杉山知靖（右）は片岡尚之との優勝争いで互いに力を出し切った

◇国内男子◇ブリヂストンオープン 最終日（10日）◇袖ヶ浦カンツリークラブ 袖ヶ浦コース (千葉)◇7119yd（パー71）

無観客のコースに「ナイスバーディ!」の声が響く。杉山知靖は同じ最終組を回る片岡尚之に並ばれようとも、自分のスタイルを曲げなかった。

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「自分が苦しいときでも、相手がいいショットをしたり、いいバーディを獲ったら素直に『ナイス!』と声をかけたい。組全体で雰囲気良く、気持ちのいい優勝争いがしたい。優勝ももちろん大事なんですけど、気持ちのいい選手でありたい」

祖母が大好きだった影響で5歳からクラブを握った。母子家庭で育った杉山は、ほどなくして母・智恵さんの苦労を知ることになる。

「朝起きたら朝食が作ってあって、もういない。学校と練習を終えて帰ってきても、まだいない。子どもながらに、こんなに働かせて申し訳ないって思いました」。松山英樹が2学年先輩だった高知・明徳義塾高に特待生で入学するまで、どれだけの負担をかけたか。それでも、不自由なくゴルフをさせてもらった記憶しかない。

年下の稲森佑貴（右）を「マイブラザー」と呼んで慕う。オフには稲森の実家の練習場で合宿する仲

所属する神奈川県の平塚富士見CC、レイクウッドGCを「いつでも使っていい」とは言われているが、コースのメンテナンスを行うスタッフにだって、日々の仕事があるはず。「存分に使って、やるだけやってみなよ」「スギちゃん、頑張れよ」。暖かい言葉に背中を押された。

「暑い日も寒い日もコースをきれいにしてくださっている人たちから…本当にプロゴルファー冥利に尽きます」。7月に下部AbemaTVツアーで優勝する前、ちょうどレギュラーツアーで予選落ちが続いて苦しんでいた時期。自分の中で、明確にスイッチが入ったという。

「自分一人の力ではなく、みなさんのおかげでここまで来ることができました」。心優しい28歳は、感謝の思いでいっぱいになりながら念願だったトロフィーを掲げた。（千葉市緑区／亀山泰宏）