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国内女子ツアーで「グリーンブック」がまだ使えるって知ってた? 最新ヤーデージブック事情

◇国内女子◇樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント 最終日(29日)◇武蔵丘GC(埼玉)◇6650yd(パー72)

トーナメントのテレビ中継で、選手がグリーンを狙う時、キャディとヤーデージブックを見て、やり取りするシーンはおなじみだ。しかし、どんな情報が書かれていて、どのように活用されているかは意外と謎だらけ…。そこで最新の“ヤーデージブック事情”を調査してみた。

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国内の男女両ツアーとも「TYB」(THE YARDAGE BOOK)が全試合をカバーしている。選手とキャディがそれぞれ1冊ずつ購入するパターンが多く、キャディと年間契約している選手が2冊買ったり、タッグによってはキャディだけが持つケースもある。コースのショップや、「TYB」スタッフによってクラブハウス内で販売されており、1冊税込み3300円。ちなみに「TYB」は男女下部ツアーの一部、シニアツアー、アマチュアの大きな試合(日本アマなど)までカバーしている。

「三菱電機レディス」のように毎年同一コース開催なら「新しく作らなくても…」とも思うが、そうでもない。

TYBスタッフの渡辺孝太郎さんによると、「フェアウェイの幅も変わるし、フェアウェイのカットのシェイプも変わる。するとちょっとずつ距離の数値もズレます。バンカーがなくなったり、木を切ったりというレイアウトの変化もあるし、ティの位置が変わることもあります。同じコースでも、全く同じ状態はないんです」とのこと。

昔のものを使っている人もいるらしいが、過去のものが使えない試合もある。ちなみに男子ツアーでは「JGTO APRROVED」と承認マークが入った「TYB」しか使えない。そのため、今年の「ACNチャンピオンシップ」は2022年の「日本オープン」と同じ三甲GCジャパンコース開催だったが、日本オープン時の「TYB」は使用不可だった。

「TYB」の情報は実に細かい。残り距離はもちろん、高低差、ティイングエリアからハザードに入る距離、フェアウェイ幅、レイアップポイント、イエロースポット(トーナメント用にフェアウェイに付けられた黄色い目印)などなど。R/O(ランアウトヤーデージ)という、フェアウェイを突き抜ける距離も書いてある。果たして、ここまで詳細な情報が必要なのかと思えるが、渡辺さんは「やっぱり欲しいという声があるので、必要であろう情報はできる限り書き込んでいます。ただ、選手によっては要らない部分もあり、そのへんは消してくださいと選手やキャディさんには伝えています」と説明してくれた。

選手とキャディに「TYB」の活用法を聞いてみた。

高橋彩華とキャディの齋藤嵩介氏の場合は、高橋も齋藤キャディも1冊ずつ持っている。齋藤キャディは「選手が迷ってしまうと困るので、聞かれた時に必要な情報だけさっと答えられるように準備しています」という。高橋も「基本は自分で考えて、迷った時に聞くかな」。いわば答え合わせのような感じだろうか。中には何でもキャディに聞く選手もいるようだが、強い選手ほど、自分で「TYB」を見て、数字を計算して、どんなショットをどんな番手で打つか考えているようで、それでも迷った時、キャディに聞いて“検算”をするそうだ。

齋藤キャディはPGAツアーで戦う小平智のバッグも担いでおり、同ツアーのヤーデージブックを見せてもらった。中身は日本の「TYB」よりかなりシンプルで、コースレイアウト以外は最低限の情報だけ記されてあり、パッと見で白地部分が多い。「メモ」に近く、練習ラウンドで自分が必要な情報を書き込み、グリーン周りに赤や青のペンで危険なゾーンを描いたりして“自分色”にカスタマイズする感覚だ。

PGAツアーでは、通常のヤーデージブックが選手、キャディに1冊ずつ無償で提供される。ただし「ピクチャー」と呼ばれるヤーデージブックはティイングエリアからターゲットを狙うための写真や、ティショットでフェアウェイを突き抜ける距離など付加価値のある情報が入っていて、100ドルで販売されている。ちなみに齋藤キャディは必ず購入するそうだ。

国内女子で3~4割が使っているグリーンブック

ヤーデージブックとは別に、情報をグリーンに特化した「グリーンブック」というものがある。

グリーン形状、傾斜、さらに斜度の数値、グリーン周りの状況など詳細な情報が記されていて、まさにグリーンを丸裸にしたようなブックだ。USGAとR&Aが2021年にグリーンの詳細な情報が記載されたヤーデージブック(グリーンブックを含む)の使用を制限するローカルルールを制定した。ローカルルールの採用は各競技団体の判断に委ねられ、PGAツアーでは昨年から、米女子ツアーでは今年からグリーンブックの使用が禁止され、国内男子ツアーもPGAツアーに倣って禁止になった。国内女子ツアーでは来年から禁止されるとウワサされているが、現在は使用可能。なお来週の「TOTOジャパンクラシック」は米女子ツアーとの共催のため、使用できない。

三菱電機レディスでグリーンブックの使用状況を調べてみると、フィールドの3、4割の選手が購入し、活用していた。価格は税込1万円と高価なためか“タッグ”で1冊というケースが多い。

グリーンブックを使っているキャディに話を聞いた。「上りか下りか判断に迷うような微妙な傾斜の時、明確に答えが分かるので助かります。グリーンを狙うショットの時もけっこう活用していて、グリーンの傾斜が色分けされて狙いどころが明確に分かるから、選手はショットのイメージを作りやすいはず。使えるうちは使った方がいいかなと。強い選手ほど使っている印象がありますね」

女子ではスロープレーがよく問題になるが、グリーンブックを使えば「自分のボール位置がグリーン図のどこにあるかがちゃんとわかれば、ライン読みは早い」。考えようによっては時間短縮につながる可能性もあるようだ。

仮に来年から使用禁止になった場合は全選手がグリーンを自分で調べるため、ただでさえ時間のかかっている練習ラウンド進行がさらに遅くなり、「“渋滞”がひどくなるのでは」と危惧する関係者の声も聞こえてくる。なお禁止となれば、過去のグリーンブックの情報をヤーデージブックに書き写すことも禁止行為に該当する。

情報が多いほど、いいスコアにつながるかは別問題だ。実際、PGAツアーではグリーンブックが使用禁止になっても、グリーン上のスタッツはほとんど変わらなかったと聞く。便利なものがあっても必要以上に惑わされず、もしくはいい部分だけ上手く活用できる選手が、結局は強いのだろう。(埼玉県飯能市/服部謙二郎)

関連リンク

2023年 樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント



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