケルソンは前半で2つバーディを獲り、早い段階で流れをつかんでいるように見受けられました。

ポイントは1打差で迎えた10番(パー4)。オナーのミケルソンが放った球が、右の崖方向へ一直線。この瞬間、誰もがペナルティエリアに入ったと確信したのですが、幸運にもボールはキャリーで崖を超えて端に残っていたことで、その後の流れが大きくミケルソンに傾いたと考えられます。一度沈みかけた気持ちを立て直し、このホールでバーディを奪ったミケルソン。逆に同組のケーシーはパーで、追いつかれてしまいました。相手が一瞬でも冷やっとした状況から息を吹き返し、さらに追いつかれたことで、心境としてはここで形勢逆転となったのです。

この10番をきっかけにミケルソンが主導権を握ったまま、日没順延後の月曜日(11日)フィニッシュまで一度も流れはケーシーに傾きませんでした。16番で日没が迫り、順延を希望したケーシーの気持ちは「一度流れを断ち切りたい」という思いがあったからこそ。それほどレフティに傾いた流れは引き戻すことができなかったと予測できます。

ツアー通算44勝、うちメジャー5勝。彼の強さはゴルフファンなら誰しもが認めるところですが、ここ数年の好調さを保つ要因は、若い時とほぼ変わらない飛距離が挙げられると思います。「AT&Tペブルビーチプロアマ」で優勝した過去5試合がVTRで紹介されていましたが、スイングスピードにはまったく年齢的な衰えを感じません。48歳でこれほどの強さを持続するには、想像を超える絶え間ない努力を続けていると考えられます。

そんな彼が特別視しているコースが、このペブルビーチです。祖父がキャディとして働いていたことからも、思い入れのある地と公言しています。レイアウトやポアナ芝との相性もさることながら、PGAツアー屈指の狭小グリーンだけに小技も問われるロケーション。技巧派レフティの腕の見せどころであることは間違いないと言えそうです。

ただ、衰え知らずのミケルソンもことし6月で49歳。まだまだ飛距離は落ちないとしても、「全米オープン」タイトルを残すキャリアグランドスラムを見据えるならば、そろそろ達成しておかないと厳しい年齢でもあります。4カ月後の「全米オープン」の会場では、ニクラスとウッズによるぺブルビーチの巡り合わせも相まって、彼に対する声援は際立って海岸添いに響きわたることでしょう。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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