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佐藤信人の視点 勝者と敗者

窮地のファウラーを救った待ち時間と人望

「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」は、リッキー・ファウラーが辛くも勝利を得る形でツアー通算5勝目を飾りました。

ファウラーのドタバタ劇は、11番(パー5)でドロップした球が池に落ちるという不運から始まりました。思わぬ形でトリプルボギーを喫した後、12番(パー3)でもボギー。スタート前に4打差あったリードは消え、あれよあれよという間に2位に転落。13番(パー5)でもピンチを迎え、雷雨中断でも何でも良いから一旦休憩が必要では?と思えてしまうほど、悪い流れに陥っていました。

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もともとファウラーは、逃げきりでの優勝は一度のみ。どちらかというと追いかけられるより、追いかけるほうが好きなタイプ。単独首位で迎えたこの日は、いままで以上に大きなプレッシャーが、思わぬアクシデントによって急ピッチで押し寄せてきたのです。

そんな彼に15番(パー5)のセカンドショットが迫ります。2010年、初優勝を目指して戦っていた同大会では、残り約230ydからのセカンドショットでレイアップを選択し、このホールは結果的にバーディを奪えませんでした。最後まで逆転することなく終戦(ハンター・メイハンが優勝)。初のシード権を獲ることにも必死だったため、2位でも良しとする立場だったことから、メディアやギャラリーから消極的な姿勢に非難の声も挙がりました。

この日窮地に立たされた彼が、この時と同じ15番でのセカンドショットを迎えた際、その時の記憶がよみがえったのは私だけではなかったはずです。グリーンを狙うか?レイアップするか? そんな大事な局面でしたが、前組が少しだけグリーン上で時間がかかったことで、数分の待ち時間が生まれました。私はこの待ち時間が幸運だったと推測しています。悪い流れを断ち切るのに必要な時間となったからです。結果としては果敢にグリーンを狙い、見事2オンに成功。ここでバーディを獲れたことが、その後の奮起につながりました。

ファウラーは2年前の同大会で松山英樹選手にプレーオフの末、僅差で敗れた過去があります。さらには親友である故ジャロッド・ライル(オーストラリア)が名物ホールの16番(パー3)でホールインワンを決めた思い出の地。すべての要素が彼にとって勝ちたい意欲に変わり、また周りも勝たせてあげたいという気持ちとなり、ファウラー中心の舞台ができ上がりました。

もともとファンの多い人気者。ただ、彼を勝たせてあげたいと思う視線はギャラリーだけでなく、優勝の可能性がなくなったジャスティン・トーマスマット・クーチャーからも感じるほどでしたので、やはりそこは彼の人徳でしょう。誰からも愛される要素があるからこそ、熱気を帯びた会場の雰囲気を作り出せたのだと思います。

今回の試合展開は、彼が願ったものとは程遠かったかも知れませんが、観ているギャラリーの後押しが力になったことは間違いありません。9年前の敗戦からどのように成長し、どのように多くのファンを魅了してきたか――。ファウラーという選手の人間性と成長の軌跡を垣間見ることができた最終盤の逆転劇は、とても見ごたえのあるものとなりました。

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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