ゴルファー日本一の称号を得た池田勇太 海外進出はいつ?
2014年 日本オープンゴルフ選手権競技
期間:10/16〜10/19 場所:千葉カントリークラブ 梅郷コース(千葉)
片山晋呉 日本OP3勝目ならず「結果は受け止めたい」
千葉県の千葉カントリークラブ梅郷コースで開催された国内男子メジャー第3戦「日本オープン選手権競技」最終日。9アンダーの2位から出た片山晋呉は3バーディ、3ボギーの「70」(パー70)とスコアを伸ばせず、同じ最終組を回った池田勇太に1打差で敗れた。
大会過去2勝の永久シードプレーヤーは大会3勝目が、心の底から欲しかった。「満足感はあるけれど…。(良い)流れもない、なんにもなかった」。
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3打差を追ったこの日、池田の背中は、結局一度もとらえることができなかった。スコアを1つ落としてハーフターン。2mを沈めた12番から2連続バーディを決め、相手がダブルボギーを叩いた16番(パー3)で1打差に迫った。17番で3mのパーパットをねじ込み、ピッタリと張り付いて最終ホールに突入したが「18番(パー5)でラフに行ってしまう。そういう流れ」。グリーン手前ラフから、チップインバーディを狙ったアプローチはカップの右をかすめ、天を仰いだ。
シーズン半ばに首、腰を痛めて8月末に復帰。後遺症がある中での戦いで全精力をつぎ込んだ。「勇太もきょうは、いっぱい、いっぱいだったと思う。調子は良くなかったしね」と勝者を讃える。「結果はこれで受け止めたい」と潔くテンガロンハットを脱いだ。(千葉県野田市/桂川洋一)
米国PGAツアーを主戦場とするアダム・スコットが、毎週の試合で着用するウエアのコーディネートは、東京・六本木の同社オフィスから発信される。商品開発、デザイナー、マーチャンダイザーに至る少数精鋭のスタッフが、数ある商品の中からポロシャツ、パンツ(ボトムス)、ベルトの組み合わせに知恵を出し合っている。試合の2週前に海を渡る段ボール箱の中には、本戦4日間のほかトーナメント前の練習日、プロアマ戦を含む全部で6日分、そしてシーズンオススメのウエアを加えたアイテムの数々がぎっしり。プライベートの時間でも愛用している薄手のインナー、エアリズム(AIRism)も絶対に欠かせない。
同社のモデルは、ゴルフ場を離れても気軽に着用できるLifeWearだ。スコットとの共同開発で世に出たドライストレッチパンツは、コースで戦う上での機能性が普段の生活の場に大いに還元されたもの。彼の要望として取り入れられた高い伸縮性、速乾性や軽量感は、カジュアル、ビジネス等のシーンを問わず重宝されている。スタイリングにおいても、ファッションデザイナーの滝沢直己氏の監修のもと、レディ-・ガガのスタイリングをも手がけたニコラ・フォルミケッティ氏がプロジェクトに参加。ビッグネームの協力も得て、両者の融合を追究している。
ちなみにスコットお気に入りのカラーリングは、シャツとパンツを同色で統一するスタイル。黒、ネイビーの単色コーディネートの日は、一層気合が入っているのかも?
「ジェントルマン」はアダム・スコットを表現する言葉として、最も的を射ているフレーズだ。直接折衝を担当するユニクロ・グローバルコミュニケーション部の蓑輪光浩氏は、かつて某スポーツメーカーで多くのプレーヤーと仕事をしてきた経験があるが「サインを求めて『My pleasure(こちらこそありがとう!)』と答えてくれた選手は初めてでした」と言う。プロ車いすテニスプレーヤー・国枝慎吾をはじめ、錦織圭、ノバク・ジョコビッチといったトップテニス選手のウエア開発にも携わってきた商品本部の田中敏氏が驚いたのは「ジョコビッチ選手と同じく勝ちにはこだわりつつも、テニス以上に自然が結果を左右することがあるゴルフと言うスポーツの特性も受け入れる懐の深さを感じる」という、その穏やかな人間性だった。
雄大な南太平洋を望むゴールドコーストで育ったスコットは、ゴルフ、そして海とともに自身の成長を育んできた。大のサーフィン好きが選んだバハマの自宅は、目と鼻の先にビーチがあり、素潜りでモリを持って獲物を捕らえるスピアフィッシングにも興じる。ところで、スコットは学生時代に日本語の授業を選択していた時期があり、ひらがななら多少理解できる。米国で戦う日本の松山英樹や石川遼のよき兄貴分としての振る舞いも、自然と納得がいくものだ。
今年9月初旬。ユニクロのスタッフのもとに米国で転戦中のアダム・スコットからメールが届いた。「Big Day for UNIQLO!」―― 日本のスポーツ界が震撼したテニス全米オープン。錦織圭が快進撃を続け、ともにユニクロと契約するノバク・ジョコビッチと準決勝を戦う直前のことだった。マスターズチャンピオンも日本のファンと同じように、ニューヨークに熱く視線を注いでいたのである。
それもそのはず、スコットとテニスとの間には切っても切れない縁があった。同じオーストラリア出身で、4大大会通算2勝のレイトン・ヒューイットとは1歳違いで大の仲良しで、どちらもバハマに家があり、オフにはトレーニングを一緒にすることもある。さらにスコットの現在のマネージャーは、かつてヒューイットのサポートをしていたという間柄。もちろん自らもラケットを手に取り、汗を流す。
ジョコビッチとは昨年、ニューヨークで対面し、ドライバーをプレゼントしたスコット。錦織選手も10代の頃からフロリダIMGアカデミーで育ち、女子プロゴルファーの宮里美香と親交があり、ゴルフは趣味のひとつだとか。日本のファンとしては今後、トップアスリート同士の異色のコラボも期待してしまう。
2013年「マスターズ」。アダム・スコットは、オーガスタの雨が染み込んだユニクロのポロシャツの上にグリーンジャケットを羽織った。開幕直前に契約が発表され、これ以上ない形の“デビュー戦”を喜んだ同社スタッフは「ゴルフ界に大きな声で“Say Hello”が言えたことが大きかった。スポーツメーカーでない我が社の内部においても、すぐに協力体制ができた」と話す。ポロシャツは優勝前の実績を大幅に上回る数が売れ、ベルトは全国で品切れになった。
ゴルフ部門への進出はユニクロの哲学「MADE FOR ALL」に立ち返るものだった。世代や性別を超えた“国民服”をプロデュースする同社が、老若男女がプレーできるゴルフ産業に足を踏み入れたのは自然な流れ。ともすればビジネスの場にも似つかわしいLifeWearが好まれるゴルフは、コート内における高い機能性に特化したテニスとはアプローチの方法が異なったが、それこそがスコットが求めたものだった。
あらゆるスポーツにおいて、契約メーカーに自身の特別ブランドや、一般市場には出回らないモデル提供を求めるプレーヤーは多い。だが彼は違う。誰もがリーズナブルに手にできるウエアを軽快に着こなし、世界最高のツアーで戦っている事実がある。そして、スコットは大きなビジョンを持って言う。「2万円もする高い服を着てプレーするゴルファーは本当に幸せだろうか?そんな世界を、ユニクロとなら一緒に変えられる」と。スコットとユニクロの二人三脚での歩みは、まだ始まったばかりだ。