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大槻智春 11歳で亡くなった兄に捧げる初優勝

◇国内男子◇関西オープンゴルフ選手権競技 最終日(26日)◇KOMAカントリークラブ(奈良県)◇7043yd(パー72)

「いろいろなことが頭をよぎりました。きょうの結果は忘れられない。最高の息子です」。18番グリーンで行われた表彰式で優勝カップを受け取る大槻智春の姿を見て、父・隆さん(70)は感慨を噛み締めた。

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大槻が生まれる前、会うことのないまま他界した兄がいた。長男・智之さんが、1989年に脳腫瘍のため11歳で死去。大槻と同じく7歳からクラブを握り、ゴルフも成長も伸び盛りのときに大病に冒された。「今のままでは家の中が暗くなる」。失意のどん底に突き落とされたその1年後、妻・佳江さん(68)との間に新しい命を授かった。名前は、長男から一文字をとり「智春」と名付けられた。

「智春が生まれたこと。私の一生の中で、それ以上の喜びはなかった」という隆さん。大槻は “スパルタ”を自称する父の厳しい指導のもと、めきめきと腕前を上達させていった。大槻は「調子が悪いときは、大会のあとでも1000球くらい打ち込んだ」と、苦笑いでジュニア当時を回顧する。

大槻は言う。「昔からその話は聞いていた。(智之さんに)会ったことはないけれど、自分も頑張らないといけないな、とは思った」。顔をみたことがない兄の存在は、少なからず大槻のゴルフ人生の一部になっている。

3日目を終えて首位と3打差の息子を見るため、隆さんは「絶対に行かないといけない」と自宅の茨城県神栖市から深夜0時に車を出し、不眠のまま7時間をかけてコースに駆けつけた。「頑張ってきた甲斐がありました。最高の気分でゆっくり帰ります」。穏やかに微笑み、幸福感に浸りながら長い帰路についた。(奈良県奈良市/塚田達也)

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