世界トップクラスの資質 藤本佳則の“慎重さ”【佐藤信人の視点】
観客動員数No.1大会の凄み 国内ツアーが求められる地道な一歩
◇米国男子◇ウェイストマネジメント フェニックスオープン◇TPCスコッツデール(アリゾナ州)
「フェニックスオープン」は、PGAツアー屈指の観客動員を誇ります。開催コース「TPCスコッツデール」(アリゾナ州)の16番パー3は劇場型スタンドとなっており、フットボールスタジアムのような感覚で観戦できることで有名です。
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まさにそこはゴルフを観るために設計されたコースであり、ギャラリーが楽しむための会場と化します。この大会でいつも感じることは、国内ツアーの課題として急務である人気回復のヒントが隠されているのではないかという点です。
今年は、予選2日間だけで約29万5000人(初日10万4375人、2日目19万1400人)のギャラリーが詰めかけました。かたや国内男子ツアーは昨季の年間総動員数が約29万8000人。数字だけを見れば、一年間のギャラリー数をたった2日間で集めてしまったことになります。出場選手の違いや、そもそもの規模感、費用感などの違いはあるにせよ、この大きな差をどうにかしたい、どうにかしなければならないと思うのは、国内ツアーに携わる者の役割だと思うわけです。
特にこの大会は、トーナメントを試合だけで終わらせていないという特徴があります。ゴルフに興味のない人も足を運びたくなる仕掛け。ゴルフの試合会場というより、ゴルフを主体としたイベント会場になっています。野外で飲食ができ、観戦だけでなく一日遊ぶことができるイベントとなれば、ゴルフに興味のない人にもリーチできるわけです。
またコース自体が、もともと試合を観るために造られているという特徴があります。国内のコースは、スタンドを設営しようにも見下ろせる場所がなかったり、グリーン周りの木々がさえぎったり、イベント会場にしようにも場所がなかったり…。改革を起こしたくても、なかなか先に進めない課題があるのです。
ですが、それでも新しい試みは国内でもすでに始まっています。同大会を参考にしたという昨季の「RIZAP KBCオーガスタ」は、選手自身が選んだ曲で入場したり、アプローチコンテストや地元アイドルのスペシャルステージを行ったり、イベント満載の大会となりました。
また昨年、「三井住友VISA太平洋マスターズ」が行われいる太平洋クラブ御殿場コースの改修が、松山英樹選手を監修に加えて開始されるというニュースが飛び込んできました。これからのゴルフシーンをけん引する国際水準のトーナメントコースへと生まれ変わるための改修といいます。どうしても改修と聞くと、距離を長くしたり拡張したりする話ばかりが大きく取り沙汰されてしまいますが、私はトーナメントに足を運んだお客さんの目線での改修を望んでいます。
多くのお客さんがゴルフ場に来て、イベントに参加して、ゴルフを観て、何かを感じ取ってもらえる、そして何より楽しむことができるコースを望んでいます。(解説・佐藤信人)
- 佐藤信人(さとう のぶひと)
- 1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。