注目の「高卒3年目」 今季の女王争い&ブレーク候補に名乗り出るのは?
2024年 ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント
期間:02/29〜03/03 場所:琉球GC(沖縄)
「メジャーで勝ちたい。世界一になりたい」 有言実行の20歳/櫻井心那インタビュー
2023年の日本女子ゴルフ界で最もブレークした選手は櫻井心那だろう。前年に下部ステップアップツアー史上最多5勝を飾り、レギュラーツアーで史上3人目の10代4勝を達成した。今季は「年間女王」と「海外挑戦」が目標だ。幼い頃の夢は「日本女子オープン優勝」と「賞金女王」だった。「いまは海外メジャーで勝ちたい。世界ランキング1位になりたい」。あえてさらなる高みを口にする20歳の覚悟は―。単独インタビューで迫った。(聞き手・構成/石井操)
「なんでみんな海外に?」
「プロになった頃は海外メジャーのみならず、米ツアー自体すごく難しそうだなって。『なんでみんな海外に行っちゃうんだろう』って思っていた。でも、いまは『ちょっと頑張れば戦えるのかな』って思いの方がある」
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昨年8月「AIG女子オープン(全英女子)」(イングランド・ウォルトンヒースGC)で初めて海外メジャーを経験した。世界ランカーに食らいついて2打差7位でスタートしたが、尻すぼみの50位フィニッシュ。「(海外メジャーで)優勝はちょっと頑張ったぐらいじゃ難しいだろうけど、自分が想像しているよりも遠い存在じゃない。そういう風に感じるようになりました」
日本人選手は大会史上最多の16人が出場し、半数は自分と同じ国内ツアーが主戦場。その年の国内ポイントランキング5位の実績は確かな手ごたえになった。
「小さい時は日本女子オープン優勝とイ・ボミ(韓国)さんを見てプロになろうと思った。賞金女王になりたいと思っていた。でも、いまは海外メジャーで勝ちたい。世界ランキング1位になりたい」。ここ2年でより大志を抱くようになった。
携帯メモに「悔しい」
最初に海外の魅力を感じたのは2022年8月、インドネシア開催のレディースアジアツアー「シモーネ アジアパシフィックカップ」だった。マネジャーも、キャディもつけず初めて単身で赴いた海外で“キラキラ”した世界を目にした。
翌23年に出場した海外メジャーは「全英女子」のみ。日本勢が22人もいた「全米女子オープン」(カリフォルニア州・ペブルビーチGL)には出られず、携帯のメモに「『周りが全米の切符を掴んでいるのに…悔しい』って書いた」。忘れたくなかった。書き留める癖は幼い頃からの習慣だ。
父・一也さんに連れられ練習場へ行ったのをきっかけに、年子の兄と切磋琢磨して腕を磨いた。
「1歳上の兄は小、中、高校が同じだったのでよく喧嘩していました。試合になると男女別なんで、そこは『一緒に全国に行こうね』と応援し合って。中1から高3まで参加していた九州ゴルフ連盟の強化合宿での学びが大きかった」という。
「合宿は3カ月に1回ぐらいで、2泊3日。まず1年間の表に出場する予定の試合を書いて、空いている枠にメンタル面、技術面、体力面の課題を書き込む。それを提出しないといけない。そのあとは真っ白な画用紙に何時から何時まで何をするのか書き出して、課題を見つけたら、どうすれば改善できるかを考えて試合に臨む。そして、また課題を見つける…というサイクルを学んだ」。地道な反復練習で土台を築いてきた。
「いまは書き出したりしないけど、勝手に『これをするならこうしないと』と考えるようになった。プロテストを一発合格できたのも、そうやって課題をどんどん消化していったからだと思う。練習で気付いたことや、このショットはどういう風に気持ちを持てばよかったか、という反省はスマホのメモに残すようにしています」
思いを言葉に込めて
ことしは年間女王を目指しながら、来年に米国で戦うために、12月の米ツアー最終予選会(Qシリーズ)に臨めるようスケジュールを組んでいく。
「ことしは日本で頑張って、来年はアメリカで戦って、ちゃんとシードを獲って、優勝して。その次に海外メジャーで勝って」。しっかり目標を描き、はっきり口にする。
「座右の銘じゃないけど『有言実行』を大切にしてきた。実現したいことや目標は口にするようにして。言ったら後戻りできないから、自分にプレッシャーを掛けて。気が緩んでるなとか、気持ちに余裕がありすぎるなとか感じたら、新しい目標を立てるようにしてみたり。コントロールするようにしています」
キラキラした世界を目指しながら、ネガティブになりがちな心とも向き合ってきた。「成績が良すぎたりすると『ダメになるのが怖い』と考えちゃうときはある。でも、どの時代も、どのスポーツでも普通に勝てなくなるときはくる。だから、『やらなきゃいけないんだ』って思うように。不安をやる気にしている」。そう語る眼差しは強い。
ラウンド後の取材で、自分に言い聞かせるように『下手だから』と口にしてきたのも「自分に自信がないわけではない。自信はある。でも納得はいっていない。できることはある。もっと上に行けるという気持ち」があるからだ。
凱旋優勝したい
2024年の国内初戦は29日(木)に開幕する「ダイキンオーキッドレディス」(沖縄・琉球GC)。昨年は予選落ちに終わったが、ことしは悠長なことを言ってられない。4月18日開幕の海外メジャー初戦「シェブロン選手権」(ザ・クラブatカールストン・ウッズ/テキサス州)出場には、昨年実績から見ると3月18日時点の「世界ランキング40位以内」が目安。現在の50位(2月19日時点)から圏内に入るための時間は、あと3週間しかない。
「シェブロン選手権は厳しいかな。でも、全米女子オープン、KPMG全米女子プロ、アムンディ エビアン選手権、AIG女子オープン(全英女子)と出られる試合は出たい。沖縄は気合を入れ過ぎずにやりたい。まずは予選通過してトップ10を目指していければ」
海外参戦後の青写真もある。「畑岡奈紗さんや古江彩佳さんみたいに、日本に凱旋して優勝したい。すごくかっこよかった。あれをやりたい」
19年3月「キア・クラシック」で米ツアー3勝目を挙げた畑岡は同年9月「日本女子プロ選手権」、10月「日本女子オープン」と国内メジャーで2勝した。22年7月「スコットランド女子オープン」で米ツアー初優勝を飾った古江は同年10月、19年にアマチュア優勝を果たしたホステス大会「富士通レディース」で2連覇を達成した。そんな2人に未来の自分を重ねる。
「海外に行くのは自己満(足)ではある。でも、私が優勝をすればファンの方やジュニアの子たちがその“キラキラしたもの”に憧れを持つかもしれないし、かっこいいと思ってくれるかもしれない。みんな挑戦して結果的に日本のゴルフが盛り上がればいいと思う。なので、日本で優勝するというのはいつ(何歳)になっても大事。うれしいことかなって思います」
キラキラした世界へ、その先へ。櫻井の希望は果てしない。