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「訳わからんくらい涙が出てきた」 鍋谷太一が“夢”にまで見た初優勝

◇国内男子◇カシオワールドオープン 最終日(26日)◇Kochi黒潮CC(高知)◇7335yd(パー72)◇晴れ(観衆2820人)

ウィニングパットを決めると、あふれ出した涙で前が見えなくなった。27歳の鍋谷太一がプロ12年目で初優勝。優勝の瞬間は、文字通り何度も夢に見たのと同じだった。

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首位タイから出た最終日は、「序盤から、乗ったら全部入れてやる」とアグレッシブな気持ちを忘れなかった。5バーディ、1ボギー「68」で回って通算14アンダーで勝利。「自分が目指してきた優勝が、現実になった」と喜んだ。

2012年に16歳にしてプロ転向を果たしたが、「QTを5回くらい上位で通るのに、リランキングで上位に入れない」と、後半戦の出場権がなかなかつかめず苦しい時期が続いた。特に苦戦したのが2018年。同年はレギュラーツアー11試合に参戦するも、予選通過は5試合のみ。賞金ランクは115位で終えた。

「ゴルフが楽しくなかった。仕事として成り立っていないし、離れたいなと思っていた」と生活もままならず、周囲を見ると劣等感を抱くことも。父の援助でなんとかやりくりしながら、転機が訪れたのは2019年。「結婚をして、やるしかないとふっ切れた」とレッスンで生計を立てるようになり、「なんとか、生きていけるんだ」と自信をつけてからはゴルフの状態も徐々に上向いて行った。

今年は初優勝を目指す中、開幕戦「東建ホームメイトカップ」から3試合連続で予選落ち。7月には背中も痛め、「はじめはシードを獲れるかどうかだった」と振り返る。苦しい時ほど、眠りについて夢に見るのは初優勝の瞬間。「17、18年頃もよく見ていた。起きたときに絶望するけど、とにかく試合に出たい気持ちが強かった」と、目が覚めては少し落ち込んだ。

それでも8月「Sansan KBCオーガスタ」3位タイ、続く「フジサンケイクラシック」3位と成績を残し、今大会には賞金ランク23位とシードを確定させて入って来た。

今週は3日目を終えて首位タイに並ぶと、前半で2つ伸ばして首位から落ちることなく後半へ。終盤になるにつれて集中力が高まる中、頭の片隅には「もし勝っても、たぶん泣かないだろうな」と冷静に優勝を喜ぶ姿を思い浮かべていた。

首位タイで迎えた最終18番(パー5)は、バンカーからの3打目を60㎝に寄せてバーディフィニッシュ。優勝を決めた瞬間は、「訳わからんくらい、涙が出てきた」とやっぱり夢と同じだった。

この優勝で、2025年までの複数年シードと、30人にフィールドが絞られる次週の今季最終戦「日本シリーズJTカップ」(東京・東京よみうりCC)出場を決めた。「今回は優勝できたけど、もうひとつレベルを上げないと」。2勝目に向けて気を引き締めた。(高知県芸西村/谷口愛純)

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