「ヤマハレディースオープン葛城」スコア一覧
2021年 ヤマハレディースオープン葛城
期間:04/01〜04/04 場所:葛城GC山名コース(静岡)
マーカーだった同組選手が途中棄権 スコアカードはどうすればいい?
◇国内女子◇ヤマハレディースオープン葛城◇葛城ゴルフ倶楽部山名コース(静岡県)◇6564yd(パー72)
高額賞金がかかったプロゴルフトーナメントでは、ルールに厳格さが求められる。今大会初日を終えて、ゴルフ規則3.3b(2)で定められた「プレーヤーの責任:ホールのスコアの証明」に違反したとして選手Aが失格になった。いったい何があったのか?
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経緯はこうだ。第1ラウンドのスタート直後、2番ホールで同組の選手Bが腰を痛めて、途中棄権を余儀なくされた。AのマーカーだったBは、Aのスコアカードをもう一人の同組選手Cに渡して、その場からカートに乗ってコースを去った。
競技経験がない人には馴染みが薄いかもしれないが、AのマーカーがBならば、Aの名前が印刷されたスコアカードをBが持ち、Bがそこにラウンド中のAのスコアを記入して、アテストでA本人とそのスコアを確認した上で、BとAそれぞれがスコアカードにサインをして提出する。それにより、BがAのスコアを証明することになる。
今回の場合、2番ホール以降はAとCの2人でラウンドしたが、ルール上、Aの1番ホールのスコアを証明するのは、同行できなくなるまで(棄権するまで)AのマーカーだったBの役目。その場合、AのスコアカードにはB(1番ホール分)とC(2~18番ホール分)2人のサインが必要となるのだが、スコアカードにはCのサインしかなく、Aの1番ホールの証明がないとして、ルール違反になったのだ。
■問題となった規則とは
問題となった「2019ゴルフ規則3.3b」は、以下のように書かれている。
(1) マーカーの責任:スコアカードにホールのスコアを記入し、証明すること。
ラウンド中の各ホール終了後に、マーカーはそのホールのストローク数(行ったストロークと罰打を含む)をプレーヤーに確認し、そのグロススコアをスコアカードに記入するべきである。
ラウンドが終了したとき:
・マーカーはスコアカードのホールのスコアを証明しなければならない。
・プレーヤーに複数のマーカーがいた場合、各マーカーはマーカーをしていたホールのスコアを証明しなければならない。
(2) プレーヤーの責任:ホールのスコアの証明と、スコアカードの提出。ラウンド中、プレーヤーは各ホールの自分のスコアの記録をつけるべきである。
ラウンドが終了したとき、プレーヤーは:
・マーカーがスコアカードのホールのスコアを証明していることを確認しなければならない。(一部抜粋)
■失格回避の手段はなかったのか
AはBのサインが必要という認識がなかったため、そのままアテストを終えてしまったが、もしその時点でBのサインが必要なことに気づいていれば、1番ホールのスコアを証明し、失格を回避する手段は残されていた。
2019年ゴルフ規則のオフィシャルガイドには「3.3b(2)/3-マーカーがその責任を果たさない場合の例外の適用」として、以下のような記載がある。
規則3.3b(2)例外に基づき、スコアカードの要件の違反があったが、それがプレーヤーにとって不可抗力なマーカーの怠慢が理由である場合、プレーヤーは罰を受けない。
この例外が適用される方法は次を含む:
・ラウンド後にマーカーがプレーヤーのスコアカードを持ったままコースを去ってしまった場合、委員会はそのマーカーへの連絡を試みるべきである。しかしながら、連絡が取れない場合、その委員会はそのラウンドを見ていた誰かによるそのプレーヤーのスコアの証明を受け入れるべきである。そうした人が誰もいない場合、その委員会自らがそのプレーヤーのスコアを証明することができる。
今回、スコアカードは次のマーカー(C)に渡してその場にあったものの、Bはサインをせずにコースを去ってしまっていた。それでも、JLPGAの競技委員によると、アテスト終了前に、(1)Bを探してサインしてもらう、(2)Bに連絡を取ってスコアを証明してもらう、(3)同伴競技者やマーカーにスコアを証明してもらう、(4)委員会に証明してもらう、といった手段で自身のスコアを証明することが可能だった。スコアカードの要件違反(マーカーBのサインがない)にも、ちゃんと例外はあったのだ。
参考までに、もしBが1番ホールを終える前に棄権した場合、Cだけのサインで良かったのかというと、そう単純でもない。Bが1番ホールをホールアウトする/しないに関わらず、マーカーとしてAのプレーに同行して、そのホールのスコアを証明すべき立場だったとしたら、やはりBのサインが必要になる(もらえなかった場合の処置も上記同様)。
最も確実な方法は…Bがマーカーの役割を終える(棄権する/同行をやめる)時点でAのスコアカードにそれまでの各ホールのスコアを書いてAと確認し、問題なければ自身のサインをして、次のマーカーCに引き継ぐ。だが、諸事情によりそれができない場合にも、まだAには手立てが残されている。
ゴルフ競技において、スコアカードの確認は選手の責任。そのミスは失格という罰を受けるが、あまりにも大きな罰だ。