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終盤に無念の失速 武藤俊憲「メジャーの壁ではない」

「メジャーの壁ではない」。武藤俊憲は一瞬、語気を荒げてそう言った。北海道クラシックGCで行われた国内男子メジャー「日本プロ日清カップ」最終日に、3打差の単独首位から出て「66」。だが、上がり3ホールの2ボギーで4打差を追いつかれ、プレーオフ1ホールのボギーで、つかみかけた自身初のメジャータイトルはその指先から滑り落ちた。

「谷原が良いプレーをしただけです。9バーディですよ。半分バーディを獲っているんです。メジャーの壁ではなく、メジャーを獲るべく選手が獲った。この試合では、運も谷原に味方したということです」

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発する言葉の1つ1つに、苛立ちと悔しさが絡みついていた。スタートの1番から5連続バーディを奪い、14番でこの日2度目の中断を挟むまで、常に2打以上のリードを保ち続けた。

雷雲接近のため、現場待機を指示された2度目の中断。最初は売店の中にいた選手たちだったが、最終組につくギャラリーの安全を確保するため、武藤ら選手たちはコース脇に用意されたワゴン車へと移動して、代わりに売店の中にギャラリーを避難させた。

約1時間。武藤はほとんどの時間を狭い車のシートに座って過ごした。「そこで、体が動かなくなったから“まずい”と思った。4打差あるから何とかなるかなと思ったけど…」。再開前に軽いストレッチはできたが、充分なウォームアップとは言えなかった。

車で待機させられたのは、谷原も一緒だった。そのことは分かっている。だが、普段はスタートの2時間半前にコースに来て、入念なウォームアップをするのが武藤流だ。「その過ごし方がどうだったかと言われたら、良くなかったかもしれない。強いていえば、谷原はあれだけの距離を歩いて戻ってきた。そこでしょうね」。

中断直前、14番のティショットを池に入れた谷原は、再開後にフェアウェイを100yd近く逆走して池の手前にドロップし、それからまたグリーンへと戻ってきた。そんな些細なことも勝負の綾の1つだった。

16番(パー5)では、刻んだ後の3打目をグリーンオーバーさせてボギーとした。「結果的に(球が)低めに出て、風の下を通って奧に行った。ジャッジは間違っていなかった。体が動いていれば全く問題ない話」。だが、もう手遅れだった。

「中断がなければ間違いなく勝っていますね、もちろん」と武藤。「もちろん」と2度繰り返した。自分を鼓舞する強い気持ちと、おかしたミスに対する怒りと後悔。その複雑な心境を、勝った相手への尊敬で包み込んだ。「谷原は良いゴルフをしていた。最後も林の中から(ほぼ)乗っけてくるし、それだけの力がある選手。どっちが勝ってもおかしくなかったけど、内容を見たら谷原が充分に上でしょう」。

武藤の表情は終始硬いままだった。プレーオフ1ホール目のパーパットは、カップをのぞいたところでぴたりと止まった。「僕に運がないとしか言いようがない――」。総括はそれで良かった。(北海道安平町/今岡涼太)

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