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史上最大の下剋上と復活V 女王の涙/2023年国内女子ツアー前半戦振り返り(下)

今季38試合を予定する国内女子ツアーはシーズン唯一のオープンウィークを経て、来週20日開幕の「大東建託・いい部屋ネットレディス」で後半戦に突入する。前週「ミネベアミツミレディス 北海道新聞カップ」までの前半戦19試合ではどんなことがあったか。印象的な出来事を振り返った。

QT181位からの下剋上V

「明治安田生命レディス」で吉本ひかる、「フジサンケイレディス」で神谷そら、「資生堂レディス」で櫻井心那がツアー初優勝を飾った。ある意味で最もセンセーショナルだったのはシーズン第4戦の3月「アクサレディス」で山内日菜子が達成したツアー初Vではないか。

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プロ8年目の山内はシード獲得経験がなかった。昨年のファーストQTでカートに練習用の左打ちアイアンを積んでいたことが「クラブ本数の超過」とみなされて最終QT進出を逃し、下部ツアー出場も絶望的な「QTランク181位」でシーズンイン。「アクサレディス」は地元宮崎開催とあって主催者推薦による出場だった。初日に得意のパットがさえて、自己ベストタイの「67」をマーク。初の首位発進を決めると、2日目は首位と1打差2位に後退したが、最終日を「70」でまとめ通算10アンダー、比嘉真美子を1打差で振り切った。

地元開催で家族、大勢の知人、ギャラリーの大歓声を受けた。「プロ8年目。いろんな方の優勝を見てきて、私にもできると思いながらも、そこまでたどり着けなくて…。本当に少ないチャンスを生かせてうれしい」と涙に暮れた。QTランク181位からのツアー優勝は「史上最大の下剋上」で、絵に描いたようなシンデレラ・ストーリーとなった。

プロ16年目で初の年間2勝

山下美夢有が4勝し、岩井明愛岩井千怜のツインズが3勝、他に初優勝が4人。前半戦18試合を終えて、近年顕著な若手の台頭は相変わらずだ。そんな中、プロ16年目で初の「年間2勝」を飾ったのが、35歳のシーズンを迎えたベテラン穴井詩である。

「めちゃめちゃうれしいです」。4月30日、穴井は「パナソニックオープンレディース」で今季2勝目を飾り、会心の笑みを見せた。

通算9アンダーの首位から出て3バーディを奪いながら、後半17番で3つ目のボギー。1組前の永峰咲希にトップで並ばれて迎えた最終18番(パー5)、ティショットをラフに入れてレイアップし、62ydの3打目を58度のウェッジでバックスピンをかけて30cmにつけ、OKバーディで逃げ切った。「完ぺきでした。(スコアの)状況が分からなかったので“入れなきゃ”と。私のウェッジでちょうどいい距離で、奥からバックスピンで戻すつもりで打った。まさにバッチリ」。自画自賛のウィニングショットだった。

プロ1年目の2008年から、体のバネ、驚異的な捻転を使って生み出す飛距離はトップクラス。ドライビング・ディスタンスの計測が始まった17年は255.16ydで3位、19年と昨季は1位、今季も平均257.69 ydの2位と衰えを知らない。だが、昨季はメルセデスランキング48位と、12年から守り続けるシードを落としかけた。

2014年を最後に“卒業”した石井雄二コーチのもとを訪れ、再び教えを請うたのがオフのこと。19年「NEC軽井沢72」のツアー3勝目を最後にタイトルから遠ざかっていた。「また勝ちたいです。国内メジャーもとりたいです」。石井コーチは、昔からテンションが上がるとオーバースイングになりがちな穴井の悪癖を抑え、集中力をなるべく消耗しないように、30代半ばを迎える“年相応のゴルフ”を説いた。

今も若手をしのぐ天性の飛距離と身体能力を制御することを覚え、オトナのゴルフができるようになった。「だいぶ前から目標は“国内メジャー優勝”です」。待望の「年間2勝」は達成。とことん晩成の大器は9月の「日本女子プロ選手権」と「日本女子オープン」にターゲットを絞っていく。

父の日に通算10勝

樋口久子ト阿玉平瀬真由美福嶋晃子不動裕理アン・ソンジュイ・ボミ(ともに韓国)。日本の女子プロゴルフ界で「連続賞金女王」になったのは7人だけだ。昨季からシーズントップの対象が賞金からポイントに一本化され、目指す勲章は「年間女王」となり、山下美夢有が8人目の偉業に挑んでいる。

シーズン序盤こそパット、アプローチに精彩を欠いていたが、6戦目の4月「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」で今季初、ツアー通算7勝目を飾ると一気に加速した。5月の「ブリヂストンレディス」「リゾートトラストレディス」で史上初の「2週連続4日間大会V」を達成し9勝に。そして、節目の10勝目は6月中旬「ニチレイレディス」で飾ることになる。

最終日の18日は「父の日」だった。初日からビッグスコア「65」を重ね、通算14アンダーで完全優勝に王手をかけると、最終日もノーボギーの「69」と隙を見せず通算17アンダー。2位の岩井明愛に3打差をつけて逃げ切った。

シード選手で最も小柄な身長150cm。それでも当然のようにナイスショットを続ける。コーチはゴルフを始めたときから父・勝臣さん。リズミカルで再現性の高いスイングを生む体幹の強さは、極力自重を使う地道なトレーニングの賜物。「ゴルファーである前に人として」と、ジュニア時代にマナーの悪さを思い切り叱られた。技術も体も心も、まるごと父に導いてもらって、今がある。

昨年は最終日が5月8日の「サロンパスカップ」で「母の日V」を母・有貴さんに贈った。今度は父の日V。「小さい時は父の日のことを考えていなかったし、ありがとうと伝えるくらい。でも、プロになってからも一人でできるスポーツではないし、いろんな方に支えられないとできない。(父は)いつも仕事しているけど、ゴルフを教えてくれたり、支えてくれている」。優勝スピーチで必死で涙をぬぐう山下の姿があった。

「21歳320日」で飾ったツアー通算10勝は、憧れの宮里藍の「20歳105日」に次ぐ史上2番目の年少記録となった。

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