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「失った躍動感」を求めて スイングの現在地/原英莉花インタビュー(後編)

原英莉花が「ダイキンオーキッドレディス」(29日開幕/沖縄・琉球GC)で国内女子ツアー7年目のシーズンを迎える。腰痛との闘いは、昨年の手術、国内メジャー「日本女子オープン」での復活優勝などで一区切りついたが、やるべきことは多い。腰痛の原因ともなり、変えざるを得なかったスイングと「どう向き合い、どう進化させていくのか」。インタビュー後編では、その現在地を聞いた。(取材・構成/服部謙二郎)

ジャンボ尾崎の指摘

「躍動感がないな」

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その言葉は、尾崎将司の口癖のようになっていた。原は試合中でも時間があれば、師匠の私設練習場である“ジャンボ邸”に通っていたが、会うたびに同じことを言われた。

原にもその自覚はある。腰痛を抱えてからスイングをマイナーチェンジせざるを得なかった。「少しでも長く続けるために、ニーアクションを減らしていました」。原のスイングのトレードマークでもあるダイナミックなひざの動きは、スピードやパワーにつながるが、動きすぎると安定感を欠くことにもなる。

「なんて言えばいいんですかね、インパクトを安定させたかったんですよ。ひざや足の余計な動きを減らして、スピードというよりはコントロール重視に」。安定感を求めれば、スピードが落ちる。両立は難しい。「自分のパワーを最大限に使って飛距離を出したいけれど、体への負担は減らしたい。そんなことを考えていたら、スピードが落ちちゃった…」

尾崎の指摘に「(けがもあって)仕方ないじゃん」と思うが、やはり「言われて悔しい」との思いの方が強い。「そりゃ安定してきたらスピードを出していきたいですよ」と前置きした上で、「でもスピードを出すには、やっぱりもうちょっと体から作っていかないと。無理にやってコントロールが効かなくなるのも怖いし、若い頃のバネも年々なくなってきている。やっぱり昔はバネがすごかったんだと、最近改めて思います」。25歳になったばかりだというのに、ベテラン選手のようなことを言う。

求めるのは「切り返しのタメ」

それでも、尾崎に指摘されるようになっただけ「まだマシなんです」と言う。「手術前は全くスイングのことを言われなかったんですよね。顔を合わせると、『お前、おはらいに行ってこい』とか『注射を打ってどうだったか』とか腰の話ばかり。だからスイングの話になっただけでもうれしい」

失われた躍動感。それを取り戻す術は分かっている。「切り返しの捻転(ねんてん)差」。“タメ”だ。

「私は切り返しで結構、“パタっと来るタイプ”。スイングが浅く、タメが作れない」。体重が左に乗り切らないまま切り返しが始まり、クラブが下りてきて時間差を作れない。「足が動いてないというか、切り返しの時点で上半身と下半身が一緒に動いてしまい、クラブのリリース時に自ら引っ張りこんでしまう。一生懸命、捻転差を作ろうとしているのですが、体重が乗り切らず、癖でパンパンと動かしちゃうんですよね」

かつて、師匠の尾崎もトップのポジションでキャディに手を押さえてもらって、下半身だけ切り返すようなシャドースイングをよく繰り返していた。あの“上下の時間差”が原にも必要なのだ。

「捻転差を保てるところまで保ちつつ、足の上下動だったりを意識しないといけない。ジャンボさんからは『手と足を引っ張り合え』とはよく言われていて。それをスイング中になかなかできない。腰痛のときは痛みが怖くてうまくできなかった」

見かねた尾崎から、野球のバットと、お手製の羽の付いた素振り棒を渡された。「『ゴルフとは違う動きで覚えるんだ。野球の素振りをしろ』と言われて」。術後、復帰するまでの期間もずっとその2本で素振りを繰り返していた。「『野球選手は1000回素振りするんだぞ』って言われて、もうなんだか私もカチンときちゃって『私だってしてやるわ!』って」。日々1000回の素振りを欠かさなかった。負けん気の強さも師匠譲りだ。

「ドロースパイス」をピリッと効かせて

このオフはスイングの安定感を保ちつつ、落ちたスピードを取り戻すトレーニングにいそしんできた。「変に腕でガッと打ちにいったり、足でガーンって蹴り上げたりじゃなく、今のスイングのイメージでスピードだけ上げられるようなトレーニングを意識してきました」。具体的には、短距離走など瞬発系のトレーニングだ。「元々、けがをする前はダッシュ系を多く取り入れていたのが自分の取りえでした。腰にかかる負担が大きくて禁止されていましたが、ようやくそれができるようになった」。3年近く中断していた運動が再開できたのも楽しみでしかない。「ジャンプ系の動きや体をひねるトレーニングもスイングに組み込んでいければ」

ジャンボ邸恒例の「タイヤ引き」は、腰に負担がかかる。さすがに、やるべきではないのだろうか。「トレーナーさんにも止められていたので、まだやっていない。でもそろそろなんですかね」とニヤリ。「タイヤの中のホイールが抜かれて、そこに砂が入っているんですよ。めちゃくちゃ重たいんですよ」とうれしそうに説明した。

今はショットのバリエーションも増やしている。「ドロー、フェードを思うように打てるように練習しています。特に1Wショットはドローの要素も入れていきたい」と語る。どんな意図があるのか。「やっぱりヘッドを返すのが怖くなると飛ばなくなっちゃうので。1Wだけはちょっとドローのイメージを持ちながら打ちたいなって」と、飛ばし屋の顔をのぞかせた。

米国で行った合宿では小技を重点的に磨いた。「もう少しアプローチのバリエーションを増やしたかった。転がしもできるようにならないと寄らないところがある。強化できたら怖がらずに攻めていけるかな」。スコア誤記で失格した昨年の米ツアー予選会の悔しさが糧になっているようだ。「毎日胃が痛いぐらい緊張しましたが、経験したことは無駄じゃなかった。しっかりやっていけば戦えるんじゃないかというのは今回、感じました」。弱点を克服し、今年も同じ舞台に挑戦するつもりだ。

腰の不安がなくなり、やりたいスイングも見え、トレーニングもできるようになった。海外挑戦も仕切り直しだが、その視界は良好だ。2024年はきっと楽しい一年になるに違いない。

関連リンク

2024年 ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント



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