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“ファンカフェ”は「僕らの財産」 イ・ボミを見届けた歴代会長

◇国内女子◇NOBUTA GROUP マスターズGCレディース 最終日(22日)◇マスターズGC(兵庫)◇6495yd(パー72)◇晴れ(観衆5519人)

イ・ボミ(韓国)の最後のプレーを見届けようと、全国各地から大勢のファンがかけつけた。思い出と歴史がこもったグッズを持参し、ボミのショットがフェアウェイ、グリーンに行けば「ナイスショット」と大きな声を出し、バーディなら、さらなる大歓声と拍手で盛り上がった。そんな風景に、通称「ファンカフェ」というファンクラブの歴代会長たちは目を細くしていた。

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ファンカフェ発起人の初代会長

韓国で賞金女王になって2011年から日本ツアーに参戦したボミは当初、韓国のマネジメント会社YGスポーツを中心に地固めしてきたが、日本の活動のサポートしたのが「ファンカフェ」の初代会長になる阿部陸さんだ。「業務委託をすることになった日本の会社に知り合いがいて。当時、僕は野球選手のマネジメントをしていて“ゴルフも見てくれ”と」。ボミの試合に帯同するようになり、ボミは12年「ヨコハマタイヤPRGRレディス」で初優勝した。

そこで父ソクジュさん(故人)に「祝勝会でもやりましょうか?」と尋ねると「韓国にはファンカフェというのがある。日本でも作ってくれませんか」とお願いされ、立ち上げることになったという。

14年シーズンを“皆勤”した2代目会長

2代目会長の西野慎二さんは、14年にボミが出場した全試合を観戦した。「最初は全然ギャラリーがいなくて、50人、100人…と集めて。いまだとコアなファンは60人前後かな。はじめの頃は、地方の大会だとボミさんと一緒にご飯を食べることもあった。韓国スタイルなんでしょうね。それを日本に持ってきた感じだった」。プロと食事をした話を聞いた人が羨ましがって仲間に入る。そんな連鎖が大きな輪になった。

ボミの似顔絵入り缶バッジから、ポロシャツ、ゴミ袋…などいろんな応援グッズを作った。「ゴミ袋はシャカシャカと音がする素材で作っちゃって、作り直しました」と笑う。缶バッジや帽子を見れば、色で時代が分かるそうだ。「あの頃はまだ缶バッジを作る人もそう多くなかった。ひとつの文化を作ったとも言えるよね」

思い出や“たら話”にはきりがない。「19年にこの大会で柏原明日架さんに(1打差で)負けちゃって」。それでも、出場者がツアー優勝者ら32人限定の最終戦LPGAツアー選手権リコーカップに出場。ボミは優勝したペ・ソンウと6打差の5位に終わった。「最終日に5連続ボギーをせずに優勝して3年シードをとれていたら、また違った競技人生だったのかな。まあこれも運命だけど」。感慨深げに振り返った。

「ファンカフェ」は40代後半から50代が多い。55歳の西野さんは「年齢層は高い。おじさんばっかり」と笑う。「でも今週も来てるけど、中学生の子たちもいてね。21歳の女の子でいえば、10年前の比嘉真美子選手と競り合った日本女子プロ選手権(比嘉にプレーオフで勝った13年大会)をテレビで見て、ようやく帯同できるようになったという子もいる」。性別、年齢は様々。「みんな違う会社で、なんの利害関係もないのに、こうして集まれるのは “財産”です。時には集まってゴルフをしたりして。全国に友がいる。そういうネットワークを作ってくれたのはボミさんがいてくれたから。ボミさんが会わせてくれた」と世代を超えたつながりに誇らしげだ。

1年目から見守ってきた現会長

18年から現在まで4代目会長を務めてきた54歳の夏目武さんは、ボミを参戦1年目から見守ってきたひとりでもある。最初に見たのは11年4月、千葉・鶴舞CCで開催された「サイバーエージェント レディス」。3月に東日本大震災が発生し、ツアーは第2戦から3試合中止され、再開3戦目だった。「見たことがない選手がいるなって。当時はギャラリーがそんなについていなくて、調べたら韓国で賞金女王だったとわかった。キャディバッグを見たらUTじゃなくてロングアイアンが入ってた。日本人にはいないタイプだと思った」。

ボミに興味を持った夏目さんは「僕にできることは何かないかな」と思い、ボミの出る試合に足を運んだ。ボミを支えるスタッフにも認識され、頼み事もされるようになった。「あの頃は試合のエントリーがFAXとかで、書類も郵送だったから、韓国の人は日本に決まった住所がないこともあって、僕の家に色々送られてきました」と回想する。

慣れない作業は難しいものだ。「試合によってはキャディさんの服装がつなぎだったりして、そのサイズを書かなくちゃいけない。間違っちゃいけないし、Lですか?LLですか?ってやり取りしていました」。それでも、見捨てておけない。合宿に必要なクラブを持って行ったこともある。賞金女王になった15、16年には握手、サインを求める人たちの整備も買って出た。「でもね、そんな受け入れ態勢が整っていない状況で日本に乗り込んできたのはすごいですよ。もう断れないですよね、試合に出られなくなっちゃう」と当時を懐かしんだ。

ボミには今、所属先の延田グループの手厚いサポートがある。ただ参戦当初から途中までは夏目さんのように草の根的に動くファンの支えが大きかった。夏目さんによると、ボミは韓国に帰国する前の試合で「すごく成績がよかった。やっぱりアドレナリンもあったのかな」という。その“定説”はファンの間に浸透しており「今週帰れるから成績良いんじゃない?」なんて話がよく持ち上がったらしい。それでも、ボミを支えたいファンの思いが力となり、彼女のパフォーマンスを後押ししてきた。

2代目会長の西野さんは「次の人生でもゴルフはやれるし、子供ができて育児して落ち着いたら韓国の試合に出るのも。そしたら俺らも応援に行く。覚えていてくれたらいいな」と言った。その言葉に、夏目さんもうなずく。日本で10年以上根付いた「ファンカフェ」は、引退後のボミも温かく見守っていく。(兵庫県三木市/石井操)

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